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星河に生きる  作者: 春乃木漏れ日


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17/20

初めての街は一番目立つラウンドマークを覚えとくと迷子になっても合流は出来る

登場人物の豆知識

カミーユの身長は159cmだが、実は靴の高さを含んでる数値。平均身長より低身長の為の小さなコンプレックスがソールの厚みに現れている。因みに井戸(Du puis)では無く山(Du puy)

『ワープアウト15分前です。各当番員は持ち場に移動して下さい』

「お、もうこんな時間?」

自動音声によるアナウンスに顔を上げる。いけない、いけない、集中し過ぎたかな。少しキリも悪い気もするが、まぁいいか、後でやろう。とテーブルの上を軽く片付けてから艦橋に向かう。ささやかな趣味だが、暇つぶしには丁度いい。程よく集中出来るからな。

「あー、後で娯楽品買わないとなー」

元々持ってるのはそれなりに多いが、当然無い物の方が多い。収集は基本的に珍しい物を選んでたからな。

それにあまり自分から手に入れようとはしてなかった。戦利品での取得や報酬で貰う事が大半だ。それにそのせいで専門書や技術書の類はかなり少ない。そういう意味でも幾つか見繕っておかないとダメだろう。

「皆おはよう。早いね」

艦橋に入ると既に2人共席に着いていた。

「あまりやる事も無いからな。勉強がてら色んなデータを見ていた所だ」

「早く覚える為にシュミレーションしてた」

「2人共真面目だねぇー、ま、程々にね」

とても良い事だが、根詰めない程度にしないと身に付かないから、注意しとかないとな。尤も、そこら辺はちゃんと分かってそうだが一応、管理者としては見ておくのも仕事だ。

「じゃ、とりあえず準備して。ワープアウト時が一番危険なんだから」

「そうなの?」

カミーユが軽く顔を傾けながら聞いてくる。こういうの見ると年下だなって感じるな…と言うのは置いといて、真面目に答えるか。

「そう。めちゃくちゃ危険だ。理由は大きく分けて3つ。1つは、ワープアウト直後は機動出来ないから。どうしても砲撃とか雷撃されると避けるのは難しいんだよね」

「2つ目は、予測されるから、だろ?」

「その通り。流石だねガブリエル。ワープというか、こういう船全般そうなんだけど、航路は割と決まってるんだよね。どうしても安全な道はある程度決まってるから。特にハイパースペースはね。だから出(・)入(・)口(・)は凡その場所はお互い割れてる状態になる」

「そこを撃たれる?」

「そ。もしくは待ち伏せとか機雷原にしとくとか。向こうから突っ込んで来てくれるから、狙う側はポイント張ってるだけで良いのよ。もちろん狙われてる側もシールド全開でアウトするとか色んな対策打つけどね」

因みに俺はそれでよく稼いだし、2度程雷撃されて轟沈しかけた経験がある。あの時は修理費馬鹿みたいにかかったなー…

「3つ目は?」

「それはねー…、時々漂流するんだよねー」

「「え?」」

2人揃って素っ頓狂な声を出す。まぁそりゃ時々漂流するよって言われたら当然だと思うけどさ。俺も驚くね。

「あー、より正確に言うと、ワープアウトの位置ズレて深宇宙とか予定地点よりかなり離れた位置に放り出されるとか、そういう事故がたまにあるんだよねー」

全く困っちゃうよなーアハハー…なんて冗談言ったら殴られるかもな。

「基本的には大丈夫だよ。航路計算の時点でそこら辺は考慮してるし、漂流の原因は大抵の場合、偶発的な事故だからね。ただ偶発的だからね、不測は常に起こりうるのさ」

「原因は一体なんなんだ?」

「うーん、幾つかあるけど一番多いのは重力変動と座標重複かな。ワープアウト地点に高質量物体とかあると、弾かれて変な所行ったり、重力変動のせいでそもそもの繋がってる出口自体がどっか行ったりするんだよ」

「ソレ…大丈夫なの?」

「安全装置が働いてたらね。その為の安全装置だから。弾かれるのは、ちゃんと起動したって証拠だよ」

物体と完全に座標が重なると、クーロン散乱と排他原理に基づく大爆発が起こるから、安全装置によりワープしてる側の位置がズレる様になってる。重力変動で出口がズレるのはそれだけ時空間が歪んだって事なのでまた少し理由は違うけどね。重力は空間に作用する力なので仕方ない。

「てな訳で、2人共、くれぐれも気をつけて業務してね。マニュアル通りやれれば問題無いから。そういう事故が起こらない様にあるのがマニュアルだしね」

尤も、本当に漂流する可能性もあるが言わないでおく。知らない方が良い事もあるからね。超時空に幽閉ってのは笑い話にもならないから。

『ワープアウト1分前です』

「よし、メインシステム、戦闘モード起動、ワープアウト後も機関戦速を維持、奇襲に備えシールドも戦闘出力へ移行」

『メインシステム、戦闘モード起動します』

「カミーユはレーダーを注視、ガブリエルは火器管制を」

「「了解」」

「よろしい。では各員、衝撃に備え。ワープアウト!」

通常宇宙へ出ると同時にメインスラスターを吹かし駆ける。特にロックオン警告もレーダーに映る怪しい艦影も無いから杞憂だった様だ。カミーユに目を向けても軽く首を振ったので間違い無い。

「ま、だろうと思ってたけどね。流石にこんな場所で攻撃されないか」

前とは違う理由で、攻撃されないだろう気はしていたが、世の中には常理の通じないヤツが1人や2人は居るし、逆(・)に(・)と思うヤツは居そうだしな。普通に貿易都市なら貨物船は多いだろうし、大量の戦利品捌きに来た傭兵船も多いだろうからな。まぁ、それでも常識的に考えて単艦とは言え戦艦相手に砲撃する様なバカはやらん。同じ戦艦や巡洋艦でも無い限り。

「シールドを通常出力へ戻せ。即応出来るように戦闘モードは維持だ」

「了解。でもなんで維持?」

「うーん、念の為かな。俺達への攻撃は無かった訳だが、俺(・)達(・)だからって可能性があるんでね」

「そうなの?」

「そうなの。明らかな戦艦に手を出したらろくな事にならないのは誰でも分かるからね。だが客船とか貨物船は違うんじゃないか?武装も中身も、質が違うだろうからな」

「つまりは、今まさに襲われている船に遭遇する可能性がある、と言う事だ。カミーユ」

「商材は幾らでもあるだろうからねー」

まぁ、そういうのに遭遇しない為にって意味でもさっさと入港しちゃいたいので飛ばしてる。別に見て見ぬフリして見殺しにしたいって訳では無いが、ぶっちゃけ面倒臭いので、誰か手が空いてるヤツが他に居たらそっちに任せたい。そういう事案は大抵人質居るからただ落とせばいい討伐より面倒臭いんだよね。そして少しでも遅れたり怪我されると訴訟とか何とか言ってくるし。コッチは命助けてるし命賭けて仕事してんだから文句言われる筋合いは無いってのにね。意図して怪我させたとか言うならともかく。

「そういう事だから、一応、即応出来るようにレーダーだけは注視しててね?2人共。反応有ったら救難しないとダメだからさ」

人道的支援と言うやつだ、仕方ない。無視は違法なのでね。

「何も無いと良いですけどネー」


―


「お、見えた見えた。おー、やっぱでっけーなー。流石はと言った所だなー」

何事も無くコロニーを目視できる距離までやって来れた。機関の出力を下げFTLを解除しつつ、眺める。相変わらずスペースコロニーは超巨大だが、コレは格別だ。普通のコロニーの一回りも2回りも大きい所に、貿易都市の風格を感じる。資材も金も集まる貿易拠点、それも特に重要な1つであるこの都市には、大型化するに足るだけの資材も金も、人材だって豊富なのだろう。いつの時代、どの国だろうと、大型建造物を作れるのは、それだけ力がある証明だ。

「よし、申請出して。ある程度近付いたら後はオートパイロットでドッキングするから警戒は解除で良いよ」

ここまで来れたら多少気を緩めても問題は無い。気が抜けないのは操縦やってる俺だけだ。入口付近は混むから接触事故とか多いんだよね。せ(・)っ(・)か(・)ち(・)が突っ込んで来て事故りましたとか良くあるんだなコレが。人が多いとその分だけ確率が増えるから、都会ほど事故を気を付けないといけない。まぁ、人居ないからって気を抜いてるとまた別の理由で事故るから、気を抜いた操縦出来るのは周りに何もないボイドくらいだが。

「入港したら、何をするので?」

「とりあえず情報収集兼ねて観光。情報収集中はどうせ仕事しないし、休日って付けとくから好きにしていいよ。入港したら給料渡すから、私用はそれ使ってね」

まぁ、傭兵としては情報収集も仕事の範囲だが、別に勤務って訳でも無いし、俺が個人的にする仕事だから、2人は休暇扱いで問題は無い。と言ってもあくまでも内々での話であって、傭兵的には依頼中以外は常に休暇みたいなもんだが。

「了解。それで、この予定は?」

「一旦賞金受け取りに組合に顔出しつつ、依頼とか市場とか見ながら空気感のチェックかな。後は…時間的に昼食取ったら自由時間。何か希望あるなら言ってくれたらそこ行くし、何かしたい事あるならそれやって貰って大丈夫。俺邪魔ならトレセンとか情報センターでニュースとか見てるから遠慮なく言ってくれていいよ」

女の用事は大抵の場合男は邪魔だからな。男が必要な時は荷物が多い時か褒めて欲しいかの二択だと、親友も言ってたが、俺もそう思う。偏見だがな。そういやアイツ元気かな?…ま、アイツの事だから元気にやってそうだが…

「うん、まぁ、そういう事なんで宜しく。あと2人に1つ質問。愚問だとは思うけど…2人とも地図って読めるよね?迷子の経験あるよーって人居る?」

「無いな。問題無い。士官は地図が読めないと仕事にならないから学生時代に叩き込まれた」

「大丈夫。むしろ得意」

「ん、なら良い。とりあえず迷ったらデネブ集合ね。もしくは…ここで1番有名な場所ね。まぁ端末から位置情報共有出来るから迷っても大丈夫だろうけど」

「了解」

「分かった」

うん、本当に大丈夫そうだね。心配はしてないが、一応言っとくのも大事なので言っておく。こんな事言っといて自分が迷子になる可能性もあるからな。どんな街か楽しみだが、はしゃぎ過ぎて足元すくわれてもダメだし、大人らしく真面目に行くか。

「うーん、果たして何時間、何事も無く過ごせるだろうかねー」

そういう意味でも楽しみだな。全く困っちゃうね。ホント。

読んでいただきありがとうございます。

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