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疾風のフィリアン  作者: 北の方の狐
第1章 新たな人生編
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第15話 『村人』

「フィルー」


「んぅ」


「フィルーー」


「んにゃぁ」


「フィルー!起きて!」


「んはっ!」


 今日もいつも通りの朝だ。


 お母さんの声で目を覚まして、お母さんの作った朝ごはんを食べて。


 本当に幸せな毎日だ。


 それでいて、前世では考えられなかった幸せだ。


「フィル、早くしないと冷めるわよ!」


「はぁーい」


 急いで着替えを済ませて食卓へ向かう。


 すでに食卓には、ホカホカのパンと湯気立つスープが並んでいた。


「召し上がれ」


「はーい」


 目の前に並ぶパンへと手を伸ばす。


(いただきます)


 いただきますは、この世界に来てから言う機会は無くなった。


 そもそもそんな習慣がないからな。

 でも、文字通り魂に刻み込まれた習慣は、そんな簡単には抜けない。


 まあ、直すつもりもないけど。


「そうだ、フィル」


「なに?」


「今日もエドガーのところか?」


「うん!」


「そうか」


「絶対またしごかれるよ……」


「ははは!」


 お父さんが楽しそうに笑う。


 ひどい!


 朝食を食べ終えた僕は、身支度を整えて家を飛び出した。


「行ってきます!」


「行ってらっしゃい」


 お母さんの声を背に受けながら家を出る。

 いつも通りの朝だ。


「ししょー」


 師匠の家に着いた僕は、いつものように慣れた手つきで呼び鈴を鳴らす。


 すると、家の中から騒がしい物音が聞こえてくる。


 こんなのも慣れたもんだ。


「来たか、フィリアン」


「おはよー、ししょー」


「今日は早いんだな」


「家にいてもひまだから」


「そうか。じゃあ今日は体術をしながら魔法の練習だな」


 一番キツいやつだ。



 いつものように庭に向かい、修行を始める。


 ──地獄のようだった。


「はぁっ、はぁっ……」


「ほら立て」


「もう、むり、だよ」


「まだ半分だぞ」


「うそって、言って」


「本当だ」


 おわった。


 その後も、木刀を持ちながら、走る。

 そして、その状態のまま詠唱をする。


 途中から何をしてるのかがわからなかった。


 気づけば日が頭上近くまで昇っていて、一度家に帰ることにした。


 帰る前に、一回『かなり良くなっていたぞ』と、師匠が褒めてくれて、すごくびっくりした。



 家に戻った後は、昼食を食べ、師匠から借りた本を読むことにした。


 まあ、魔法の教科書みたいなもんだ。


 師匠の地獄の勉強会のおかげ(せい)で、読み書きもできるようになったしな。


 本を読み進める。


 内容は難しいけど、どんどんと知識が増えていくのは、純粋に楽しい。


 のんびりと読書を進めていたら、空はすでに茜色に染まっていた。


 本を閉じ、大きく伸びをする。


 そろそろご飯の時間かな。


 そう思った時だった。


 ──カァン、カァン、カァーン


 大きな音が三度鳴り響いた。


 これは多分、広場にある大きな鐘の音だろう。


 えっと、意味は確か──


「フィル!」


 僕の部屋に、お父さんが勢いよく入ってくる。


「どうしたの?」


「広場に向かうぞ。緊急集会の合図だ」


 そうだ。あれは確か、緊急事態を知らせ、集合を呼びかける合図だったか。



 ◇



 お父さんとお母さんと広場に向かうと、広場にはすでに多くの村人が集まっていた。


 いつも賑やかな広場だが、今日は様子が違う。


 誰もが不安そうな表情を浮かべ、ざわざわと話している。


「どうしたんだろうね」


「さあな」


 お父さんでもわからないらしい。


 やがて、村長である師匠が前に出る。


 その表情は、今まで見たことがないほど険しかった。


「皆、聞いてくれ」


 村長の重々しい声に、ざわついていた広場が静まり返る。


 誰もが村長の次の言葉を待った。


「リューネ大森林から、多数の魔物が押し寄せてきている」


 リューネ大森林。

 普段は狩人たちが狩場にしている森だ。


「原因は不明だが、このままではこの村に到達する」


 その一言で、静まり返っていた広場が、もう一度ざわめく。


「静まれ!……いいか?確認されてる限りでは、深部の魔物は含まれない。数も百程度だ」


 どこかで、安堵の息が漏れる。


「ここは、俺が作った村だ!そして、この村には戦えるものが多い。戦えるものは武器を取れ!戦えぬものは広場に残れ!いいか!我々で迎え撃つぞ!!」


 おおおおおおおっ!!


 村人たちの歓声が広場を包む。


 グギャオオォォォーー!!


 それと同時に、魔物共の咆哮が巻き起こる。


 不安げだった村人たちの顔からは、すでに先ほどの動揺は消えていた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

少しでも楽しんでいただけましたら、【ブックマーク登録】や評価の【☆☆☆☆☆】で応援していただけると嬉しいです!

皆様からいただいた応援を励みに、これからもフィリアンの物語を書いていきます。

これからも『疾風のフィリアン』をよろしくお願いします!

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