01-13 秘密兵器
「やるぞ、グレア!」
〈了解!〉
バイザー左下、共有されたオウル・ビジョンに目を向ける。隊長機、カラス一機が並び、そのやや後方に俺のXi-37Dを視認。残り二羽は大きく旋回してコチラの背後を狙う動きだが、回り込まれるまでに時間の余裕がある。
間に合う。間に合わせる。
スロットル・レバーを左手で握り、さらに加速。脚部がスーツに圧迫され、先の閃光の影響もあり、視界がチラつく。
〈遅ぇぞクロースター!〉
「もう追い付きますよっ!」
隊長は小さく鼻を鳴らすと、蛇行機動を止め、減速しつつの螺旋軌道へ移行した。
尾翼に六芒星の付いた白カラスが、それを真似るように減速する。
自機との位置関係から、ミサイルを撃ち込まれても回避できる——その見積もりで、奴は隊長の追尾を続行した。
——そう、その判断で正しい。回避できるさ。
普通のミサイルならなっ!
「専用兵装発射!」
機首を敵機前方へと向け、発射コールを叫ぶ。
同時、主翼下から真っ直ぐ駆け抜ける飛翔体。
外観も、速度も、通常のそれと類似している。
唯一違うのは、その先端に付いた球状の物体。
隊長機が加速するのを確認し、俺も舵を切って、上方へと退避する。
奴が回避できたか否か、その瞬間を目視確認する余裕は無い。いや、直撃はしないだろう。
だが——
〈破裂!〉
グレアからの合図。微かに鳴った破砕音。そして鋼板を穿つ音がひとつ。
《な、なんだァ!?》
視認せずとも、おしゃべり野郎の焦り声が、その命中を教えてくれた。
《クソッ、機体とのリンクが途切れやがったッ! テメェ、一体何をした!!》
「ははっ! 無い頭で考えやがれっ!」
協定無線で煽りながら、機首を戻す。目線の先、旅客機のような巡航速度で水平飛行する、前進翼を畳んだ白い紙飛行機。その後部に、太く長い鉄針が深々と突き刺さっていた。
《まさか……電磁パルスかッ!》
〈御名答だぜ、ヒヨコちゃん〉
今度は隊長が返事をする。
《機体至近で弾頭を爆破させ、内に仕込んだ大電流を帯びた電極をブッ刺しやがったのかッ!》
——さすがAI、鋭い洞察力だ。いささか、感情が剥き出しだけどな。
精密機器の塊である戦闘機。それをさらに、人工知能が制御をし、高速処理しているのだ。
ただでさえ限界状態寸前の電気回路——そこに外部から負荷を加えてやれば、簡単にショートする、という寸法。
これこそが、対カラスを想定した専用兵装——ACM-9。その初御披露目。
制御不能になってそのまま墜ちてくれれば……と思っていたが、どうやら統制を失うとオート・パイロットに切り替わる機構だったらしい。
《近接信管? いや、あの弾頭でそれは不可能だ。それに発射した奴は退避機動中で、爆破タイミングを測れるとは思えねェ……》
ぶつぶつと考え込んでるのが丸聞こえだが、その答えを教えてやる必要は無い。
当然、ミサイルを破裂させたのは俺じゃない。
この戦場を唯一俯瞰してる者——グレアの仕事だ。奥行きで測る俺よりも、平面的に観測できる彼女の方が的確だからな。
《チクショウ! そいつも俺の身体の一部だッ! 墜とさせねぇぞ、ミナトォ!!》
〈追撃して、ミナトっ!〉
相反する二人の声。
後ろに奴ら二機を背負いながら、呑気な遊覧機を星に変えるべく、黒鳶は空を焦がす唸りを上げた。




