準備は何事も少し多いくらいが良い
登場人物の豆知識
ミクマは幼少期に1度、鹿に頭突きをされ骨折した事がある。
昼食後、デネブに帰還し、医務室でガブリエルの船員登録とパーソナルデータの登録を済ませ、艦橋への移動がてら、艦内マップを見ながら軽く艦内の説明をする。
「…とまぁ、とりあえずはこんな感じ。分かんなかったり、忘れたりしたら、メインシステムからインフォメーション見るか俺に聞いてね。一応、壁に案内表示ついてるから迷子になったら、それ辿れば艦橋には来れるから」
「了解した。しかし、こうして見るとやはり大きいな。流石は戦艦と言ったところかな」
「まーねー、これでも全長570mあるからね。可動部入れるともう少し大きくなるよ。スラスターとか放熱板とかアンテナ類とか」
「そうなのか?」
「まぁ、言うほど派手に動かないけどね。出力に合わせて大きくなったりするから、カタログ上のデータはあくまでも平時のデータなんだよねー。実務上あまり問題じゃないから良いんだけど」
実際の所、最大出力でせいぜい10mくらいだが、ノズルが伸び縮みするから、いわゆる素の状態で計測されているらしい。重量も同じく空虚重量と全備重量の2つで表記されてたりするので、デネブの開発元は可変部分は別途表記にするマニュアルがあったに違いない。それはそれで助かるが。
「うん、とりあえずはそんな感じかな。じゃあ最後に、ここに端末置いて」
艦橋のメインコンソールに接続させる。アクセス権限の付与、インフォメーションや各種マニュアルのインストール、デネブのアドレスの登録、緊急時の指揮権限の付与…っとこんな感じかな?他に必要ならその都度やればいいか。
「はい終わりっと。これで次からは俺居なくてもデネブに自由に出入り出来るのうになったから。と言っても、各自のプライベートスペースは入れないけどね」
「殆ど空室なのにか?」
「そのほとんど以外がだよ。いや、そんなんはどうでも良くて、とりあえずは、艦内は1部を除いて特別なロック無いけど特に用事無いなら機関室と貨物室は入っちゃダメね。色々危ないのもあるし」
そう言いながら端末を返す。そもそもが船員登録されてないと出入り出来ないんだから、艦内にロックかけるって事自体あまり意味が無い。せいぜい戦闘中の移乗攻撃やクラックでの乗っ取り対策くらいだ。もちろん機密区画や最重要はロックされてるが。
「分かった。まぁ、私としても元より立ち入る様な気も用事も無いからな。心配無い」
「一応、組織として通達しないと後が困るからね。それで、この後どうする?こっちは用事一通り終わったけど」
「それなら、1度帰る。乗船するなら荷造りしなければ。それに色々やらねばならない手続きもある」
「了解。送ってこうか?」
「道も知らないのにか?…ありがとう。大丈夫だ」
そう言うのなら引き下がるか。たしかにこっちも色々と荷造りした方が良さそうだ。日用品の類は不足するとちゃんと困るからな。
「じゃあ、気を付けてね。…あ、また忘れてた。連絡先。俺の教えてないよね?はいコレ」
慌てて自分の端末を取り出し、アドレスを交換する。さっきアドレス登録したのだからデネブへ連絡すればいいのではあるが、俺も常に艦内にいるとは限らないからな。半分は素で忘れていたが。後でやろうはつい忘れるんだよね。
―
「さて、どうしようか」
ガブリエルを見送り、艦長室へ戻り軽い雑務を終わらせ、そう呟く。とは言っても俺のやる事と言えば、情報収集と経営方針の策定くらいだが、それはさっき終わってる。ソロで軽くこなせる仕事と思っても、どれだけ時間が掛かるか、そもそも軽い仕事があるのか不明な以上どうもしようもない。うん。
「という訳で、もっかい来ました傭兵組合」
「どういう訳ですか?」
「率直に言うと、2、3日で終わる仕事ください」
受付嬢に呆れられた顔でツッコまれる。そりゃ椅子に座って開口一番変な事言われたら、誰だっけ怪訝な顔する。多分俺もそんな顔するしツッコむね。
「そうは言いましても、はっきり言って、あまり良い仕事無いですよ?平和なもので、依頼と言えば商船や企業の護衛くらいです」
「だろうね。旨みある他の星系行った方が良いし、みんな行きがけの駄賃なんだろ。だからこそ、あるんじゃないの?短時間で終わる仕事が」
眉に皺を寄せため息を吐く辺り、アタリかな?こりゃ。どうせ木っ端だろうが、逆に木っ端だから見向きもされず延々残ってるんだろう。
「有りますよ?違法占拠者の捕縛依頼が」
「やっぱり。受けたいんだけど、いける?」
「はい。…では受理いたしますね」
「お願いしまーす」
あんま乗り気じゃない雰囲気なのは、この手の仕事は色々面倒だからだ。違法占拠者とは、主に2つに大別され、主に法的にコロニーの居住を許されていない者の事を言う。そしてその多くは何らかの事情で市民権を剥奪された者なのだが、中にはもちろん、犯罪に手を染めた結果、コロニーの居住や入ること自体が禁止されている者もいる。当たり前だがコロニーとしても犯罪者に暴れられても困るし、もし仮に居住施設や空間の提供をした結果それを犯罪に利用されては信用問題にもなりかねない。その為、犯罪を犯した場合住めるコロニーはもっぱら監獄や刑務用になる。
「それで、ぶっちゃけ予想される人数って何人くらいなんです?」
「そう…ですね、おそらくは20名程かと。主に密輸をやっているらしく、あまり強い組織では無いようです」
「まぁ、末端だろうね。それを判断するのは俺たちでは無いけど」
依頼の内容も、あくまでも捕縛、その際に予想されるであろう抵抗への対処。捕まえて移送するまでが仕事。背後関係洗ったり有罪無罪を判別するのは法執行機関の仕事だ。戦力の分析として組織の構成や規模を調べる程度はするが、逆に言うとそれだけだ。
「じゃあ、とりあえずマップだけください。それ見て準備します」
「はい、ではよろしくお願いしますね。頑張ってください」
「あ、一応聞いとくけど、アレ?」
「えぇ、アレです。生死不問。依頼額も最低額ですので、頑張って懸賞金稼いで貰うタイプです」
だろうと思った。傭兵の仕事は大概そんなもんだ。こっちとしては気楽にできるから助かるが、依頼者が堅い所ほど、傭兵なんぞを信用してはいないんだよな。裏で何やってるか分からんのはお互い様だと個人的には思うが。
―
「わーれーはうーみのー子、しーらなーみーのー♪」
デネブの廊下を歩きながら口ずさむ。他に誰も艦内に人が居ないのだから、一人で、しかもそれなりの声量で歌っていても怒られない。褒められる様な癖では無いが、咎める人も直すような理由も無いのだから、そのままだ。
「何を使おっかなー」
扉に付いたキーパッドに暗証番号を入力し鍵を開ける。この部屋は珍しくロックが常時掛かっている部屋で、非常時以外は暗証番号又は生体認証でロックを外さないと扉が開かない。その理由は単純で、部屋の中にズラリと並んだソレらが物語っている。
「武器庫に入るのも久々だねー。入る用事無いんだから当たり前だけど」
ハンドガンにライフル、ショットガンにスナイパー、対装甲車用の大型もあるし、実体、光学の両方を完備してある。戦闘服や防具、防護服もあり、その多くが全身を覆うタイプで気密性の高い『全環境対応用強化戦闘服』と言う仰々しい肩書きが付いているヤツだ。そして、部屋の奥には更に一際イカつい装備が保管されている。
「流石にチンピラ相手にパワードスーツ使うってのはなー。オーバースペックも良いとこだから今回は使わないけどね」
目線の先にある武具を見ながら呟く。幾らなんでも生身の人間相手に、使う物じゃない。うさぎ狩りに戦車で行く様なもんだ。ワンサイドゲームで済めば良いが、大抵はやり過ぎて周囲の被害の方がデカイからな。パワードスーツ前提のレールガンとか、コロニーの壁に当たったら穴空くからな。
「俺がどれだけの戦力か未知数な以上、程々の戦力の確保は難しいが、それでも相場ってのは何にでもあるからな。ここら辺で良いだろ」
手に取ったのは、電磁誘導式のライフルで、コイルガンなので殺傷力は控えめだ。同じ電磁誘導のレールガンと比べたら、だが。
「光学の方が良いんだろうけど、シールド持ってたら偏光されちゃうからなー。まぁ、携帯シールドなら軍用グレードの出力に勝てるようなシールドはほとんど無いけどね。パワードスーツに備え付けのシールドなら所詮歩兵用だから弾けるだろうけど、パワードスーツ居るならこっちもそれ使うだけだし、絶対組合が注意喚起するだろ」
武器のチェックをし、マガジンに弾込めをする。戦闘服を持ってきて、各種サイドアーム、サポートアイテムを揃えて準備完了。正直、サイドアームまで持たなくてもいい気もするが、なんでも用心はした方がいい。命を賭けてるなら尚更だ。
「よし!じゃあ行くか!見せてもらおうか、軍用装備の性能とやらを」
次回予告「EX〇Mシステムスタンバイ!」
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