003_異世界_恋愛未満【グロ注意】(赤い実はじけた)
【グロ注意】
一応、書いた当時その気は全くなかったと思うんですが、読み返したらそう捉える方がいるかもしれないので
その男の背中には、まるで烈火に焼かれたような、赫い赫い痕があった。
「触れてはいけないよ、聖女様。これは呪いだ」
結界の奥で血を流す騎士レオンは、そう言って傷口を塞ごうとする私の手を拒んだ。
彼の背にあるのは、魔王の呪詛がもたらす絶え間ない激痛。他者が触れれば、その精神ごと狂気に呑み込まれると言われていた。
しかし、私はためらうことなくその痕に両手をかざした。その瞬間、体内に流れ込んできたのは、息が詰まるほどの苦痛だった。
「……あぁ、やっぱり。赫い痕の正体は、多分苦痛だ」
私は表情を変えず、淡々と呟いた。
レオンが驚愕に目を見開く。普通なら、他人の痛みに共感し、涙を流すか恐怖に怯える場面だろう。けれど私の心は、凍りついた湖のように静かだった。
私は、同情で彼を救おうとしているのではない。
「君は……なぜ平気な顔をしていられる? この痛みが、恐ろしくないのか」
「恐ろしいですよ。でも、これはあなたの痛みであって、私の痛みではないから」
私はいびつな微笑を浮かべた。
わたしは本当に、自分と他人を区別出来てしまう人間だと思った。
聖女などと崇められているけれど、私の本質は冷酷だ。
多分、自分のことも他人のことも、大して気にしていないのだろう。
誰が死のうが生きようが、世界の理がどうひっくり返ろうが、私の知ったことではない。
「冷たい女だと、軽蔑しますか?」
「いや……。 だが、それならなぜ、命を懸けてまで俺の呪いを引き受けるんだ?」
レオンの問いに、私は彼の背に回した手にぎゅっと力を込めた。
―― 別に、人に対して情が無いとは思わない。
むしろ、執着心なら人一倍強い。
私は、この世界そのものには微塵の興味もない。だけど、目の前で静かに覚悟を決めているこの男を、他人の手に渡したくない。死なせたくもない。この男のすべてを私だけのものにしたいという、ドロドロとした独占欲が胸の奥で渦巻いている。
「私はね、レオン様。うまくあきらめる術を知っているんですよ」
世界の救済も、誰もが幸せになる大団円も、私はとっくに諦めている。
完璧なキレイ事なんて最初から求めてない。
―― だからこそ、世界を諦める代わりに
私はあなた一人に、私のすべての執着を注ぎ込める。
「あなたの苦痛も、その呪いも、全部私にください」
赫い光が、私たちの境界線を曖昧にするように優しく弾けた。




