表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

68/71

猫との縁

「あのカラスはビックリしたよね」

 縁側で寝転がっていた奈穂が、立ち上がり言った。

「え? そうだった?」

 悠は全く気付いていなかったようだった。

「噓でしょ。バサバサと飛んでったのに。結構目立ってたよ」

 奈穂が、驚いたような顔をしている。

「私、緊張してて……周りを見てなかった」

 照れくさそうに笑う悠に、みんなが大笑いした。


「悠ちゃん、すごく緊張してたものね」

 彩音も縁側から立ち上がり、テーブルの方へやってきた。

「この神社の伝説の天狗様が来たみたいで、ちょっと感動したわ」

 奈穂が言うと、麻人がクスクス笑いだした。


「麻人さん、なんで笑ってるの?」

「ゴメン。思い出して……ほんと良かったよね」

 奈穂は、少しむすっとしている。


「悠は、初めてなのに良く出来てたな」

「ありがとうございます」

 恭一に褒められ、悠は笑顔になった。


「恭君。私は?」

「奈穂ちゃんは、いつも通りで安心して見れた」

「ふうん」

 恭一の言葉に、奈穂は口を尖らせていた。


「奈穂ちゃんは、とっても綺麗だったよ」

 麻人が言うと、奈穂は嬉しそうに顔を赤らめた。


「神社の伝説、補足するストーリーがあること知ってた?」

 彩音の新情報に、皆が知らないと言った。恭一も、初めて聞く話だ。


 天狗の男の子の失くし物を探した娘は、良縁に恵まれた。その相手との出会いの話だ。

 娘はある日、迷い猫に出会った。お腹をすかせた猫に、飲み物や自分の食べ物を分けてあげていた。そんな折、迷い猫の飼い主が娘の元を尋ねてきた。心優しい娘に惹かれ、猫の飼い主は求婚した。


「お婆ちゃんから、最近聞いた話なの。猫って、ご縁を運ぶって言われてるものね」

 彩音は、恭一と麻人と悠の方を見てにやりとした。


「ビハクが、みんなと出会わせてくれたよね」

 麻人は、しんみりと呟いた。

「ビハクには、感謝しないとな」

 恭一も、しみじみと言った。


「ねぇ、ビハクはどこに行ったの?」 

 悠が、心配そうな顔をして辺りを見渡している。

「本当だ。ビハク……」

 麻人が、珍しく慌てている様子だ。

「そのうち、ふらっと帰ってくると思うけどな」

 恭一は言った。


「僕、探してくる」

 麻人は、急いで家を飛び出していった。恭一は、落ち着きを失った麻人が気になり、後を追った。


 麻人が、大きな杉の下でしゃがんでいる。

「麻人……」

 恭一が声をかけると、麻人は振り向いた。

「ビハク、ここにいたよ」

 麻人は笑顔だった。

「ああ、良かったよ」

 

 麻人は、ビハクをかかえ抱きしめている。

「ビハク、お腹すいたよね。家に戻ろう」

 麻人は、いつも通りの優しい声だった。


『お願い、もう少しだけ……』

 麻人が、確かにビハクに言っていたのを恭一は聞いた。意味は分からない。気掛かりではあるが、問い詰めることができなかった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ