都会だからと言って面白いと感じる仕事があるとは限らない
「おー、広いねぇ、デカいデカい」
流石は都会だと言った所。なんか最近感嘆ばかりしてる気がするが、実際感嘆する程の物なので仕方ない。こんな巨大構造体を宇宙で作れてる事実だけで、凄い事だからな。衛星を利用しているとはいえ、直径約22kmの半球ドームは文明力の現れだろう。宇宙港も、そこから出て広がる目の前の光景も、壮観な景色だ。
「本当に好きなんだな?ミクマ。いつも新鮮な反応をしている」
「あぁ、そうだね。ロマンを感じる。実に良い」
まるで子供にでも向けるような笑みで見られると恥ずかしいが、本当の事だ、否定はしない。メカメカしいのとか高度に発達している何かって実際凄くロマンだと思うし。全自動って謳い文句には心惹かれる。
「今度、何処かの工場でも見学に行ったらどうだ?ミクマなら楽しめるだろう?」
「良いねぇ、ナイスアイデアだね、ガブリエル。そうだな、次の目的地は工業系のコロニーでも行こうかな?皆で工場見学に行こう」
「私達もか?」
「別に一人で行っても俺は楽しめるタイプだからいいけど、それはそれで寂しいし、見学中に直販とか試供品とか色々有るかもしれないからね。そういうオープンな所は大体有るでしょ。なら2人も、きっと楽しめると思うよ」
「考えておく」
うん、それで良い。予定は予定、しかしいつだって未定だからね。気が向いたらで良い。そもそもどこの工場を見学させてもらうかとかも決めてないし。
「しかし、そんな服も持っていたんだな」
「まぁね。休日まで仕事着は着たくないかな。あれ厚手だから結構暑いし、如何にもらしくなっちゃうし。どう?似合ってる?」
と言っても、かなりラフだが。ジーンズにシャツと、羽織をジャケット代わりに着てるだけ。強いて言うなら、羽織は無地に背中に家紋が入ったちゃんとした羽織なくらいだ。仕事着は不燃で靱性の高い素材で織ったカツラギを使ってる為、見るからに仕事着ってデザインで、露出抑える為に長袖長ズボンなので空調効いてても地味に暑い。その分丈夫で安全性が高いから快適性とのトレードオフだ。性能は悪くないんだがなー。
「それ、家紋?」
「そだよーカミーユ。ウチは星なんで」
尤も、ただの下らない言葉遊びだけどね。先祖はユーモアのセンスが有ったらしい。
「由緒ある家?」
「いや?俺の国じゃ家紋は割とみんな持ってるよ。まぁ、意匠で家の格や古さは解るけどさ。家紋や服の色は家格で使えるの多少決まってるから」
そこら辺は文化の違いかな。カミーユが言う様に、由緒ある家、というかその個人だけ使えるって国じゃないからな。ま、使えるモチーフや意匠は家格で変わるのは変わらないが。ウチはそれなりに古いがそんなに立派な家では無いから、控えめな方だ。
「そんなのは置いといて、とりあえず組合に向かおっか。俺の家の話が聞きたいなら、後で教えてあげるよ。どうせ艦で長距離移動してる間は暇だしね」
「なら後で聞く」
「私も気になるな。洗いざらい喋ってもらおうかな?ミクマ」
「…お手柔らかにねー」
要らん事言ったかもなコレ。怖いなーアーヤダナー。何聞かれんだろうなー。
―
「お、ここかな?うん、実に如何にも事務所って感じする。事務所ってか役所?」
トラムに乗って傭兵組合の入ってる建物にやってきた。複合施設らしく、傭兵組合はこの建物の1〜4Fを使ってるらしい。組合が入ってるだけあって他の階も関連する様な企業が多く、兵器会社、造船会社、医薬、食料etcと、非常に良く関わる面子が一通り揃っている。中には保険会社なんてのもあったな。
「じゃ、俺換金してくるから2人は適当に待ってて」
軽く断ってから受付に向かう。別に皆でやってもいいが、わざわざ皆揃って受付する必要は無い。それに、少し待ちそうだし。
「賑わってる、と言う事なのかねー?」
やはり都市らしく、組合に来ている傭兵の数は多い。各企業と契約しているのだろう者や、船団を組んでるらしき者、俺達と同じフリーらしき者や、見るからにピカピカの新人と、多種多様な傭兵が、各々掲示物を見たり仲間と話していたり、組合職員や依頼者らしき者と商談していたりと、賑わいを見せていた。
「うーん、ピンとくる仕事は無いなー」
パッと見受付に空きが無さそうだったので、とりあえず横目に空くのを待ちながら掲示板の現在発注されている依頼を見る。どれもありふれた仕事ばかりで、内容も報酬も相場通りの内容だった。貿易都市らしく商船や企業の護衛が多いがその程度で、手っ取り早く稼げる討伐依頼は殆ど無かった。まぁ、討伐依頼は競争率高いし情報漏洩対策で直前まで伏せる事も多いから、ある意味当然だったが。
「貴方、ルーキーかしら?」
「あー…えぇ、そうですけど?」
知らない人に声を掛けられた。恐らくは先輩であろう女性で、何もせず目が合ってるので身長は同じ167〜8くらいだろう。目線的に若干下だ。それにしても何か違和感が…
「他の奴らとは雰囲気が違ったから。最近の新人と来たら、皆成ってないのよ」
「そりゃどうも。ま、気持ちは解る。今のご時世、わざわざ傭兵になりに来るのは、物好きか、忘れられないかの2択じゃないかな?」
「あら?貴方はどっちなの?」
「どっちもだよ」
「ふふっ…気に入ったわ。今度一緒に仕事する事があれば仲良くしましょう?」
「そりゃどうも。お手柔らかに頼みますよ」
「1人?」
「あー、ソロといえばソロだけど…あそこにいる2人、ウチのクルー。紹介する?」
「次の機会で良いわ。その時は仕事仲間として紹介して貰おうかしら」
「フッ、ならそうする」
それを聞くと笑って背を向ける。お眼鏡に適った様で何よりで。
「…あーそうそう、待ってても空かないわよ?傭兵なら自分で退かしなさい」
「…あー、そういうタイプだったー」
ヒラヒラを手を振りながら彼女は建物を出ていく。成程ね?いやー、先輩のアドバイスが沁みるねー。道理で俺がルーキーと分かった訳だ。そしてこうして喋ってても一向に空く素振りない訳でもあるか。
「はぁ…やれやれっすわ」
人見知りには辛いねぇ、全く。
「…しかし…あー、成程、道理で違和感が」
とすれば違和感も納得だ。これはこれは、良い先輩に声掛けられたかもな。
―
受付で雑談してそうな如何にもな顔した先輩に、丁寧に頼んで退いてもらう。軽く睨まれたが、軽く微笑んでやったら大人しく退いたから度胸試しのつもりの様だったが、正直感じ悪いだけで怖くないので無駄な事だ。こうして屯って新人いびってる様な暇な先輩は実力は大抵お察しレベルだからな、経験上。賞金の受取処理中に軽く聞いた感じ、掲示通りの仕事しか無いようで、稼ぎたいならさっさと移動した方が良さそうだった為、そのまま賞金を受け取り、組合を後にした。行き先は豊富だから、何かしたい事が見つかったら、商船の護衛なりしながら向かっても良いかもな。
「しかし、いつも思うけど、こういう通過儀礼とか洗礼って教えてくれないと分からんし、きつくても先細るだけだと思うんだけどなー」
それを自分で頑張って気付くからこその通過儀礼だったりするが、ノーヒントも程々にした方が良いんじゃないかな。まぁ、別にこの程度はキツくは無いけど、最初にやらすのもどうよ。
「…ところで先程声を掛けられていたが、何だったんだ?ミクマ」
「ん?あー、心優しい先輩からの薫陶かな」
「にしては、随分と仲が良さそうだったな?」
「どうだろうね?まぁ、気が合ったって事なんじゃない?」
あの雰囲気や表情が社交辞令や演技じゃ無ければ、だが。
「ああいうのがタイプなのか?かなり目で追っていた様だが」
「ん?あー、確かに嫌いじゃないね。ああいう芯がある人は好きだよ。ただ、あれは違うよ。珍しいの見たなって」
「ほう?そうか?」
「揶揄うなよ。良いんだよ俺の事は。それより昼飯どうするかの方が大事じゃない?何か食べたいのある?」
意味ありげな笑みを浮かべても何も無いっての。早々お目にかけれる物でも無いから、ついじっと見てしまっただけだ。
「待ってる間に調べた。ココが美味しいらしい」
「へぇ…ビストロか。良いね」
「名物はステーク・フリットだって」
「それに美味いビールも」
「良いねー、今ちょっと飲みたい気分」
何となく疲れた気がして、凄く喉が乾いたから、軽く飲んで流したい。とりあえず軽く食べた後で、行き先考えるかなー。何がしたいだろう?候補はあるが漠然としてるからな、2人の反応見次第決めるか。
「まぁ、気分次第だな。これは」
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