貿易都市って実際にどんな街かは案外漠然としてる
「おー、サルベージは結構良い感じかな?これは」
デネブに戻り、格納庫に備え付けのシャワー室で軽くシャワーを浴びてからリストを見る。若干乾かしきれなくて髪が湿気ってる気もするが気にしない。それよりは戦利品の確認の方が大事だからな。
「そうなの?」
カミーユが聞いてくる。格納庫まで迎えに来たらしく、廊下に出たすぐの所で会った。
「あー、そうだな。派手に沈めたからね。もっと少ないかと思ってた。流石にジェネレータとかコンソールの類は吹き飛んでるけど、しゃーなしだね。リストの感じ、カーゴが無傷なだけ有難い」
と言っても、所詮は宙賊の貨物。主に食料や酒等の嗜好品が大半だが、金属資源や化学系の材料なんかもある。恐らくは輸送中か取ってきたばっかりだろうな。触媒なんかはレアメタル使ってる事も多いし、嵩張らないから狙われ易いんだよなー。
「それより、カミーユ。喜ぶと良い、ヤツら結構なワルらしい。賞金のアベレージが高い」
トータルで70ちょいか。もしかしたら何処かの構成員だったかもしれないな。まぁ、どうでもいいが。もし構成員として、そのバックの組織に的にかけられても、返り討ちにしたらいい。幾らなんでも戦艦落とせる戦力は用意出来ないだろ。バカでかい暗黒組織とか言わない限り。
「あ、そういえば給与額考えてなかったな。うーん、どうするか」
本人の前でする話でも無いが、思い出したのだから仕方ない。
「…少なくても良い」
「その分完済は遠くなるぞ?…とは言ったが、実際に給与額は低くなると思うぞ。基本的にまぁ歩合制というか、成果報酬型だからなウチ。全体の何%受け取るかの問題だね」
勿論、仕事によって手当や補助なり色々上乗せしたりしなかったりがあるが、基本的にはその通りだ。何せ現状の主な収入がまんま成果報酬だからね。
「ま、詳細は後で三者面談ね。とりあえず基礎額は5%で付けとく。その方が計算楽なので」
「分かった」
「うん、宜しく」
カミーユと軽く頷きあう。収支計算して給与出して補給の計算もして…うん、マネジメントは大変だな。
「ちなみにミクマはどのくらい貰うの?」
「あー、俺の場合はまた少し違うからなー。皆に払うの払って余ったら全部俺の。運営費だけでもそれなりの額になるから、実質的にはそんなに入る額は変わらんよ。ま、今回の場合だと50%は貰えるかな。支出は燃料費くらいだから」
完全なワンサイドゲームでも、戦闘は戦闘、メンテナンスはするけど、一度も攻撃食らってないし、武装の駆動部と機関部のチェックくらいだ。それで30万は入ってくるんだからボロ儲けだ。傭兵業の運営費として共有の貯金の為に俺の収入の半分は差し引くが。理由は単に使い過ぎ防止も兼ねて最初から個人資産を減らしてるだけである。どうせ傭兵として動くなら傭兵としての財布から出すしね。
「全く、最高にボロい商売だな」
キョトンとするカミーユに笑いながら、やれやれと肩を竦める。勿論、文字通りの命を賭けた仕事なんだから、それくらいリターン無いとやってらんないがな。
艦橋に入ると、艦長席に座ってるガブリエルが目に入った。別に特に何か気にしてないが、やっぱり本職の人が座ってると様になるな。コレで軍服着てたらちゃんと45度で敬礼する所だった。
「お疲れ様。凄い戦果だな?ミクマ」
「そっちこそ、お疲れ様であります、副艦長殿」
「フッ…艦長が言う台詞か?」
呆れたように笑いながら席から立とうとするガブリエルを手で制しながら、隣の副長席に座る。デネブを動かす訳では無いから、わざわざ席を移動する必要も無い。
「それで、この後どうするんだ?ミクマ」
「それを相談しようかなって思ってたんだけど、ぶっちゃけどうしたい?このまま釣りするならポイント移動するし、釣り飽きたならコロニーへ行っても良いし。リスト的に収支は明らかプラスだからどっちでもいいよ」
「私は艦長の命に従うだけだからな。どっちでも良い」
「私も。指示に従う」
「ナルホドね。少し困るやつだ」
「ミクマはどうなんだ?」
「そうだなー、俺としては、軽く稼げたし移動しようかなって。確かデカイ貿易拠点有ったでしょ?あそこなら大きめの仕事有りそうかなーって思ってね。このまま宙賊狩りしてもそんなに稼げそうに無いし」
「そうなのか?」
「まぁね。今回釣れたのはアベレージ高かったし、サルベージ品もそこそこ値が付くヤツだった。だからね」
「成程?つまり残るはヌシか…」
「木っ端の雑魚か。そしてこういう時ってのは総じて雑魚ばっかりで費用対効果に悪いってのが相場なのよねー。時間と燃料ばっかり消費して肝心の賞金が雀の涙ってのは良くあったから」
アレは苦労したなー。特に傭兵やりたての時は稼ぎ少ない割には出費多いもんだから、殆ど自転車操業だったんだよなー…
「ってな訳で、貿易拠点へ向けて移動しようと思った訳なんですけど、どう?貿易拠点って言うくらいなんだから割と都会でしょ?多分。折角近くなら観光も兼ねて」
「了解したが…いずれにせよ一度消耗品の補充はしないとな」
「あー、そうねー、忘れてた。じゃあ一旦買ってから出発しますか。どの道航路決めないと行けないし」
そう言いながら席を立つ。デネブはこのまま適当な深宇宙にでも置いておく。ワープは重力の影響を強く受けるからな。別に出来ない訳では無いが惑星周辺や地表だと挙動が不安定になる。流石に超時空で漂流とかしたくない。だから航路を策定して重力や時空間、出発地到着地の障害物のチェック等の様々な計算をしてって事が必要になる。惑星から離れた深宇宙は都合が良い。ついで程度に敵に襲われない為って理由もある。
「じゃ、とりあえず買ってくるけど…行く?」
「行かない」
「副艦長らしく留守番しておこう」
「はい、そっすか」
だろうと思ったよ。男は1人寂しく買い物ですか。別にいいけどさ。
「ま、とりあえず、俺の端末に欲しい物入れといてねー」
ついでに嗜好品の類も買っとこうかなー?そろそろ酒も飲みたくなってきたし、コーヒーと紅茶は豊富な程良い。
―
「ただまー。色々買ってきたよーっと」
『あぁ、おかえり』
てな訳で、約4時間の買い物を終えて帰ってきた。まぁ、通販なので艦から1歩も出てないけど。注文後即時配達とは技術の進歩だねー。お陰で殆ど移動と通販カタログ見てる時間だった。
「色々買ってきたよー」
『ほう?』
「ざっくり120kgくらいになっちゃった」
『そんなに買ってきて何する気だ?』
「えー?足りないよりは良くない?それに酒とか液体は重いんだよ?地味に容器重いし、トータル重量だから。そっちは?」
『航路の策定と計算は終わったぞ。貿易都市で良かったんだよな?後は出発の合図待ちだ』
「了解。じゃあ俺が艦橋入ったら出発ね」
着艦し格納しながら、メインシステムにアクセスする。
「ん?なるほど?コレなら直通も行けそうだな」
航路は安定しているらしく、流石にハイパースペースはしっかり整備されてる様だ。まぁ、貿易ルートの1つらしいからな。ワープでも直通で約37時間かかるから相当遠いっぽいがな。ハイパースペースなら最短でも数日はかかるんじゃないか?
「どんな所なんだろうな?良い出会いがあると嬉しいがねー」
人でも物でも何でも良いが、メリットが高い存在に会いたいものだ。後は貿易都市ならではの商品とか仕事があると、もっと嬉しい。取引ルートとか市場も気になるしな。
「総員発進準備。機関最大、ワープシステム起動。これより超時空潜航に入る」
「了解。機関最大、ワープシステム起動します」
艦橋へ上がり艦長席へ座りながら指示を出す。復唱を聞きながら2人の顔を見る。うん、問題無さそうだ。
「目標、貿易都市サン=ギャスパール!ワープ!」
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