復讐
「…ところで、貴様とアタシで少しお互いの能力、見せ合わない?」
バルミは突然、亜久未に手合わせを提案した。
「んー…ボクは別にいいけど…」
乗り気だが、少し戸惑いを隠せない亜久未。
「ツグちゃん…だけ、かな?」
よく分からない質問をバルミに向ける円。
「…そうだな。マルは二輝幻将の多属性…なのは知っているからな」
右眼で見て、それを見破ったバルミ。しかし、
「…ただ、ツグミの能力を読もうとしても、なぜか読めないんだ…」
どうやら亜久未には“右眼”は効かないようだ。
「ボクは“読心妨害”も身につけてる。だから読心術者にも心を絶対に読まれないんだ…」
そして、バルミに告白する。
「ボクは元々“旧・二輝幻将”の一員。その頃は、みんなが“読心妨害”を身につけていたよ」
天世も、彩夏も、そして志乃美も、読心妨害を身につけていたそうだ。
「…面白い。そんな貴様と手合わせ願いたい!」
戦闘態勢になるバルミ。
「いいよ。キミとは一度こうして手合わせしてみたかったんだよね。王女だし」
続いて戦闘態勢になる亜久未。
「それじゃ、サドンデス方式でいいかな?」
審判(と言うより観戦?)の円が言う。
「いや、本戦闘じゃないしセーフティ方式がいいかな」
そう提案する亜久未。
「…そうね。帝国に行く前の準備運動程度に」
賛同するバルミ。
ーーーーー説明しよう。
※サドンデス方式
どちらかが負けを認める、または戦闘を止めるまで続ける方式
※セーフティ方式
あらかじめ体力やパワーを制限し、制限された体力が無くなった方の負け、という方式
体力上限:5,000p ・ パワー上限:3,500f
ーーーーー
「それじゃ、まずは…」
亜久未から仕掛けようとする。が、
「…アタシはノーチャージで出せるわよ?」
と、バルミは亜久未めがけて神速で飛ぶ。
地面を思い切り蹴り、脚に気を集中。そして、空気裂砕を繰り出した。
「っ!? は、速い…!」
そう言いながらも、それを見切って避け、雷速でバルミめがけて飛ぶ。
そして天気を司り、自然の雷を落とし、それを体にまとい、
「…速さなら、負けないつもり!」
と、速さとともに仕掛ける。
「…なるほど。雷を利用する能力ね?」
そう言い、心の底では楽しみながら、亜久未の攻撃を避け、瞬時に脇腹へ回し蹴り。
その蹴りの速度は尋常じゃなく、目測できないほどに一瞬だった。
ただ、それを見切ったかのように、亜久未は魔力を局部集中させ、ダメージを最小限に抑えた。
「…バルミちゃんの能力、蹴撃だね?」
脚でしか攻撃してないことに気づき、そう問う。
「よく気づいたわね。脚でしか攻撃してないことに」
自分の能力を見切られた事に嬉しさを覚えながら、士気を高めていくバルミ。
「…でも、貴様は隠してる。もう一つの能力を…」
雷を操ってるだけじゃないことに気づき、そう問う。
「バルミちゃん…勘が鋭いね」
気づかれた、と言わんばかりの亜久未。そして明かす。
「復興支援って体力勝負だし、相当みんなの体力を消費するでしょ? だから、その回復に欠かせないのは、実はボクだったりするんだ…」
「ってことは、治癒系…?」
「そう。“身傷治癒”っていって、基本的には傷を治す。けど、最近では内臓や細胞に向けても効くようになってきたんだよ。自主的に修行したおかげだけどね」
こうして明らかになったところで、バルミは戦闘を取りやめた。
「手合わせありがとね。2人となら、きっとシェガンゾフ帝国に復讐できる…!」
帝国への復讐を心に誓うバルミ。
「ボクも、シェガンゾフ帝国には復讐したいと思ってた。バルミと一緒なら心強いよ」
復讐に同意する亜久未。そして、
「シェガンゾフ帝国に復讐するなら、今しかないよね」
と、円も賛成だった。
「そうと決まれば、向かう先は帝国!!」
3人とも闘志を燃やしながら、シェガンゾフ帝国へ向かう。
「…そういえば、姉貴…いや、シュロナ元気してるかな…?」
不意にバルミは呟いた。
ーーーーー…シェガンゾフ帝国。
シヴォ、ニェンテは、家に来ていた。
帰宅してからというもの、シヴォは独り、屋上に上がって天を眺めていた。
「…この宿命は逃れられないかな…」
そう言い、右手を強く握りしめる。
「…私は、私のことを捨てた王国のことは絶対に許さない…! ただフォゲウスのことが好きで、それで嫁いだだけだったのに…それが、こんな運命になるなんて…っ」
エフティルシパ王国に怒りを向けるシヴォ。
「…バルミ。どうやら貴女と闘うことになる宿命は逃れられないみたい。貴女に恨みは無いけど、王国の王女っていうだけで許せないの…!」
ーーーーー…某所。
シェガンゾフ帝国に向かう途中、殺意を直感的に感じ取ったバルミ。
「…シュロナ…! その殺意の矛先は、私じゃなくて父様でしょ!? それをアタシに向けるのは間違ってる…!」
王国と帝国の想いは、バルミとシヴォに乗っている状態で、ぶつかり合う……ーーーーー




