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術者探し

◇◆◇◆


 ────ルークが(くだん)の術者探しを始めてから、おおよそ一週間。

例の成分が検出された場所を見に行ったり、魔法の詳細を調べたりと忙しい日々を送っていた。

その(かん)、プリシラの作った復活薬が領地全体に行き渡り、植物を再生。

人々の暮らしに、平穏をもたらした。


「はぁ……不味いな、お手上げだ」


 レーヴェン公爵家の自室にて、ルークは前髪を掻き上げる。


(手掛かりが、少なすぎる……せめて、魔法を発動してから一日以内なら痕跡を見つかられたものを……ここに来た時点で、二日経過しているんじゃどうしようも……)


 悩ましげに眉を顰め、ルークはチッ!と大きく舌打ちした。


「面倒だけど、領地全体に探知魔法でも掛けるか?一先ず、魔力量の多い者を基準にして絞り込めば候補くらいは分かる筈だし」


 トントントンと目の前の執務机を叩き、ルークは今後の方針を定める。

と同時に、紙とペンを引き寄せて魔法陣────魔法を発動させるプロセスの一つを、描き始めた。


「こんなものか」


 記号や数字などが羅列された丸い陣を見下ろし、ルークは手を翳す。

そのまま魔法陣をなぞるように魔力を注ぎ込むと、魔法────事象を書き換える力(・・・・・・・・・)が、発動する。

今回で言うと、現時点ではまだ分からない筈の事実を知ることが事象の書き換えに該当する。


「……居ない?」


 ルーク自身など(一部例外)を除き、誰も探知魔法には引っ掛からなかった。

つまり、領地全体に魔法を展開出来る魔力の持ち主は現在ここに存在しない。


(既に公爵領から、出たのか?もしくは、前回の魔法発動に耐えられず自滅したか。後者ならまだいいが、前者なら少々厄介だ)


 椅子の肘掛けに軽く寄り掛かり、ルークは次の手を考える。

そんなとき、雨音を耳にした。

だが、彼は気にしない。

探知魔法の結果を鑑みて、これは普通の雨だと判断したため。


(父上と母上に頼んで周辺の領地に捜査網を広げつつ、最近領内で亡くなった者を調べるか)


 おもむろに席を立ち、ルークは自室を後にする。

そして、ライアンの執務室に向かう最中、騎士や使用人とすれ違った。


(なんだか、慌ただしいな。何かあったのか?)


 若干の違和感を抱きながらも前へ進み、ルークはライアンの執務室を訪れる。


「ちょっと話が……ん?」


 どこか焦っている様子のライアンとヘイゼルが目に入り、ルークは怪訝そうな表情を浮かべた。

────と、ここでヘイゼルが顔を上げる。


「ルーク、いいところに来たわね。今、降っているのが────まさに例の水よ」


「はっ?」


「まあ、今回は植物だけじゃなくて生物にも影響のあるものだから完全に同じとは言えないけれど。でも、この短期間で模倣犯が出てくるとは思えないし、同一人物と見ていい筈よ」


「ちょ、ちょっと待って」


 ズイッと手を突き出し、ルークはもう一方の手で額を押さえた。


「さっき、領地全体に探知魔法を掛けて魔力量の多い者(術者)を探したが、該当者は居なかった。それなのに、また同じことが起こっただと?」


「(この子、今サラッと『領地全体に探知魔法を掛けて』って言ったわね。普通は目視出来る距離までが、限度なのに。歴代に名を残す魔導師でも、せいぜい街一個分くらいよ。さすがは魔力無限(・・・・)とでも、言うべきかしら?)相手は魔力を隠すのが、上手いのかもしれないわね。もしくは、遠隔で魔法を行使出来るのか……まあ、それは一旦置いておいてこの水を調べてちょうだい」


 窓の外を手で示し、ヘイゼルは切り替えるよう言い聞かせた。

すると、ルークはハッとしたように視線を上げる。


「あ、ああ。そうだな」


 カチャリと眼鏡を押し上げ、ルークは窓辺まで足を運んだ。

そこからじっと外の様子を観察し、神経を研ぎ澄ませていく。


「これは……」


 頭を捻り、ルークはゆっくりと後ろを振り返る。


「────魔法ではないかもしれない」


「「!?」」


 ヘイゼルのみならず、静かに様子を見守っていたライアンまで大きく息を呑んだ。

そもそもの前提が、間違っていたなんて予想だにしてなかったのだろう。


「エネルギー源は魔力ではあるが、魔法にしては魔力の残滓が少ない。それに、波長────魔力の流れや扱い方────に癖がないのも気になる。なんというか……どこか機械めいた無駄のなさと一定性を感じるんだ」


 ルークは根拠を提示し、窓に寄り掛かった。

そんな彼を前に、ヘイゼルは少し考えるような素振りを見せる。


「今の言い分を総合すると、貴方は────この現象を引き起こしたのが魔道具(・・・)によるもの、と考えているのね?」


「ああ(魔道具は定められた量しか魔石(魔力)を使わないからほとんど残滓を出さないし、波長も真っ直ぐで癖がない(単純だ))」


 僅かに表情を険しくするルーク。

その傍で、ライアンは腕を組んだ。


「なら、プリシラに相談した方がいいんじゃないか?魔道具はあの子の専門だし」


「それは確信を持ってからだよ」


 『まだ早い』と一蹴し、ルークは窓から身を起こす。


「一先ず、僕の考えが正しいのか確かめてくる。発動中の今なら、魔力を辿って行ける筈だからね」


 『これ以上の好機はない』と主張し、ルークは扉の方に向かっていく。

どことなく足取りが重い様子の彼に、ライアンとヘイゼルは声を掛ける。


「そうか。お前なら大丈夫だろうが、気をつけるんだぞ」


「さっきも言ったけど、今回の水は生物にも影響のあるものなの。騎士達の話では、皮膚が爛れるらしいわ」


「分かった。注意しておく」


 そう言うが早いか、ルークはライアンの執務室を出ていった。

一度部屋に戻って準備してから、屋敷を後にする。


(魔力の始点は……あっちだな)


 魔法で周囲に結界を張り、空中に浮くルークは右斜め前方へ飛んでいった。

その間、何人か怪我をした住民が居たためサッと治癒魔法を掛けておく。


「全くもって、悪趣味な……」


 犯人に対して苛立ちを覚えつつ、ルークは魔力の始点に辿り着いた。

そして、辺りを捜索すること二十分────魔道具を発見する。


(チッ!結局、プリシラ案件かよ)


 少し乱暴に魔道具の電源を切り、ルークは水を止めた。

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