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疾風のフィリアン  作者: 北の方の狐
第1章 新たな人生編
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第7話 『魔力』

「フィル、起きて」


「んぅ………」


 この声は……あ、そうだ強き者(エリナ)だ。


「ねむぅい」


 眠い……でもやらなきゃいけないことがある。


「まりょくそーさ!」


「急に元気になったわね」


 エリナが、驚いたように呟く。もしかして意外と苦労させてたりするんだろうか。

 でも、まあいいか。


 師匠は僕にまだ魔力操作はできないと言った。


 つまりやれってことだ。


 できないならやれ。できるまでやれ。無理は嘘つきの言葉だ。そんなことを言ってた気がする。

 ………言ってないか。


 まあ、いいや。


「ままぁ、ししょーとこいく」


「ふふ、お昼食べたらね」


「そんなぁ」


 昼より前に師匠のところに行きたいぜ。1人でも行けるようになればいいんだがな。


「フィル、居間に行くわよ」


「はあい」





 居間でエリナは、朝食の準備をしている。

 レオンはいない。


 あれ?レオンは?


「まま、ぱぱは?」


「ぱぱは今、お庭で鍛錬をしてるわ」


 鍛錬。そういえばレオンは剣術が得意なんだったか。


 今度剣を教えてもらおうかな。


 魔法剣士ってのもなかなかかっこいいし。


 でも今は剣なんかよりも魔法だな。


「けんはいい。まほーがいい」


「ふふ、そうね。お昼を食べたら、またエドガーさんのところに連れて行ってあげるわ」


 エリナは嬉しそうに微笑んだ。


「あさたべたらいこーよぉ」


「お昼までは待ってね」


「そんなぁ」


 昼まであと4時間くらいか?

 早く昨日の続きを教えてもらいたいのに。


 いや、教えてもらえないならば、自分で学べばいいのだ。


 かの孔子はいった──学んでも考えなければ、真に理解は得られない、と。


 つまり、エリナはきっと、自分で考えることも大切にしなさい、と暗に伝えようとしてるのだ。

 迷惑をかけることもある分、そうした意は汲み取らねばなるまい。


「わかった。ありがとーまま」


「?どういたしまして?」


 エリナは何故か不思議そうにしている──気がする。

 いや、気のせいか。


「戻ったぞーエリナ」


 鍛錬を終えて、汗を流したのか、まだ少し湿った髪をしたレオンがやってきた。


「おかえり、レオン。朝食ができてるわ」


 おっと。師匠や母の意を汲み取ろうとしている間に、いつのまにか完成していたようだ。


「さあ、食べようか」


 いただきます、のようなことを言う文化は、この家にはない。


 日本人としては、言わないことに違和感を感じる。だが、それが文化であるならば、言わないほうがいいだろう。

 郷に入っては郷に従え、と言うやつだ。


 にしても、エリナの料理はうまいんだよな。


 だんだんと柔らかいものは食べられるようになって、朝はスープが多いが、このスープがまたとても美味しい。


 エリナとレオンは、このスープにパンを浸して食べているようだが、食べられるようになるのが楽しみだぜ。






 朝ごはんを食べ終わった後は、大体庭へ行く。


 この村は、家と家の間隔がまあまあ広く、庭や畑のスペースがたくさん取れている。


 朝から昼までの間では、大体庭で遊んでいたり、レオンの鍛錬を見たり、エリナの畑仕事を少し手伝ったりする。


 でも、今日はやることがある。


 そう、魔力操作だ。


 魔力感知は多少できるので、そっちを鍛え、師匠に魔力操作について教わるのが最善だと思う。

 だが、目新しいことは気になってしまうのが子供だ。


 精神年齢では、バリバリ成人だが、この世界については子供ほどの知識しかない。だから、好奇心についてはほとんど子供と一緒だ。


 ってことで、魔力を動かそうと試みる。


 魔力は大体お腹の辺りに溜まっているように感じる。まずはこれを全身に巡らすことから始めよう。


(魔力ちゃーん。動いてくださいーい)


 ……


 ………


 ………動かないな


 あれ?おかしいな。どうして動かないんだろう。


 だってこう言うのは大体、感じることができれば動かすのは簡単なんじゃないのか?


 さっきのは気のせいか。


 師匠は詠唱でしか魔法を使えないと言っていたが、僕はそうは思わない。


 きっと意志の力で、魔法を使えるだろう。


 そして意志の力で魔法を使えるなら、意志の力で魔力を巡らすのは簡単だろう。


(魔力よー動けー)


(動けー魔力ぅ)


 …


 ……


 ………動かないな


(どうしたんだい?魔力ちゃん)

(もしかして君も方向音痴なのかい?でもそんな方向音痴な君でも問題ないさ。だって、適当に進んでいればいいんだからさ)


 ……動かないよぉ


 もしかしてこの世界には、方向音痴が多いのか?風ちゃんも全然来なかったし。


 魔力ちゃんに至っては、外の世界が怖いのか、それとも今いる場所が恋しいのか、その初めの一歩を踏み出してくれないし。


(おーい)


 ………


(そろそろ外に出て働かないか?みんな心配してるぞー)


 ………


 動かない。風ちゃんといい、魔力ちゃんといい、引きこもり気質が多いのか?



 そんなこんなで試行錯誤を繰り返していた。


 当然、魔力ちゃんは働く気にはなってくれなかった。


 一度、風ちゃんにも呼びかけた。


 やっぱり迷子になってしまったみたいだ。


「フィルー、ご飯できたわよ」


 そう言われて、周りを見渡す。


 小さめの畑に水をやっていたエリナは、いつのまにかいなくなっていた。


 ずっと近くで鍛錬をしていたはずのレオンも、いなくなっていた。


(そんなに時間が経ってたのか)


「はーい」



 ◇



 昼ごはんを食べ終えて、ようやく待ち侘びた師匠宅にご到着だ。


「ししょー、ししょー」


 今の自分にできる全力で、戸を叩く。


 少しして、扉が開いた。


 師匠だ。


「おう、フィリアン。今日も来たのか」


 相変わらず豪快な顔には似合わない、上機嫌な笑顔をした、師匠がやってきた。


 やっぱり師匠は、独身なのだろうか。


「ししょー、かぞくいないの?」


「ああ?ああ、いねぇ。別にいらないしな。縁がなかっただけだ」


 いらないと言ってる割には、随分と不貞腐れた顔をしてるな。こいつは。


「わかった。ししょー。こんどぼくが、おんなのこをつれてくるよ」


「いらねえよ。お前が連れて来んのは、どうせ2歳やそこらのガキだろ」


 失敬な。いや、当然そう思うか。てか連れてくる女の子はいないんだけどな。友達いないし。


「ふふ、フィルったら、随分とエドガーさんと仲良くなったのね」


「別に仲よくはねえよ」


「そうかしら?まあ、今日もお願いね、エドガーさん」


「おうよ」


 そう言って、エリナは家へと向かい、師匠は僕を家の中に迎え入れた。


 家に入れてもらったタイミングで、僕は話を切り出した。


「ししょー。あさからためしたのに、まりょくちゃんうごかなかった」


「魔力ちゃん?何を言ってるんだお前は」


 師匠。そんな変なものを見る目で見ないでくれよ。子供の言うことだろ。


「魔力ちゃんはともかく、魔力操作ってのは魔力探知ができるからって、すぐにできるもんじゃねえんだよ」


 そうなのか。つまり魔力ちゃんは、方向音痴ではなく、耳が悪いのか。


「でもそうか。魔力操作を試したのか。わかった。今日も座学を教えるつもりだったが、魔力操作の仕方を教えてやろう」


 そう言うとエドガーは、昨日勉強をした部屋とは別の方向に向かった。


「ほんと?やたー」


 師匠だなんだと言っていたが、実際に教えてもらうのは、これは初めてな気がする


 すごく楽しみだ。





 師匠と共に向かった先は、うちのものよりも2倍は大きい庭だった。


「まずは、魔力を感じろ」


「ん、かんじた」


 魔力を感じることができるのは、昨日すでに言ったことだ。

 だからか、師匠は疑う素振りも見せずに、話を進めた。


「そうか、魔力はどこに溜まっている?」


「ここらへん」


 その問いに対し、僕はお腹の辺りをさすりながら、答えた。


「そうだ。魔力は、腹の奥に溜まっている」


「おなか!」


「ああ。そして魔力操作ってのは、その魔力を動かすことだ」


「うごかす!」


「そうだ。まずは試しに、魔力を少し押してみろ」


 押したら動くのか。押したら………


(押す?)


 魔力を押すってどうやるの??


「まりょくちゃーん」


「話しかけるな」


 ビシッと効果音が聞こえてきそうなツッコミだ。


「どうやるの?おしかた、わかんない」


「意志で押すんだ」


「いし?」


「手を動かすとき、いちいち動け、とか考えないだろ?」


 ああ、そう言うことか。


 意志───


 お腹の底に眠る、温かい何か。


 それを少しだけ押す。


 押して。

 押して。

 押して。


 ──ぴくり。


「あ」


「動いたか?」


「今、ちょっとぴくって」


「いいぞ、今度はもっと動かすんだ」


「ん!」


 もう一度、意識を向ける。


 腹の底にある、温かい何か。


 それを、押す。


 先ほどよりも少し強く、押す。



 ──ぴくっ


「うごいた!」


「ああ、まだ全然だが、動いたな」


 そう言う師匠の顔は、どこか嬉しそうだ。



 魔力探知ができた時も嬉しかった。


 でも、今日はそれよりももっと嬉しかった。


 なんだか、より魔法の世界に、足を踏み入れた気がして───


「よし、フィリアン。次は勉強だな」


「げっ」

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

少しでも楽しんでいただけましたら、【ブックマーク登録】や評価の【☆☆☆☆☆】で応援していただけると嬉しいです!

皆様からいただいた応援を励みに、これからもフィリアンの物語を書いていきます。

これからも『疾風のフィリアン』をよろしくお願いします!

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