表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/40

01-11 迷いと決意

挿絵(By みてみん)


〈ボサっとすんな、クロースター!〉


 通常回線に切り替えたクランプ隊長がえた。彼の機影は、俺を置き去りにして、ぐんぐんと敵との距離を詰めていた。


「け、けど隊長! リックが——」

〈リックはもう死んだっ!〉


 躊躇いなく吐かれたその言葉が、つんざく。


〈いいかミナト! アレはリックの記憶かもしれねぇ。人格かもしれねぇ。けどなぁ——〉


 一番機の機首が、三羽を睨むように下を向く。


〈奴にもう心は無え! ありゃAIだ!〉

「まだそうと決まったわけじゃ——」

〈そうと決めつけろ!!〉


 全身が痺れるほどの怒号。


〈空で迷うな! 迷った奴から墜ちる! あの日に背負ったもんを復唱してみろ、クロースター!〉


 ——あの日……。


 そうだ。リックを失ったあの日、俺は誓った……二人分の、想いを背負うと。


〈ミナトっ!〉


 グレアの、気丈に振る舞うも揺らぎのある声。


〈さっさと隊長を追いなさいよ! じゃないと私がカバーに入るわよ!〉

「バカ言うなよ、それじゃ作戦が崩れるだろっ!」


 茶化すように答えた俺の声も、まだ僅かに震えていた。しかしそれでも、少しだけ気を持ち直した。


 そうだ。迷えば、隊長もグレアも危険に晒す事になる。俺がやるべきは、生き延びて、カラス共を、墜とす。そのために、飛び続けること。


 左手を伸ばし、スロットルを全開にする。身体に掛かる加速度が、俺の迷いを吹き飛ばしていく。


〈OK! オウル・ビジョン、共有開始!〉

了解(ウィルコ)〉「了解ラジャ!」


 彼女の合図と俺らの応答。その直後に、バイザー左下に新規ウインドウが展開される。


 そこに投影されるのは、戦域の俯瞰視点映像。山の起伏に沿う陰影、俺と隊長の黒鳶。そして、光を反射する白い前進翼機が三つ——そのそれぞれに、赤い正方形のマーカーが追従する。


 グレアがバイザー越しに見ている景色を、AIFAによる演算処理と高速データ共有により、ホワイト・レイヴンを視覚的に探知するシステム——オウル・ビジョン。


 空中警戒管制機が随伴できない特殊殿軍隊だからこそ、彼女がスケアクロウ隊の眼となり指揮を取る戦術。


〈ハッ、今日もいい眼してんなぁ、グレア! 老眼の俺でも敵が良く見えらぁ!〉

〈私の視力は関係無いですし、こないだの検診結果で隊長が両眼とも2.0なの知ってますからね!〉


 そんな軽口に、俺の心も軽くなる。きっと二人の内心にも葛藤があるのかもしれない。けれど今は、迷わず、やるべき事に専心する。ただ、それだけ。


《ウハハハハ! そう来なくっちゃなァ!》


 馴染みの無い声色が、未だ協定無線を通して煽り立てる。


《隊長も、グレアも、そしてミナトもォ! みんな俺の星に変えてやるよォ!》

さえずるな、小鳥が〉


 低音の罵声と機銃掃射の騒音が、この決戦の開幕を告げた。





 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ