二人で
「今年も咲いたな」
「はい」
水色の朝顔を眺めていたアサは振り返り、京之助に微笑んだ。
「朝顔はなんだか笑っているみたいで……元気がでます」
「そうだな。アサのようだ。綺麗だ」
「え?」
アサは、顔を赤らめにっこり笑った。
『かわいいな』と思ったものの、口には出さなかった。
夏になると、アサは朝顔柄の浴衣をよく着ていた。
◇
「悠、浴衣が似合ってるよね。朝顔柄が可愛いな」
「そうだな。お前も……似合うと思うよ」
「え……?」
「嘘、嘘」
「何、それ」
口を尖らせた麻人が可愛らしく、何だか可笑しくなり恭一は笑ってしまった。つられるように、麻人も笑い出した。
「それにしても、さっきから女子達はずっと食べてるな。特に悠はすごいぞ」
「ほんとだ。悠は僕より食べるんだよね」
悠は、たこ焼きや、さつまいもスティックを食べた後、今は回転焼きを何個か買っている。
「お兄ちゃん、はい。恭一さんも」
悠が大事そうに持った回転焼きを、麻人と恭一に渡しにきた。
「ありがとう」
麻人は両手で持ち、恭一も右手で持った。悠が持つ紙袋には、まだ三つ入っている。
「その三つは自分で食べるの?」
「うん」
にこにこしている悠に、麻人は呆れた表情をしている。
「悠は、甘い物も好きなんだな」
「はい」
「相変わらずの食べっぷりだな」
「え? すいません」
「いや。せっかく来たんだ。たくさん食べるといい」
恭一は、悠が美味しそうに食べている姿を見るのは好きだった。麻人も同じ気持ちだろうか。悠がたくさん食べている時は、にこにこしている。
恭一と麻人は、とりあえず悠に貰った回転焼きを食べた。
「僕達も、何か買おうよ」
「そうだな」
恭一と麻人は、二人で屋台を巡った。回転焼きを食べたせいか、空腹感がなく何となくぶらぶらと歩いていた。
「ねぇ、あれ美味しそうだよ」
麻人が、肉巻きおにぎり棒の屋台を指差した。
「食べたことないな。買ってみよう」
二人は、串に刺した肉巻きおにぎりを歩きながら食べた。
「美味しい」
肉にからめたタレが、麻人の口のまわりに付いていて、
「付いてるぞ」
恭一はハンカチで拭こうとしたが、
「いいって、汚れるよ」
麻人は、くすくす笑いながらティッシュで拭いていた。
恭一と麻人は、まるで二人だけで来たかのように歩いていた。特別、会話をする訳ではない。いつの間にか、時が過ぎていた。
「そう言えばさ、みんな何処に行ったんだろ?」
「ほんとだな」
「僕、電話してみるよ」
麻人は、悠に電話しているようだ。すると、恭一のスマホに着信があり見てみると彩音からだった。
「あ、姉さん。うん、分かった」
「彩音さん?」
「ああ」
「何て?」
「いい場所が見つかったらしい。何処にいるのか心配してた」
「だよね。悠は怒ってたよ」
「行くか」
「そうだね」
恭一と麻人は、小走り気味に彩音達がいる所に向かった。下駄が走りにくいなと思いながらも、楽しい気分になっていた。




