↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星河に生きる  作者: 春乃木漏れ日


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/20

ヘッドハンティング 夜の部

この星系の小惑星帯は思いの外活発である。鉱物資源、特にレアメタルが豊富で採掘業者が日夜採掘に勤しんでいるからだ。鶴嘴片手に鉱山で採掘していた時代と同じく、日々の食い扶持を稼ぐ為、若しくは一山当ててさっさと今の環境から抜け出す為、採掘船でスキャンした小惑星の資源量と睨めっこしたり、採掘レーザーで小惑星を掘削し一喜一憂していたりする。運良くレアメタルを掘り当てれたのなら、それだけでその日のノルマを達成出来る。レアメタルとベースメタルでは、単純に買取単価が違う為だ。そしてそれは宇宙海賊もまた同じである。より少量で価値のある品を狙う彼らにとって、レアメタルは格好の的で、武装の少ない採掘船もまた、格好の的だった。

「今日の獲物は何処だ?」

下卑た笑いを浮かべながらレーダーを見るのは正しく宇宙海賊らしい姿だ。それも仕方の無い事、彼らからすれば哀れな採掘業者は獲物でしかなく、凡ゆる犯罪行為を是とするのだから。

「救難信号を拾いやしたぜ。どうやらエンジンブローで座礁してるみたいでさぁ」

「お、よし、行くか。ちっと世(・)話(・)焼いてやるか」

故に気付かない。常に弱者を求め下を向いている彼らには。自らもまた狩られる側である事に。自らが常々向けているその感情が自身に向けられるという恐怖に。

『メーデー!メーデー!こちら3F498番、メインエンジンが故障した!誰か助けてくれ!繰り返す…』

「俺達が助けてやるよ。先に金品もらってからな」

『メーデー!メーデー!こちら3F498番、メインエンジンが故障した!誰か助けてくれ!繰り返す…』

「…何だ?録音か?壊れたレコーダーみたいに繰り返してやが」

故に終ぞ気付かない。それが実に単純な囮であると言う事に。まるで堤防で釣り人がヒットするのを待っている、そんな一方的な釣りだと言う事に。

『まずは先制で1隻。残さず墜とせるかな?』

閃光と共に船が真っ二つに割れ轟沈する。レーザーによる狙撃だ。

「何処だ!何処に居やがる!」

レーダーには敵影無し、光学機器による目視にも依然として敵影らしき姿は無く、先程の採掘船と小惑星ばかりが浮かんでいる。余程遠距離から狙撃されたのかはたまた…

『これで2隻目。3隻目もだな』

次々に船が爆発し轟沈していく。かなりの高威力らしく、逃げる間もない。この威力では宇宙海賊のシールドなぞ高が知れているだろう。

『クハハッ大量大量♪気分が良いね〜』

無慈悲にも聞こえるのは見えざる相手の声。子供が虫でも殺す様な軽く、冷酷な声だった。

『さて、そろそろ沈むか?』

たった数分で4隻が沈み、残るは自機のみ。逃げる為の超光速ドライブも、チャージ時間で墜とされるが目に見えている。

「た…助け…」

『それ今日迄何人から聞いた?そういう事だよ』

現実は非情である。昨日強者だったからとて今日弱者にならないとは限らない。自身が強者であると傲っているのら尚更。

『やはり掃(・)除(・)は気持ちが良いな。頑張っただけ金が貰えるのだからやり得だ』

今日も世界は平常運転である。


―


遡る事7時間前、デネブ艦内、第1格納庫にて。

「いやー、実に壮観。我が愛機はいつ眺めても、同じだけ感動のある。良いもんだなー」

『そんなにか?それに我(・)が(・)愛(・)機(・)とは随分入れ込んでるんだな。デネブはどうした?ミクマ』

「デネブも愛機だけど、愛着の向き方が家とか客船への向き方なんだよなー。やっぱサイズ感かな?サイズ感が大き過ぎるのかな?」

『私に聞くな』

ガブリエルとそんな掛け合いをしつつ、目の前の艦に思いを馳せる。銀色に赤いラインの塗装、三角錐に近いフォルムに可変翼、各種ハードポイントには武装がしっかりと積まれ、メインスラスターは双発式だ。うん、実に良い。

「このフォルムがキモなんだよなー。出来るだけ曲線取ってるから空力もそんなに悪くないし、何よりも反(・)射(・)率(・)がね。ソレ用の構造材や塗料使ってるとは言え角が多いと良くない」

大気圏内も飛行可能な万能戦闘艦だ。可変翼は大気圏用で、RCSも多配置だから宇宙でも良く曲がれる。流石に特化艦には負けるが各種パラメータは『凡ゆる部分で高性能で纏まってる』から、ちゃんと勝負は出来るし腕次第では十分喰(・)え(・)る(・)性能している。特に乱戦時は…

「…と、このままじっくり眺めてるだけで1時間は使えるからな。仕事しよっと」

生体認証でハッチのロックを外し、コックピットへ移動する。パイロットシートにオペレーターシート、サブパイロットシートと各種コンソールだけの簡素な物だが、これで良い。そも戦闘艦は十全に戦闘出来れば良いのだ。

「ま、居住性は悪くないしねー。必要最低限にしてるだけだな」

シートに座りメインシステムを起動させる。起動後即座に自動の自己診断プログラムが走り、結果はオールグリーン。何時でも使用可能と知らせてくれる。

「さてと、これからの作戦について、軽くブリーフィングだ」

『よろしく頼む』

「と、言っても特に何かやる事は無い。ガブリエルはデネブの指揮、カミーユもデネブでモニターやってれば良い。レーダーを注視し、不審艦の数と速度を教えてくれ」

『了解した』

『りょ、了解』

「今からやるのは、非常に簡単な釣(・)り(・)だ。囮を用意して、引っかかったアホを片っ端から落としていく。だから忙しいのは俺かなー」

やだね〜、勤労とは程遠いタイプなんだけどなー俺。

『何を囮にするんだ?』

お、良い質問だな。少し解説しようか。

「このデネブは戦艦な訳だけど、これだけデカイとランニングコストはかなりの物になる。戦闘時等で消費する物資量は桁違いだ」

『だろうな。弾薬の積載量だけでも相当だろう?』

「そう。だから本格的な艦隊戦とかは財布に優しくないんだけど、カミーユ。それだけの物資、一体どう用意すると思う?」

『えっと、港で補給する?』

「確かに。それも正解だな。最寄りのコロニーに寄港したり、戦闘すれば整備しないといけないから、大抵は整備ドッグに入れた時についでに補給したりするんだけど、そうは行かない事もある。最寄りが無いとか、そこに行く物資が無いとかね」

『じゃあ、どうするの?』

「第2格納庫には作業用の小型船舶が複数積んでてね。整備とか船外作業用だったりするんだが、そのうちの一つに採掘船がある」

『つまり、現地調達?』

「その通り。惑星とか小惑星とかデブリとか、そういった物から採集して簡易補給とする、って時もあるんだ。さっきも言ったが常に補給路が有るとは限らないからね。今回はそれを使う」

『成程、だから採掘業者にコンタクトを取れと』

「あぁ、ガブリエル、その通り。彼等の積荷を買い取ったり、少しだが囮用に採掘するのに席を外して貰う為にね。少し多めに握らせて置いて。3万も有れば囮分には足りるだろ?」

『なんで、積荷を買い取るの?』

それも良い質問だな。

「それは単純、俺達にとってもヤツら宙賊にとっても、金属は換金性が高いし、単価が良いからさ。先進コンポーネント、精錬金属、未加工でもレアメタルとかの希少資源はかなりの値になる。だからさっさと仕事を終わらせたい宙賊や、ペイロード稼ぎたい俺達傭兵からしたら、そこら辺は狙い目なんだ。特にコンポーネント辺りは大きさに比べて値が付きやすい」

『だからそれを囮に?』

「な?単純だろ?実に古典的で単純な手法だが、それ故に常に一定の効果があるのさ」

『それでどうするんだ?ミクマ』

「まず初めに、中にレアメタル積んだ採掘船を浮かべる。適当に小惑星が密集してる所へ。エンジンが座礁したから救難出してるって体を装うんだ。救難音声は適当にレコードしたヤツループでいい。釣れたら勝ちだからな。そこを潜伏してる俺が奇襲、一気に墜とす」

『潜伏は大丈夫なのか?』

「小惑星の影に隠れてたら中々バレないもんさ。所詮は民間の違法改造船。レーダーも武器もシールドも、大した装備は積んでない。それに、俺のは特(・)別(・)製(・)でね。潜伏は大得意だ」

『了解した。その間我々はどうすれば?』

「さっきも言ったけど、レーダーの様子注視しとくのと基本的には待機かな。ステルスモード起動して、適当にバレないようにしてて。終わったら作業機出してサルベージの手伝い頼む」

『不測の事態が起こった時はどうする?』

「そん時はそん時かなー。ピンチになったらとりあえず敵引き付けて射線上に突っ込むから合図したら主砲撃って。それで一掃で終わり。ま、そんな事は無いとは思うけどね」

装備や機体の性能差を考えたら、ほぼ間違いなく蹂躙や鏖殺となるだろう。梃子摺る様な相手が居る可能性はあるが、そういう相手は総じて知名度もあるし、そんな腕や機体持ってるなら、こんな小銭稼ぎはしないだろう。

「出撃準備。カタパルト展開、隔壁開け」

『カタパルト展開、隔壁開きます』

発進シークエンスが始まり、機体がカタパルトへ移動する。推進剤、エネルギー共に充填率100%、感度良好、実に好調だ。カタパルトへ接続され、同時にスラスターを起動する。

『カタパルト、エネルギー充填完了、進路クリア、発進どうぞ』

「ミクマ・イブキ、マスカレイド、発進する」

グンッとかかるGに口角が上がる。カタパルト投射での初速のGは思いの外軽いのは、それだけ慣性制御や耐G機能が優れてる証拠だろう。

「良いねぇ、実に良い。やっぱコレだね」

シュミレーションで操作は確認してるが、軽く慣らしで機動する。潜伏ポイントへ向かうのに小惑星を避けながら飛行するが、あえてスレスレで避けてみたりして感覚を合わせる。

「さーてと、仕事しますかー」

まぁ、気楽に行こうか


―


「っと、全滅出来たかな?今ので何組目?」

『えっと5組目。数はトータルで28隻』

「ま、そこそこだねー」

釣果はまぁまぁ成功と言った所か。平均5.6隻は一般的な宙賊の編成数だから順当だな。

「うん、流石にそろそろ食い付きも悪くなってきたし、ほとんど待機時間とは言え疲れたから、1度帰還する。その後、もう1回釣りするか決めよう」

『了解。格納庫開きます』

「よろしく。…オートパイロット起動。収容シークエンス開始っと」

背伸びをしながら、軽く肩を解す。戦闘機動は流石に疲れるね。それに即応できる様に警戒しておくのは集中力削る。

「賞金額とサルベージ品確認しながら、ゆっくりコロニー目指そうかねー?どこ行こうかな?」

最終的な候補は幾つかあるけど、とりあえず近隣で1番デカイ所行きたいな。物も人も多いし。となると確か近くに貿易拠点があったからそこがとりあえずの目的地になるかな?

「…ふむ、まぁこれも要相談…かな」

タバコに火をつけながら、呟く。仕事終わりのタバコは染みるねーやっぱ。あーだこーだという悩みを煙と共に吐き出したら、何となく一区切りが付く。

「とりあえず帰ったらシャワーだな。あとはなるようになる」

2人に怒られ無い程度に、適当にやろうか。

読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字の報告、感想等々お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。