一話
久しぶりの投稿ですので、三ヶ月分文章力が上がっているといいのですが…。これからはもう少し投稿できるよう物語を練っていきたく思います!
レイナは、まだ早朝で薄暗い中ゆっくりと目を覚ました。体は数日間馬を走らせただけありまだだるさを感じたが、その体には手当てされた形跡があり、傷だらけだった腕や足は真っ白な包帯が巻かれていた。ふと体を起こして自分が寝ていた場所を見遣る。天井付きの上品なベッドの周りは、数年目にしていなかった植物のプランターが綺麗に並べられている。
助けてもらったことに気づいたレイナは、素足のまま床へ降りると、高い温室の天井を見上げた。
透明なガラスの天井はまだ昇りきっていない太陽の日差しを少し頂き、きらきらと輝いている。
しばらく歩いていると、レイナの視界に小さな背中が入ってきた。
「あ、あのっ…」
少年が振り返る。
レイナは少年が振り返ったのと同時に、感嘆のようなため息をもらした。
少年の顔は大変整っていたのだ。目鼻がすらっとしていて中性的なその表情にはやや、憂いがある。
翡翠のような両目がレイナを捉え、肩に提げたブランケットから真っ白で細い腕が覗いている。
金糸の髪が肩からさらりと揺れ、少年は柔らかく微笑んだ。
「目が覚めたのですね?」
「あ、ああの、ありがとう…私どうしてここに…?」
朝も早いというのにレイナより先に起きていた少年は、持っていた羽ペンを台座に戻して座っていた椅子から立ち上がった。少年はガラスが散らばった隅を指差し苦笑した。
「貴女があこから馬ごと飛んできたので、介抱しました。まだ、痛む所はありますか?」
「ええっ?そうなのっ!?ああ、ごめんなさい、カムラ…馬は無事?」
「ええ、ここでは狭いので外に繋いでいます。ご心配でしたら様子を見てあげてください。大人しい馬ですね」
少年は温室の大きなドアを開いてやり、レイナを馬が繋がれた場所まで誘導する。
馬―カムラは元気そうにいななき、両方の蹄を鳴らしながら嬉しそうにレイナを迎えた。
「カムラ!ごめんね…無茶させて…」
レイナはカムラの首元に腕を伸ばし、抱きしめる。
カムラはそんなレイナの頬を軽く鼻先で押してそれに答えた。
「本当にお世話になったわね、ごめんなさいえっと…」
「僕はアルク。無事で何よりです。中々目を覚まさないので心配しました」
アルク?レイナはどこかで聞いた名だと記憶を探った。
確か母がそんなような名前の人を捜せとは言っていたが、まさかこんな幼い少年のはずがない。そう思いレイナは何も聞かず、自分の名前を告げた。
「そ、そう。私はレイナ。助けてくれてありがとう。ねえ君…ここからトーガまではどれくらいかかるかな?」
「そうですね、飛んでいけば十分ともかかりませんが…馬だと数時間はかかるかもしれません」
「飛ぶ?」
「はい。僕の従者ならすぐ送っていってあげれるのですが…」
飛ぶ、とはどういう意味なのかまだ理解ができなかったレイナだが、
幼い子供が言うことだと、右から流して聞いた。それよりもレイナの耳についたのは従者という言葉だった。アルクはどうやら貴族か何かのようだが、依然両親の姿はない。
お礼を言いたかったレイナは尋ねてみることにした。
「あー、えっとアルク。君のご両親は?」
「え?はい、数十年…以上前にもう死んでしまいましたが…」
「そうなの…やだ、ごめんなさい嫌なこと聞いちゃって…」
「いえ、もう随分昔の話なので」
にこっ、と愛らしく微笑んだアルクに、レイナは遺産で生活する彼を些か不憫に思った。
何故ならそれは自分も同じで、国の衰退と共に死んでしまった父を想ってレイナも似た感情があったからだった。そのことで一気に親近感が増したレイナは、ばっと振り返ってアルクの両腕を取った。
「ねえ、よかったらアルカルデのことを色々教えてくれない?私、違う大陸から来たの」
「そんなことならお安い御用です。さあ、中に」
本当は馬が無事ならすぐ此処を発つつもりだったが、レイナはなんとなくいたたまれなくなって暫くアルクの話を聞いてみることにした。
温室に案内される頃、日はすっかり昇っていた。




