植物の復活薬
(やっぱり、相対する効果の薬草を掛け合わせるのは危険か。けど、従来のものでは効力が足りないだろうし……何とかするしかない)
ヘナヘナになっていた庭の植物を思い浮かべ、プリシラは鍋の様子をじっと観察する。
そのまま視線を外すことなく、彼女は口を開いた。
「精霊さん達、守ってくれてありがとう。あと、申し訳ないんだけど、もう一回薬草の下処理とお湯の用意をお願い出来る?」
『『『うん、いいよー!』』』
即座に応じる精霊達。
(う〜ん……相対する薬草同士を中和させる別の薬草か、薬品を追加する?もしくは、途中まで別々で調合して最後の最後に掛け合わせる?それなら、魔力で無理やり抑え込めないこともないし)
ちなみに普通はそんなこと出来ない。多少摩擦が減る程度。
錬金術師のプリシラだから、出来る芸当。
「────うん、とりあえずその方法を行こう」
解決の方向を定め、プリシラはさっさと失敗作を処分した。
「精霊さん達。薬草なんだけど、今回は種類ごとにそれぞれ別の皿に入れてもらえる?それから、鍋とお湯はもう一組準備してほしいの」
『『『分かったー!』』』
突然の変更にも嫌な顔一つせず、精霊達は素直に従った。
間もなくして、諸々の下拵えが整う。
「ありがとう────じゃあ、まずはこっちの薬草を鍋に入れてっと」
今回もまた豪快に放り込み、プリシラは長い棒で撹拌する。
その際、自身の魔力を流すことを忘れずに。
「出来るだけ、成分を魔力でコーティングして丸めて……丸めて……丸めて……おっけー!」
撹拌と魔力注入をやめ、プリシラは精霊達の方を見た。
「精霊さん達、この鍋見ていてもらえる?」
『『『りょーかーい』』』
「よろしくね────じゃあ、次はこっちの薬草を」
もう一つの鍋に残りの薬草を全て入れ、プリシラは再び撹拌と魔力注入。
それが済んだら、例の試験管の出番だ。
「焦らず、少しずつ……少しずーつ」
注意事項を口ずさみつつ、プリシラは鍋の中に試験管の中身を少量垂らす。
その刹那、水面を這うように火が上がった。
が、直ぐに収まる。
「うんうん、この調子」
火が上がるのは織り込み済みなので、プリシラは大して驚くことなく鍋の中を混ぜた。
そして、試験管の中身が空になるまでこの手順を繰り返し、何とかもう一つの調合も終わらせる。
「あとは、この二つを掛け合わせるだけ」
ついに最難関の作業へ取り掛かるプリシラは、先に調合した方の鍋を指さした。
「精霊さん達、あっちの液体をゆっくりこっちの鍋に入れてもらえるかな?」
『『『任せてー!』』』
手を上げて返事し、精霊達はプリシラの指定した鍋を風で浮かせた。
その状態でもう一つの鍋のところまで運び、慎重に傾ける。
とうとう二つの液体が交わる中、プリシラは撹拌を始めた。
もちろん、魔力を流し込みながら。
(それぞれしっかり処理を行ったおかげで、摩擦は少ない。でも、完全になくなった訳ではないからしっかり抑え込まないと)
液体に溶けていく魔力を操り、プリシラは双方の成分を無理やり紐付け、一つにしていく。
その間、何度も水飛沫が上がるものの、本当に軽くなので怪我をすることはなかった。
「────よし、完成!」
綺麗な緑に染まった液体を見下ろし、プリシラは満足そうに笑う。
その傍で、精霊達も顔を綻ばせた。
『『『やったねー!プリシラー!』』』
「うん。協力してくれてありがとう、精霊さん達。おかげで、とっても助かった」
心からの感謝を伝え、プリシラはいつもの鞄に液体を鍋ごと仕舞う。
(早速、お父様に知らせに行こう)
上機嫌で部屋を後にし、プリシラはライアンの執務室に向かった。
その道中、庭に寄って復活薬の効果を確かめたのは余談である。
「────お父様、植物の復活薬を作ってみたの」
ライアンの執務室に入って開口一番、プリシラはそう言った。
鞄の中から鍋を出して執務机に置く彼女を前に、ライアンは席を立つ。
「おお!ありがとう、プリシラ!」
勢いよく身を乗り出し、ライアンは僅かに表情を和らげた。
「これで自然再生の目処が立つ!」
天の助け!と言わんばかりの反応を示し、ライアンは鍋を持ち上げる。
一応、出来たてホカホカだというのに。
「セバス、大至急手配を!」
「畏まりました」
ずっと傍で控えていたセバス────レーヴェン公爵家の執事は、トレイに載せる形で鍋を受け取った。
さすがに素手で触るような脳筋では、ないらしい。




