従妹の好きな人
奈穂は、麻人の家で1人残され動揺していた。麻人は自分の部屋にいる。奈穂はダイニングルームの食卓に座り深呼吸した。
「どうしよう。麻人さんに飲み物でも持っていった方がいいのかな?」
独り言をつぶやきソワソワしている。すると、麻人が部屋から出てきた。
「奈穂ちゃん、1人なの? テレビでも見て悠が帰ってくるの待ってて」
麻人は喉が渇いたようで、冷蔵庫から冷やしたお茶を出し飲んでいる。
「あ、あの。大丈夫なの?」
「うん。大丈夫だよ。ありがとう。風邪うつしたらダメだから部屋に行くね」
麻人はすぐに部屋に戻っていった。奈穂はボンヤリしていた。麻人との会話にドキドキしているのだ。奈穂が麻人に対して特別な思いを感じたのは、ニッコリした表情を『可愛い』と思った時からだった。
奈穂は、幼少の頃から恭一のことが好きだった。
「大人になったら恭くんと結婚する!」
と幼稚園の頃に両親や恭一本人にも言っていた。もちろん、今も恭一のことは好きである。しかし、異性としてではなく兄のように慕っている。恭一は、ぶっきらぼうな感じであるがとても優しい。体調が悪い時、すぐに気付いてくれる。
クラシックバレエの発表会も、気がのらなくても見に来てくれた。そして、発表会にはいつもプレゼントを持参してくる。オルゴール付きのクマのぬいぐるみや、ポシェットやお菓子など。貰った物はとても大事にしている。クマのぬいぐるみは宝物だ。
また、恭一に褒めてもらいたくて、巫女舞はものすごく練習した。恭一が喜んでくれると、とても嬉しく感じる。
今通っている中学は中高一貫校で大学まである私学である。けれど、恭一が通う公立高校に行きたいと思っている。今は麻人もいるのでより同じ高校に進学したい。
以前、恭一に同じ学校に行きたいと言うと、
「せっかく努力して合格したのに。両親も熱心に協力していただろ。軽はずみなことをしてはいけない」
と説教されてしまった。
しょんぼりしていると、
「いつでも家に遊びに来たらいいんだ。俺にできることは遠慮せず言えばいい」
と淡々とではあるが、優しい言葉をかけてくれた。
奈穂にとって恭一はとても頼りになる存在だ。1歳しか年が違わないのに、随分と大人に思えてしまう。
最近は、悠という友達もでき一緒にいると凄く楽しい。悠といえば、2歳年下の中学1年なのにしっかりしている。恭一も悠も、何だか似ている気がすると奈穂は感じている。
それに比べ、麻人はほんわかしていて雰囲気が違う。けれど、側にいると落ち着き穏やかな気持ちになる。
「麻人さん、私のこと、どう思っているかな?」
奈穂は、1人物思いにふけながら恭一と悠が戻ってくるのを待っていた。




