平和
ーーーーー…某世界、某所。
「あれっ? どうやらシヴォ…いや、シュロナは、先にバルミとの案件を片付けたいみたいだね~…」
夢芽は、少し不満げに呟いた。
「ふっ。やはり王国は潰しておきたいようだ。それでこそシュロナだよ…」
心底シュロナのことを信頼しているフォゲウス。
「それにしても、なんでまたフォゲウスより“王国”のことにこだわるのかなぁ? シュロナは」
父親の心配より復讐なシュロナを理解できない夢芽。
「それは知っているハズだろう? シュロナは元々“王国側”だったこと…」
フォゲウスは語り始める。
「最初は我が輩もシュロナのことを疑った…。王国側の人間が、帝王である我が輩に迫ってきた時にはな。王国の陰謀かとシュロナを疑ったこともあるが、シュロナは
『そんなの関係なく個人的に好き』
と言ってくれたのだ…。そのせいか、我が輩も恋に落ち、シュロナと我が輩の間に、ニェンテとニヒツ…子供を2人も作ってしまってな…
それからだったな。王国側が『シュロナは裏切った』と言って、彼女の名前から『ニダ・エフティルシパ』を剥奪したんだ…。そんな名前を失った彼女に、我が輩は
『バーノ・シェガンゾフ』を与えた…
今は『シュロナ・バーノ・シェガンゾフ』だが、旧姓は
シュロナ・ニダ・エフティルシパ
…つまり、バルミの実の姉なのだよ…」
シヴォの正体は、シュロナ。バルミの実の姉。
「そうだったんだ? そこまでは知らなかったなぁ~…」
実際、夢芽は2年前の破壊神との戦闘で右足と左腕を失っている。失ってからは、自分の魔力で“義足”と“義腕”を再生した。そして、世界最強として覚醒し始めたのは、実は1年半前。
…どこかで聞き覚えのあるエピソードだ。
「我が輩とシュロナが嫁いだのは、15年も前の話だ。貴様が知っているワケが無かろう…」
過去話で少し盛り上がっているフォゲウスと夢芽。
「だから知れて良かったよ~? その過去なら、2人に因縁があるのも頷けるしぃ~」
少しハイテンションな夢芽。
ーーーーー……シェガンゾフ帝国、某所。
泉美と智歌は、ニヒツに誘われたままにカフェで一休み。
「ゆっくりしてってくれ。ここの珈琲は格別、オレの個人的なオススメだ!」
そう言い、ニヒツは去った。
「…」
何かを感じた泉美は、智歌と話す。
「ねぇ、智歌…」
「ん?」
「ニヒツって、この国の王族か何かかな…?」
そう感じるのも無理はない。
現に、周りからのニヒツへの視線は、尊敬の視線が多かった。その上で、チカラに恐れて後ずさりしている者もいて、そう感じざるをえなかった。
「分かんないわ…。でも、アタシも何か感じたわ…。今まで感じたことのないオーラ…とでも言うのかしら?」
オーラを感じ取った智歌。
「…アンタ達、ニヒツ様を知らないの?」
カフェに同席していた女性が質問してきた。
「初めてここに来たから…」
「アタシもよ…」
初入国だということを告白する泉美とバルミ。
その2人に呆れ、ため息を吐く女性。
「いい? ここはシェガンゾフ帝国。シェガンゾフ一族が国を統べてるの。そのシェガンゾフ一族の1人が、あのニヒツ様よ? 覚えておきなさい!」
国の名前と、ニヒツのことについて語った。
「シェガンゾフ帝国…どこかで聞いたことがある…」
聞き覚えのある名前に、智歌は反応した。
そして智歌は、思い出す。
「…思い出した。確か“全世界最強”を誇る超能力を持ち合わせてる一族が国を統べていて、その能力は確か、
無源魔能…」
“無源魔能”
魔法または超能力とはかけ離れている概念のもの。チカラの根元は存在せず、にもかかわらず魔法や超能力を繰り出す異能。
錬金術ともまた違い、オーラ感知も、ごく一部の種族にしか不可能とされている。
「…来る前に感じた“無機質なオーラ”って、この能力の一部…なのかな?」
その無機質オーラを感じたことを泉美は告白したが、その瞬間、周囲がざわつく。
「シェガンゾフ一族のオーラを感知した!? まさか、王国側の人間か!?」
「でも王国側なら、今からでも破壊活動してくるわよね? それをしないなら、王国側じゃないわよ…」
「だけど、王族しか感じれないオーラを感じてるんだぜ!? 王国側じゃねぇか?」
様々な声が聞こえる中、そこにニェンテとニヒツが現れた。
「初めまして。私はニェンテ、よろしくね?」
今度はニェンテが挨拶した。
「よろしく、ニェンテさん。私は高良 泉美…ん?」
泉美と慣れ合っているニェンテの態度に、また周囲がざわつく。
それにニヒツが耐えきれず、
「わりぃ、ちょっと場所を変えようか…」
と、2人の支払いをニヒツが済ませ、カフェを後にした。
そして外に出て、
「待って? おごってもらうのは悪い気がするから、ちゃんと払うよ」
ニヒツの肩をつかみ、泉美は言った。すると、
「いいって。今日は歓迎会のつもりで、な?」
おごってあげたい気持ち山々だと答えた。
ニヒツ、ニェンテ、泉美、智歌。
この4人で訪れたのは、人気のないレストラン。
「いらっしゃ~い!」
陽気に店主の男が歓迎する。が、
「…って、ニェンテ様とニヒツ様! 珍しいですね…」
と、2人の来訪に驚いていた。
「今日は外食の気分だったんだ。訪問者もいることだしな」
そしてそれぞれメニューを開き、食べるモノも決まり、あとは待つだけ。
3人とも、平和にのんびり過ごしている。
平和な時間は、刻一刻と終わりに近づいているとも知らずに……
ーーーーー……某世界、某所。
「…そろそろ動かないと、また平和ボケしちゃうね~…始めるかな~♪」
夢芽が動き始める。




