表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/13

003_異世界_恋愛未満【グロ注意】(赤い実はじけた)

【グロ注意】

一応、書いた当時その気は全くなかったと思うんですが、読み返したらそう捉える方がいるかもしれないので



 

 その男の背中には、まるで烈火に焼かれたような、赫い赫い痕があった。


「触れてはいけないよ、聖女様。これは呪いだ」


 結界の奥で血を流す騎士レオンは、そう言って傷口を塞ごうとする私の手を拒んだ。

 彼の背にあるのは、魔王の呪詛がもたらす絶え間ない激痛。他者が触れれば、その精神ごと狂気に呑み込まれると言われていた。


 しかし、私はためらうことなくその痕に両手をかざした。その瞬間、体内に流れ込んできたのは、息が詰まるほどの苦痛だった。


「……あぁ、やっぱり。赫い痕の正体は、多分苦痛だ」


 私は表情を変えず、淡々と呟いた。

 レオンが驚愕に目を見開く。普通なら、他人の痛みに共感し、涙を流すか恐怖に怯える場面だろう。けれど私の心は、凍りついた湖のように静かだった。


 私は、同情で彼を救おうとしているのではない。


「君は……なぜ平気な顔をしていられる? この痛みが、恐ろしくないのか」

「恐ろしいですよ。でも、これはあなたの痛みであって、私の痛みではないから」


 私はいびつな微笑を浮かべた。

 わたしは本当に、自分と他人を区別出来てしまう人間だと思った。


 聖女などと崇められているけれど、私の本質は冷酷だ。

 多分、自分のことも他人のことも、大して気にしていないのだろう。

 誰が死のうが生きようが、世界の理がどうひっくり返ろうが、私の知ったことではない。


「冷たい女だと、軽蔑しますか?」

「いや……。 だが、それならなぜ、命を懸けてまで俺の呪いを引き受けるんだ?」


 レオンの問いに、私は彼の背に回した手にぎゅっと力を込めた。


 ―― 別に、人に対して情が無いとは思わない。

    むしろ、執着心なら人一倍強い。


 私は、この世界そのものには微塵の興味もない。だけど、目の前で静かに覚悟を決めているこの男を、他人の手に渡したくない。死なせたくもない。この男のすべてを私だけのものにしたいという、ドロドロとした独占欲が胸の奥で渦巻いている。


「私はね、レオン様。うまくあきらめる術を知っているんですよ」


 世界の救済も、誰もが幸せになる大団円も、私はとっくに諦めている。

 完璧なキレイ事なんて最初から求めてない。


 ――  だからこそ、世界を諦める代わりに

     私はあなた一人に、私のすべての執着を注ぎ込める。


「あなたの苦痛も、その呪いも、全部私にください」


 赫い光が、私たちの境界線を曖昧にするように優しく弾けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ