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花火大会

 恭一と麻人は、みなと合流した。姉や奈穂にはぐれてしまった事を咎められたが、麻人が謝り丸く収まった。

 麻人は周りを和やかにするなと恭一はつくづく感心していた。


「もうすぐ始まるね。ドキドキする」

 奈穂は両手を合わせ、祈るような姿勢で空を眺めている。


 花火が打ち上げられる河川敷には、レジャーシートを敷いた家族連れや、簡易椅子に座った人々などがいる。打ち上げ数は二千発ほどだが、毎年多くの人がやってくる。

 

 恭一の右隣には麻人がいて、麻人の隣には悠がいる。一緒に来るのは初めてなのに、恭一は何度も来ているような気分だった。


 花火開始のアナウンスと音楽が流れ始めた。

 

「ひゅーー、どーん」

 

 夜空に鮮やかな色の花火が上がり、辺り一面が明るくなった。観客達から、歓声が上がった。

 

 続けて打ち上げられ、美しい輝きとともに大きな音が響いている。恭一は、ふと麻人と悠の方を見た。空を見上げながら、二人は口を開け楽しそうに笑っている。恭一も、口元が緩んだ。今、この瞬間が心地よく満ち足りていた。


「恭一君。とても楽しそうだね」

「え?」

 恭一は、即座に横を見た。麻人が、にこにこしながら恭一を見ている。

「麻人は?」

「もちろん、僕は楽しいよ。花火、迫力あるよね」

「ああ、そうだな」

 

 恭一は、すぐに花火に目を向けた。麻人にずっと見られていたのだろうか。どんな顔をしていたのだろうかと思い面映(おもは)ゆかった。

 恭一の前にいる彩音と奈穂は、時折「綺麗」「すごい」と声を上げている。

 彩音から、気持ちばかりの距離をおき景山が並んで見ている。

 

 恭一は、景山の肩を軽く叩いた。

「花火すごいよな。こっちに来るか」

「はい」

 景山は、ささっと恭一の左横に来た。

「綺麗だよな」

「はい。花火大会は初めてで……」

「そうなんだ」

「誘ってくれて、ありがとうございます」

 はにかみながら笑う景山に、恭一も笑顔を見せた。


 花火大会は、そろそろ終盤なのだろう。打ち上げられるスピードが速くなり、花火の光がどんどん重なりあっている。周りの歓声から、みなの興奮が伝わってくる。

 約一時間程の花火大会は、あっという間に終わってしまった。さっきまで辺り一面が明るかったせいか、今は普段の夜空に戻り、恭一は少し寂しさを感じていた。


「楽しかった。また、来年も行きたいな」

 麻人は、恭一を見ながら言った。

「私も行きたいです」

 麻人に続き、悠もテンションが上がっている。

「そうだな。来年も行こう」

 恭一はいつも通りに答えたが、心は熱くなっていた。


 恭一達は、人ごみの中をゆっくりと歩き、家路に向かった。今日、奈穂は恭一の家に泊まるようだった。彩音と奈穂は、悠も一緒に泊まらないかとしきりに誘っていた。

 恭一はあえて何も言わなかったが、麻人とゆっくり話がしたいと思っていた。

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