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「清人来てー」

「ん? なんだ?」

「勉強教えて」

「ああ。 つーか勉強教えるのって俺より神崎が篠原の方が向いてないか? 俺自慢じゃないけどFラン大卒だぜ?」

「F…… ラン? 何それ?」

「あー、大した事ない大学って事だ。 だからそんな頭良くない。 偏差値が平成最後の年くらいでも入れるくらいの」

「ふぅん。 じゃあ教えて」

「話聞いてたか?」

「莉亜はあたしがいると邪魔になるし彩はそもそもケチだもん。 あたしは清人がいいから清人に教えて欲しいの」

「まぁ後悔すんなよ? 前教えた時もお前とトントンだったし」

「うん」



そして勉強を教えているうちに俺と日向はウトウトし出す。



「いでッ」

「きゃうッ」



お互い頭がぶつかった。 ほんと勉強は眠くなる、思えば学校行ってた時もよく授業中に寝てたっけ。



「日向って授業中何してる?」

「? 外見てボーッとしてるといつの間にか寝てる」



俺と同じじゃねぇか……



「あ……」

「ん?」

「外見てるとあたし真ん中くらいの席だから見てる側の男の子とよく目が合って」

「うんうん」

「勝手にあたしがその子の事好きなんじゃないかって噂立てられて凄く迷惑だった」



そりゃお前が悪いだろ、こいつの事だから相手からすればジーッと見てるようにしか見えなかったんだろうな。



「それでどうなったんだ?」

「彩があたしの知らないうちにその子と2人になるようにされてて好きって言われた」



日向は思い出したのかムスッとした表情になる。 なんかその男子も可哀想だな……



「でも最近思うんだ、ごめんなさいって言って断るの凄く悪いなって。 あたしが逆の立場だったらって思うと」



寧ろ今まで意識してなかったのかよと言いたいけどこいつにとっちゃそうなんだよなぁ。 小島の時も内心落ち込んでたようだし。



「まぁ日向も成長したんだな」

「じゃあ褒めて」

「褒めてって…… 偉いな」

「違う、もっと喜びそうなの……」



喜びそうなのって。 俺がたじろいでいると日向は痺れを切らしたのか両手を広げて来た、抱きしめろって事か。



日向って自分がどれだけ可愛いかってわかってんのかな? 悪い男にでも捕まったらホイホイと身を任しそうだ。 まあブーメランだな……



「あッ!!」



俺は日向の頭をわしゃわしゃと撫でた。



「清人…… それ好きなの? それやられると爆発頭になるんだけど」



面倒そうに日向は髪の毛を手で纏めるとポニーテールに結んで再度腕を広げた。



「あの……」

「ん…… ん!!」



観念して日向の後ろに回り込んで後ろから抱きしめた、恥ずかしいから。 



「思ってたのと違うけどこれはこれでいいかも」



日向はそう言って横を向いて俺の方を見た。 あ…… 恥ずかしいからこの抱きしめ方したけどこっちのがもっと恥ずかしいわ。 だって超顔近いし。



「清人ぉ……」

「あ! そろそろ勉強再開しないとな!」

「逃げた」

「ほら、だってまだ全然進んでないだろ?」



仕方なくという感じに日向は勉強を再開するが俺と日向はまたウトウトし出して頭をゴチンとぶつけて目を覚ます。



「ふあ〜ッ……」

「眠そうですね」



日向の部屋から出ると歯磨きを終えた神崎が洗面所に居た。



「ああ、日向に勉強教えてたんだけど俺も勉強はそんなに得意じゃなくてさ」

「そうですよね、柳瀬さんの学歴からその辺はお察しがつきます」

「ひでぇな。 神崎の方ははかどってるか?」

「はい、滞りなく…… と言いたいところですがそんなのは考えてません。 気分に任せてます」

「お前にしては適当だな」

「あなたの影響です。 でも私に合っているのでしょうか? 嫌ではありません」



スカッとした顔でそう言われるとそうなんだろうな。



「寧ろ麻里が心配です、柳瀬さんに勉強の教えを乞うとは猫の手でも借りたいほど切羽詰まっているのでしょうか?」

「お前なぁ」

「わかってますよ、麻里にとっては柳瀬さんに教えてもらうのが1番嬉しい事なのですから」

「んん、そうなのかな」

「柳瀬さんは私達全員に好かれている…… か、かけがえのない存在…… ですから」



そう言って神崎はいそいそと部屋に戻った。 聞いてるこっちも恥ずかしいわ。



そうして期末テストが終わり結果が発表されると神崎は遂に学年一位になったのである。



凄いなあいつ。 まさか本当に一位になるなんてな。



「へぇーなかなかやるわね莉亜」

「どうです彩奈? 今私と勝負したら私に勝てますか?」



珍しく自信満々な神崎の発言。 前の比ではなく喜んでいる。 一位になったからこれくらいは仕方ないだろう。



「はいはい参りました、凄いなぁ莉亜」

「な、なぜか上から目線で言われてるような気がします」

「あはは、あの莉亜がねぇって思ってさ。 勉強は出来るバカだとは思ってたけど」

「バカにしてますよね!? バカにしてますよね!?」



うるさい2人組の隣でサーッと冷めた顔をしている日向。 まさか順位が落ちたのか? 



そりゃあ教えてる時何度も寝落ちしそうになったけど。



「あ、清っち聞いてよ! 麻里ったらテスト中に居眠りして答案用紙にヨダレ…… むぐッ」



日向が篠原の口を慌てて塞いだ。 あーそういう事か。 テスト中に居眠りってなかなか凄いなこいつも。 全問余裕な奴みたいだ。



「それで日向の方はどうだったんだ?」

「前より上がった、清人のお陰」

「じゃあヨダレまみれの答案用紙見せ…… いったぁ!! 何すんのよ!?」



篠原は日向に足を踏まれた、あんまり弄ってやるなよ。



「私からしてみたらばっちぃだけだけど男からしてみたらご褒美かもしれないじゃん?」

「清人は変態だけどそれはわかんない」

「勝手に俺を変態扱いするなよ」

「まあまあ、今日はお祝いにパァーッとご馳走にしましょう」

「そっか、だったら俺が寿司でも奢ってやろうか?」

「え? マジで? 清っちいいの?」

「柳瀬さんそれはいくらなんでもお金が……」

「気にすんなって。 回転寿司だし今日安い日だし」

「「あー……」」



だが見た目にそぐわぬ篠原の食欲に結局高上がりになってしまった。 この時は心の底からおめでとうと思えた。


誤字報告してくださる方誠に感謝です、この場にてお礼申し上げます(*´∀`*)

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