01-03 二年間の成果
「あんたホント考えて戦いなさいよ、まったく」
食堂へ向かう基地の廊下。剥き出しのコンクリート壁に配管や通気ダクトが這う見慣れた景色を、俺とグレアは並んで歩いていた。
「いいじゃねぇか、ちゃんと撃墜できたんだし」
「あのねぇ! あんたの兵装は安くないのよ!?」
しかめっ面で俺の顔に人差し指を突き付ける。
「今日の任務で使ったACM-2! アレ一発で通常のミサイルを三つは買えるのよ?」
ACM-2は、飛翔速度と追尾性能を重視し推力偏向エンジンを搭載した赤外線ホーミング・ミサイルの事である。
「仕方ないだろ。俺のミルバスは格納室を無くしたから、対レイヴン用の兵装しか積む余裕無いの」
「だ、か、らぁ! 撃墜はクランプ隊長に任せて、あんたは囮役を買って出ればいいじゃない!」
鼓膜を震わせる勢いで彼女は続ける。
「ただでさえ機体の改修でかなり予算圧迫してるって言うのに! ちょっとは経費削減の事も考えなさいよ!」
「節約節約って……まるで母親みてぇだな」
「誰がお母さんかっ!」
思い切り肩パンされた。手加減無しで。
「イッッたぁ! おま、内出血するだろ、バカ!」
「普段からしてるでしょ。あんな無茶な飛び方してるんだから」
フン、と鼻を鳴らすとグレアはそっぽを向いた。対面から歩いてきた別部隊の隊員が「またやってんなぁ」と言いたげな顔ですれ違った。
「しっかし、ACM-9の方はまだ使う機会が無ぇな」
「それこそ対レイヴン用の秘密兵器ですもの。奴らと戦うまで絶対使っちゃダメよ」
「分かってるって」
食堂の戸を開くと、香辛料にニンジンや玉ネギ、炊き立ての米の香りが鼻をくすぐり、食欲を刺激する。どうやら今晩はカレーらしい。
「この二年間、味方航空部隊の撤退援護で出撃し続けて来たけど、なかなか遭遇しないよな」
皿によそった大盛り白米に、野菜のたっぷり溶け込んだルーをお玉五杯分くらい掛けながら言った。
「そう都合よく行かないわよ。奴らがどこに出没するかも分からないし、到着が間に合わず逃げられた事もあるし……」
グレアはお盆の上に、ラッシーの注がれたカップを二つも乗せた。手が塞がってるのを良いことに「相変わらずカラいの苦手なんだな」と笑ったら、蹴りを入れられた。
「とにかく、私たちスケアクロウ隊は、殿軍として友軍の帰還を助け続けるだけよ。たとえ白いカラスと出会さなくても、守れる命が、あるんだから」
席に着きながら伏し目がちに呟いた彼女に、俺は静かに頷くだけだった。




