占いは多少胡散臭い方が良く当たる
「で、どうするんだ?これから」
「どうしようね。それを決めかねてる」
フレンチフライをつまみながら答える。
「医療系コロニー行って医療品とか医療設備揃えても良いし、工業系行ってコンポーネント仕入れて貿易とか、技研とかで最新鋭探してもみても良いし、なんなら紛争地帯行って荒稼ぎしてみる?気は進まないけどデネブなら多分、正規軍の主力級とかじゃなきゃ負けないと思うし」
デネブは俺の知ってる限りの最新鋭、少なくとも旧型相手なら性能的に負けないが、流石に包囲されたらキツイ。数的不利ってそれだけで辛いんだから。設備や武装も必要十分は揃えられていると思ってはいるが、別に高性能にして困る物でも無いし、カタログ見てるだけでも楽しいので、探しに行ってもいい。まぁ、あまり高性能過ぎても持て余すだけだが、それもまたよしと言うやつだ。安心を買うと考えたら悪くは無い。
「そんな適当で良いのか?」
「まーねー、傭兵つってもフリーランスですから。企業や組織と契約してるんなら公私共にそれに合わせる様に動けるけど、完全フリーなら、そもそもどの契約取るかから自分で決める訳だし、やりたい事、気になる事が指針だよ。あと違法性少ないかもね」
極論、傭兵なんて武力持ってるだけの一般人だからな。良くも悪くも適当な感じになる。そういう意味では雇われって楽なんだよなー、言われた仕事やるだけだし。
「詰まる所、金稼ぐ必要ないなら仕事する必要すら無いってのが、いわゆるな傭兵の生活なんでねー。自由って大変だね」
うーん、困った困った。と言うより、俺個人としては本当に何でも良いだけに、意見無いと決めるのが難しいだけなんだが。全部同じくらいの強さのやりたい事だから余計にね。
「…なら、何やればいいか占う?」
カミーユが唐突にそんな事を言い出す。
「占い?何か心当たりあるの?」
「今、この都市に『オーバーマインド』が来てる。らしい」
「え?マジぃ?…えぇ…やっぱ居るんだ、あの超越的宇宙人」
「知っているのか?ミクマ」
「え?あー、うん…まぁ…そうねぇ。多分2人よりは詳しいと思う…かな?」
凄く曖昧な返答になったが、そうとしか答えられないので仕方ない。殆ど資料でしか知らないから何とも言えない。
「まぁ…彼らの占いなら間違いないか。ここは1つ、助言を貰いに行こうかなー」
そうと決まれば、善は急げだ。何せ、彼らの占いは人気だからな。予約が埋まってる可能性もある。
「2人はどうする?一緒に行く?」
「良いのか?なら、そうさせて貰おうかな」
「私も。占いがどんなのか気になる」
「ふむ、なら3人で行こうか。ついでに見てもらうと良い。多分、すぐ終わるし」
―
「ココが占いの館?うん、実に彼ららしい質素な部屋だこと」
雑居ビルの一角、何の飾りも無く、扉に『占いやります』とだけ書かれており、住所を知らなかったらスルーしそうな程、質素というか簡素だった。隣にある、恐らく小規模事業者の事務所の方が装飾されてるくらいだからな。
「うーん、あまり興味無いってのは分かるけど、こう言うの、わかり易さって結構大事だと思いますが?」
「誰に言ってるんだ?扉か?」
「ん?あー、中の人へね。どうせ、聞いてるんじゃないかなー。多分俺達来たのも、もう分かってると思うよ?」
怪訝そうな顔をして聞いてくるガブリエルへ、軽く肩を竦めながら答える。我ながら独り言は多い方だが、明らかに誰かに喋りかける様な声音や声量で喋り出したら、確かに怪訝な顔したくなるわな。だが、実際に喋りかけているから、間違ってはいない。
「ふむ、詳しく教えてくれるか?ミクマ」
「良いけど、多分本人へ聞いた方が早いよ」
そう言いながら扉を開けて中へ入る。パッと見、病院などの待合室に見える部屋で、テーブルにはまさに今淹れたばかりであろう湯気立ったお茶とコーヒーが置いてあった。それもしっかりと3人分。
「ご丁寧にどうも。流石は、だねー」
遠慮なくお茶を飲む。うん、緑茶だこれ。明らかに来客数とタイミングが分かってる対応だが、こちらとしてはすんなり行くから有難い。となれば多分
「お待たせしました。どうぞこちらへ」
ほら来た。案内係であろう男性型アンドロイドに着いて行く。違ったら失礼だが、見るからに機械的なパーツが各部に付いており、サイバネにしては仰々しいので恐らくはアンドロイドだろう。
「どうぞ、中でお待ちです」
扉の横で軽く頭を下げた状態で止まる。やはり初めから知ってた様だな。
「あー、一応言っとくけど、大丈夫だからね。何もしないでよ?2人共」
「ん?何の事だ?」
疑問符を浮かべた顔だが、念の為だ。軽く肩を竦めるとカミーユはうっすらピンと来たらしい。多分、占いの方法でも見たんだろうな。まぁ別に隠してないっぽいし、チラシか何かに書いてても不思議では無いが。
「まぁ、良いか。見れば分かるよ」
部屋に入ると、男性らしき人物が目を閉じ椅子に座っている。部屋は薄暗く香が焚かれ、雰囲気はあるがそのせいで若干視認性が悪い。匂いからして沈香か。
「やぁ、今何回目?」
「6回目になります。…これはこれは…『来訪者』様でしたか」
「まぁね。生物兵器が脳に寄生して無いけど」
「そうですか。『来訪者』様にお会いするのはこれで二度目です」
「…あらそう、それは光栄だ。…さっきのは笑う所だったんすけどねー」
「ふふっ、存じております。その1人目の『来訪者』様も同じ事を言っておられました。「今のは笑う所だぞ?まぁネタが分からないだろうから仕方ないが」と」
「そりゃ気が合いそうで。会ってみたいな」
完全に周囲を置き去りにする会話を楽しみながら椅子に座る。相変わらず理知的で超然とした雰囲気してるねー。見た目こ若い男だが中身はその数倍はあるだろうからな、当然か。
「さて、ここに来た理由だが、1つアドバイスをくれ。何をしたいか、したら良いか分からなくてね。参考までに1つ。それと今後の運勢でも見てほしいな。占い、だからね」
「かしこまりました。では帰る時に一緒にラッキーアイテムもお教えしましょうか」
「そりゃ良いね。…では始めてくれ。いつでも準備は出来てる」
「その様ですね。どうやら随分お詳しいご様子」
「まぁね。ご察しの通り、だよ」
「そうですね。……では…始めましょうか」
その瞬間、世界がブラックアウトする。
―
「…ん…ここは…」
目が覚めると、草むらの上に寝ていた。
「草原?…いや、この高さは芝か。それに天蓋がある…てことは、ここはバイオドームの中か」
上空にはかなり薄くだが、正六角形のラインが見える。透明な天板とそのフレームだろう。風も僅かに吹いているが、環境維持機構の循環か。若しくは温度や気圧の変化か。
「しかし、何処だ?見覚えが無い」
立ち上がり周囲を見回しても心当たりが無い。植遠景にある建物はどこか見覚えがあるが、こんな場所は来た記憶が無い…はずだ。
「クスノキ、エゴノキ、ユウスゲ、ハナシノブ…」
他にも知ってる植物が沢山生えており、懐かしさすら感じる。相変わらず場所の見当は付かないが。
「とても素敵な場所ですね。ここは貴方の心象、貴方が大切と感じ、心が置かれている場所です」
その声で振り返ると、いつの間にかオーバーマインドの彼が立っていた。
「心の置かれている場所?」
足元に作業用ボットが近づく。どうやら何か作業をしたいらしい。少し離れた位置に退くと、水やりを水やりと軽い草むしりを始める。この光景どこかで…
「…あぁ、そうか。ココ、はくちょう座か。俺の資源採掘用の拠点だ。てことは、アレが軌道エレベーターで、アレが工場で、あの空のが俺のステーションか」
なるほど、それなら確かに心の置き場所だ。ここ程、思い出深い場所はあまり無い。拠点の作成や設備の配置とか、レイアウト1つにも思い出がある。色々悩みながら作ったからな。デカくなるほど各ラインがスパゲティ化するから、バラして一から配置し直した事も少なくない。
「懐かしいな。この星を見つけた時は凄い喜んだよ。まぁ、その後に拠点建設の必要資材とか見た時はめちゃくちゃゲンナリしたけどね。自由度高過ぎて、土台パーツから作んなきゃいけなかったからプリセット探した」
あれは苦労した。グリッド単位で土台から作れるもんだから、単純に資材量凄くて、組立機作ってパーツ作ってそれ使って工場広げてって、某工場ゲーム並に手間も暇もかかった。
「それは良い思い出ですね」
「全くだ。図面引いてアレコレ考えて…良い思い出だ。…吸っても?」
「どうぞ。ここは貴方の心象風景、禁煙の必要はありませんから」
それもそうだな。多分木に火炎瓶とか投げつけても燃えないだろうな。頭の中の思い出が燃える訳が無い。そういう想像はできるけど。
「それで?思い出話をしに来た訳では無いんだろう?」
「えぇ、勿論。誰かを占う為にはまずその人を知る必要があります。ですから、こうして少々お邪魔させて貰っています」
「心象を見れば、人となりや、少なくとも何が1番心に残っているか、まさに一目瞭然か」
「その通り、やはりよくお分かりですね。三隈伊吹さん」
「…そう呼ばれるのは久々だな」
やはり、固有名詞は微妙にだがイントネーションに言語の違いが出る。通じるのであれば、特に気になる様な物でも無いが。
「それでは、始めましょうか。貴方の未来、貴方の運命、占わせていただきます」
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