表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/40

01-04 二年間の犠牲

挿絵(By みてみん)


「第999航空特殊殿軍(でんぐん)隊、か……。名前を変えてから、もう随分と出撃させられたよな」


 グレアの正面に着席した俺は、カレーに匙を突き立てながら言った。


 俺らの長テーブル以外にも食事中の隊員は居るが、互いの話し声が聞こえない程度には散らばっていた。


「部隊の主目的が他の航空隊と異なるからね。酷い時なんか、一日に三度も緊急発進スクランブル——なんてこともあったかしら」


 目線を皿に向けたまま、赤銅色の横髪を耳の後ろへと掛ける。湯上がりのせいだろうか、その仕草が妙に色っぽく見えた。


 俺は舌に残る熱を冷水で流し、一呼吸置いてから返す。


「あの時は本当に大変だったよな。最後には兵装の補充も無く、作戦空域間を直行だったし」

「そうね。けどその甲斐あって、手遅れになる前に救助できた」

「……だな」


 感情の篭った彼女の言葉に、俺は俯きながら同意した。


 殿軍——それは、敵に追われる味方を援護したり、あるいは代わりに囮になる部隊の事だ。劣勢であるのが確定的な戦局へ飛び込まねならず、何より一分一秒数コンマを争う迅速さが問われる。


 本来であれば、Yog-25(イエロースワロー)のような脚の速い機体が適任だが、それではせいぜい撹乱止まり。敵の撃墜まで至るのは難しい。


 何より問題なのは、あのカラス共だ。


 この二年間で、平定連合国側は守勢に転じてしまった。エリア447で勃発した当時のヴァルチャー隊と、某国に開発された次世代実験機との戦闘……。あれ以後、ホワイト・レイヴンのいる戦域で制空権を奪うのは不可能と化し、それが戦局を大きく捻じ曲げた。


 出逢ったが最後、あの化け物鳥は執拗に戦闘機を追い回し、喰い荒らし、骨までむさぼる。


 奴らと会敵して無事に帰還できたパイロットは、三人だけ……。そう。俺、グレア、そして隊長。他は皆、全滅している。


「この基地も……広くなったよな……」

「…………そうね」


 彼女から、力の無い声が返ってきた。この食堂もリックが居た頃は、もっと賑わっていた。


 大声で戦果を自慢する奴。酔っぱらって突然歌い出す奴。故郷にいる家族や恋人の話をしてた奴ら。


 もうその顔も、声も、名前も、思い出せない。


 異なる部隊で、違う作戦で、交流する事も無い。戦時中だ。当然起こり得る別れ。それでもやはり、淋しさと哀しさは湧くのだと、思い知らされた。


 だからこそ、俺もグレアも、仲間の背中を守る、あの白い凶鳥を墜とす——その想いで、飛び続けている。


 トビカラスを狩る。その為だけに用意し、訓練した。対レイヴン専用の——


「おう。まぁた辛気臭ぇツラで飯食ってんなぁ」


 ガチャン、と食器を置く音と共に、嫌と言うほど聞いた野太く掠れた声が、俺の横から掛かった。





 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ