00-12 協定無線
「目視、不明機2!」
無線通達する。北から雲海の上を滑るように飛来する、横並びの発光体。
[警戒せよ。ただし、発砲は禁ずる]
AWACSからの勧告。
〈はぁッ!? 戦闘するな、ってのかァ!?〉
〈バカヤロウ、敵かどうかも分かっちゃいねぇんだから、当たりめぇだろうが〉
反発するリックに〈大人しくしとけ〉と隊長は続け、俺らに編隊を維持したまま上昇するよう促す。
計器を確認するが、やはりレーダーに機影は映らない。最新鋭のステルス機か……?
そう考えてる内に、ヴァルチャー隊の真下を閃光が飛び去る。刹那、網膜へ焼き付いたのは、飾り気の無い菱形の主翼。そして、磨き上げられた真珠のように、全面が白一色——さながら紙飛行機にエンジンを積んだような機体だった。
《——平定連合国の部隊へ告グ》
耳に飛び込んできたのは、知らない男性の、落ち着いた、しかしアクセントの不自然な声。
「なんだっ!? 無線傍受か!?」
『いえ、これは協定無線のようです』
女性ボイスのフォーラが冷静に分析した。当宙域にいる全機に向けた、共用の無線回線。そこに送信された音声。
《タだちに降伏し、我々に従い、捕虜となる事を提案する》
人のようで人じゃ無い不気味なトーンで、平然と述べた。
〈ハッ、断ったらどうなるんだ? 旧式AI様よぉ〉
隊長も協定無線に切り替え、あしらうように言い捨てた。管制官から、[勝手な真似をするな!]と叱る声が届く。
《——敵対意志アりと見做した》
どうやら、人工知能の逆鱗に触れたらしい。
《ホワイト・レイヴン、交戦》
南を飛ぶ二機が急旋回し、嘴をこちらへ揃える。
〈よっしゃァ! 四対二で有利だ、獲るぞォ!〉
言い終わらぬ内に三番機は隊列を崩して、敵機に向け進路を変えた。
〈あんのバカ! ヴァルチャー4、ヴァルチャー2と二機編成! 離れず決して深追いすんじゃねぇぞ!〉
「ラ、了解っ!」〈了解!〉
俺らが返答する間に、一番機は星付き鳶の尾翼を追いかけて行く。
直後に、白いカラス共が左右へ散開——まるで、機械的に描かれた見事な、双曲線。
——……ん?
奴らの機影——その姿に、俺は違和感を抱いた。
——形、変わってねぇか……?
さっき通過した時は、確かにトライアングル型だった。だが今見えた形状は、まるでW型をしていたような——
〈うわッ! 前進翼ッ!?〉
最も奴らに近いリックが真っ先に確信していた。
〈可変翼機か、クソ! 奴ら迎撃だけじゃなく格闘戦も出来る機体だ、気を付けろ!〉
隊長の怒号に似た警告が飛ぶ。
〈ミナト! 隊長に言われた通り——〉
「分かってる! 無茶はしないさ!」
グレアの通信に被せるように返し、リック達と逆の、右手へ散ったカラスを標的に定めた。
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【用語解説コーナー】
可変翼機
:高速域と低速域で主翼の形状を変える機体。
それにより、巡航時の最高速度を保ちつつ、
戦闘時には機動性の高い形態へと変形する。
映画『TOPGUN』のF-14などが有名。
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