00-20【クロースター】
「フッ。つーことは、辞める気は無ぇわけか」
クランプ隊長は、諦め顔で鉛色のボサ髪を撫で、続ける。
「いいだろう。言ってみな」
俺はひとつ大きく頷いた。
「——【クロースター】」
それを聞き、彼は小さく首を傾げる。
「どういう意図で、そう名付けた」
俺は右手を開き、持ち上げ、胸の前に浮かせた。
「リックが——友が果たせなかった夢を、代わりに背負う。俺の駆る黒鳶——その鉤爪で、星を掴む。そして——」
見つめる先、強く、強く握り込む。
「いつか必ず、あのカラス共を、星に変える。俺が捕まえてみせる。リックの為にも……!」
手の内から、赤い雫が流れ、手首を伝う。
「——それで、クロースター……か」
隊長は俺の震える腕を暗い目で眺めながら、小さく息を吐いた。
「その名……背負うには、ずいぶん重てぇぞ。覚悟は出来てんのか?」
それを聞き、ついニヤリと笑う。
「隊長の墓石ってのよりは軽いですよ」
「ハッ。違ぇねえ」
そう言って、まだ長い紙タバコを拾うと、灰皿に押し付けて火を消した。直後、勢いよく起立。
「ミナト・ハルモニア少尉ッ!」
打って変わって号砲の如き呼び声に、俺は反射的に直立姿勢を取り、視線を斜め上へ。
「貴官を立派なパイロットであると認定し、非公式愛称【クロースター】を名乗る事をここに許可するッ! その名に恥じぬよう邁進せよッ!」
「イエス・サー!」
弾かれたように、敬礼——したが、すぐに姿勢を解き、隊長に問う。
「——って、TACネームにこんな授与式みたいなの、ありましたっけ?ウチの軍」
「この方が気合い入んだろうが」
彼は座り直しながら、クックッと笑い声を漏らす。どうやら遊ばれただけらしい。
気の抜けた顔で隊長が言う。
「さぁて、これからが大変だな。まず手始めに……部隊の変更届からかねぇ」
「え? ヴァルチャー隊のままじゃ駄目なんですか?」
「敵の最新鋭戦闘機を追うんなら、遊撃隊って役割じゃ無理な話だ。今回の遭遇もたまたまだよ」
訊くと、あのホワイト・レイヴン達は北方を領空侵犯し、会敵した迎撃機を返り討ちにし、おそらくその帰路で俺らと出会した——らしい。
「今回のが初お披露目だったようで、まるで情報が無え。だが、奴らが航空戦力として前線に出張って来るのは間違いない」
「じゃあ、俺らの部隊が迎撃隊に——」
「駄目だ。敵の能力を見たろう。二機相手に四機で挑んでも歯が立たなかったんだ」
四機——その言葉に、胸が重たくなる。
「まぁ、その辺りは俺に任せとけ。どんな部隊名になるかは、お楽しみ、ってやつだ」
隊長は悪戯っぽい笑みを浮かべたのち、「おら、飯食って無ぇんだろ。食堂行け食堂!」と俺を作戦室から追い払った。
部屋を出てすぐ『頑張りましょう、ミナト』と声を掛けてきたフォーラに、俺は意味なく微笑んだ。
ミナト・ハルモニア。白いカラスに襲われ、大切な友を失い、それでも屈せず、意志を背負い、打倒を誓う。この時の彼は、まだ十七歳だった。
— 双曲のクロースター 第一幕 【完】 —
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【第一幕 あとがき】
こんにちは、作者の下田 空斗です。
まずは第一幕までの御愛読、
誠にありがとうございます!
ここまでが、主人公ミナトの序章。
第二幕から、彼の本当の戦いが始まります。
はたして彼らは如何にして、
ホワイト・レイヴンと渡り合うのか?
先の展開に、乞うご期待!
彼らの応援ついでに、
コメント等を入れて下さると、
私のモチベーションにも繋がります!
何卒よろしくお願い致します!!
では、第二幕でお会いしましょう。
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