↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
疾風のフィリアン  作者: 北の方の狐
第1章 新たな人生編
13/21

第11話 『主人公』

「よろしく!ふぃる」


 ようやく泣き止んでくれた。


 よかった。いや本当に。


 前世でも、今世でも、女の子の泣き止ませ方なんて知らないもんな。


「ふぃる?」


「あ、いや、なんでもないよ」


 危ない危ない。つい考え込んでしまった。


 そんなことよりも。


「ところでリリ、どうして泣いてたの?」


 そう聞いた途端、リリの顔が僅かに曇った。


 今はあんまり聞かない方が良かったかな。やっちゃったかな。


「あのね、ふぃる」


 リリは、手を握ったままぽつり、ぽつりと話し始めた。


 僕も、その隣へ腰を下ろす。


「みんなね、わたしのことが、みえてなかったの」


 そう話し始めたリリの声は、消えてしまいそうなほど小さかった。


「見えてなかった?」


 思わず聞き返してしまう。


 見えてないってことはないんじゃないか?だって僕には実際見えてるし……


「おひっこししてきたの」


「うん」


「それでね、ぱぱとままがね、あそんできていいよって。だからね、みんなのところにいったの」


 リリは僕の手を、ぎゅっと握り締めた。


「でもね、みんなにあそぼうっていってもね、こっちをむいて、おへんじしてくれなかったの」


「だからね……きっとみんなは、わたしのことがみえてないの……」


 そう言ってから、リリはまた泣き出してしまった。


「泣かないで、リリ。ぼくはリリが見えてるよ。いっぱいおはなしできるよ」


「うん……」


 やっとわかった。リリはみんなに見えてないんじゃない。きっと無視されたんだ。


 僕も前世では、無視をされたりした。


 でも、それには僕に原因があった。


 引っ越してきたばかりのリリが悪いことをしたとは考え難い。


 だとしたら、理由は別にあるはずだ。


 この村には外様は排斥する掟があるとか。


 ──いや、そんな掟は聞いたことがないな。


 じゃあ、リリが気づかなかっただけで、実は返事をしてくれてたとか?


 でも、それならもうちょっと気にかけてるか………


 ………だめだ、全く見当がつかない。


 いや、今はそんなことよりも。


「リリ、ぼくとともだちになってよ」


「おとも、だち?」


「うん!ぼく、ともだちいないんだよね……どうかな?」


「なる……なる!」


 リリの顔に笑顔が花開いた。


「じゃあ、これからもよろしくね!なにあったら、ぼくがリリのことをまもってあげる!」


 ──大切な人を守るために魔法を学んでるんだから。


「リリはいま、ひま?」


「うん」


「じゃあ、あそぼう!」


「なにをするの?」


「ししょーのところにいく!」


「ししょー?」


「うん!ぼくの、まほーのししょー。まあ、かんたんにいうと、へんじん」


「……まほー?」


 あれ?リリさんや、そんな顔をしないでおくれ?


 魔法を学ぶことは尊き事ではないか。



 ◇



 というわけで、リリとは他愛もない会話を繰り広げながら師匠の家へと向かった。


 いつものように一定のリズムで扉を叩く。


 そろそろこの家にも呼び鈴とかを置かないかい?


「ししょー!きたよー!」


 ………


 ………


「おう、フィリアン、来たか」


 しばらく時間をおいて、師匠が扉を開けた。


「ん?その黒髪……アルベルトさんの娘か?」


 僕から、その隣に立つリリへと視線を移してから、そう言った。


「はい。りりあーな、です。あるべるとは、わたしのぱぱです」


「なんだぁフィリアン。魔族の嬢ちゃんなんて連れてきて、色恋にでも目覚めたか?」


 師匠の戯言は置いておくとして………


「まぞく?」


 魔族ってなに?あの物語に出てきたやつ?魔王とか?本当にいるの?


「前教えたじゃねぇか。黒髪黒目は魔族の特徴だって」


 教え──られたっけ?


 ああ、そんなこと言ってたっけ。


 確か、絵本の内容とほとんど変わらなかったから、物語上のものかと思ってた。


「まあ、こんなところで立ち話もなんだぁ。まずは庭へ行くか」





「よし、フィリアン。今日も魔力操作を極めるか」


「えーそろそろほかのまほーもおしえて!」


 そう、何を隠そう師匠は、この3年間で初級風魔法しか教えてくれなかったのだ。


 ………隠してないか。


「馬鹿言え。今のお前じゃ、教えたところで使えねぇよ」


 そんなストレートに言わないでよ。小さい子供の心は敏感なんだよ。


「ところでリリアーナ。お前も、魔法を習いたいのか?」


「……やりたい」


「そうか。じゃあお前も、俺のことは師匠と呼べ」


「わかりました!ししょー」


 まさかの友達に次いで、妹弟子ができたようだ。

 ここは兄弟子として、かっこいいところを見せないとな。


「ししょー、ぼくがリリにおてほんをみせる!」


「そうか……だが………」


 師匠は一瞬、リリの目を見た。


「………いや、まあいいだろう。やってみろ、フィリアン」


「わかった」


 ここ3年、魔法の練習を続け、唯一使えるようになった魔法──それを使うために、体に魔力を巡らせ、詠唱を始める。


「風よふきぬけよけよ──《ウィンド》」


 師匠の家に立つ木が、音を出す。


 リリの可愛らしい黒髪が、その身を乗り出す。



 風が収まった時、僕の妹弟子が口を開いた。


「すごーい!ふぃる、すごい!わたしもやりたい!」


 あまり褒めない師匠の弟子であるせいで、僕は褒められ慣れてない。

 自分の好きなものを褒められ、とてもいい気分だ。


「ふふん!すごいでしょ!」


「わたしもやる!やる!どうやったの?」


「今のはね〜えいしょうをしたんだ!」


「えいしょう!」


「そう、ぼくがさっき言ったやつがえいしょうだよ」


 まあ、詠唱を唱えただけで魔法が使えるなら、僕は師匠の弟子になんてなってないんだけどね。


「えいしょう……かぜよ!ふ──」


 僕の前髪が揺れる。


 先ほどよりも大きい音を立て、木が踊り始める。


「──きぬけよ──《うぃんど》」


 あれ?今、詠唱終わり切る前に風吹いた?

 気のせいだよね?風はリリの魔法じゃないよね?


 そう思っていたら、師匠が口を開いた。

 ──すごく嫌な言い方で。


「ぷっふはは。当たり前だろフィリアン。そいつは魔族だ。魔法なんて簡単に扱えるさ」


 え?ってことは、ほんとに今の風はリリが?

 僕が風を起こせるようになるまでは3年もかかったのに?


 じゃあ、リリは初めての魔法で、詠唱を短縮したってこと?


 ……あれ?

 主人公僕じゃないの?転生して、すごい魔法で無双する主人公。


 それってもしかして、リリのこと?主人公はリリ?ってことは僕は、主人公の才能に驚く凡庸な兄弟子ってこと?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。