ヘッドハンティング
「で?説明してくれないか?」
「帰艦早々コロニーから発進した事?それとも諸問題を金で解決させた事?」
「どっちもだ」
まぁ、尤もな意見だな。現在デネブはL5にある小惑星帯へ巡航している。オートパイロットが起動されてるし、慣性で航行してる為、操縦席に詰める必要は無い。が、暇だし計器見たいから艦橋に居る。流石に大丈夫としても完全無人ってのもあまり良くないしね。
「まぁ、一言で言うなら、念の為かな」
「念の為?」
「俺は少し心配性なんだよ。それに面倒臭いの嫌いなんだよね。手っ取り早い方法があるならそうしたい人なの。ま、確実性やリスクとの兼ね合いだけどねー」
それに、相手と同じやり方の方がやりやすいと言うのもある。そりゃ勿論、全員が全員ルールを守らないとなると、大前提として存在してる秩序自体が崩壊するが、相手がルールを守る気ないならこっちも律儀に守る必要も無い。そっちがその気ならってのと、お前もやってるだろ?という話だな。相打ち上等問題提起された時点で勝ちだ。
「そういう物なのか?」
「そういうもん。大抵は、ね」
やれやれと、2人揃ってため息を吐く。カミーユは無言無表情だから、話を聞いて何を考えてるかは分からん。
「とりあえず。問題は解決した、と思う。後は結果が出るまで少し待ちだな。なので今後について軽く相談しようかって思ったんだけど、さっきも言ったけど少し心配でね」
「何がだ?」
「何もかもかなー。デネブは戦艦、最新鋭の軍艦だからね。装甲や各種防御も最新鋭だったり高性能なんですよー」
「ふむ。それで?」
「なので、生身の防御力も高いんだけど、それでも移乗攻撃されると少し困るんだよねー。港内で戦闘出力でシールド展開って訳にもいかないからね」
それにドッキング時は動けないから的になる。物理的に大きいからね。
「そんな事をされる様な心当たりがあるのか?」
「だからでしょ。無いとは分かってるけどってヤツ。それに、どうせ移動するなら、予定が多少前後するだけだよ」
無いと思うけど、あの後、本物か確認する為に実はつけられてたり、何かイタズラしたいって人間がいるかもしれないとか、まぁ考えたらキリがない、ただの被害妄想だがな。
「で、今後の話についてなんだけど…良い?」
改めて聞くと2人が頷く。さっきのはただの掛け合いみたいなもんだしな。ある意味当然か?
「まず初めに、さっきも言ったけど、一先ずカミーユの依頼は完了した。諸問題は解決したので後日確認でき次第、契約終了って事で。構わないかな?」
「構わない」
「では、そういう事で。それで依頼料なんだけど…」
「…ちゃんと払う。だが少し猶予は欲しい」
カミーユは渋い顔をしながら答える。
「…個人的には別に無期限無金利とかでも良いんだけどさ。正直、一々取り立てしたり振り込まれてるか確認してって面倒臭いんだよねー」
ハッキリ言ってマメな方とは言い難い性格してる人間だと自認してるからな。確認して計算して、とかやるのは面倒臭い。
「…という事で、カミーユ・デュピュイ。ウチで働かないか?」
「…良いの?」
「良くなかったら言わないってのは置いといて、まぁね。見ての通り深刻な人材不足だからね。幾らこの船が高性能でも、流石にこの艦橋の座席分くらいは人数居ないとダメだからさ」
使うだけなら一人でも良いけど、本格的な運用するなら各部門長程度は居ないと不味い。現状、可及的速やかに手配しないといけないのは艦橋勤務の各メンバーと、機関や整備のエンジニア、後は船医かな。ま、その仕事が出来るなら必ずしも人間でなくても構わないけど。
「だから、オペレーターやらない?一応自慢じゃないが、福利厚生はちゃんとしてる…予定だし、給料もまぁまぁ良い方だと思うよ?」
「給料くれるの?」
「そりゃ、雇用契約結ぶならね。依頼料とかは源泉徴収って事で差し引いて処理するから支払いの心配も要らないよ。あ、ちゃんと給料明細は出すから気になった事は何でも聞いていいから」
「やった事無いけど?」
「誰でも最初は未経験だよ、ってのは置いといて、研修というかOJTするし、全然、出来る範囲でいいよ」
それでも何処か釈然としない顔をしているカミーユだが、恐らく腹は決まってるだろう。これは単純に理由が知りたいだけだな。ガブリエルが何か言ったのかな?
「俺は、君にある一定度のスキルはあると思ってるんだよね。初めて会った時、コードブレイカー持ってたでしょ。あれ自作だろ?ソフトとかは元々そういう用の使ってるんだろうけど、ちゃんと機材組めて操作できる知識があるって事だからね。ならウチで軽く勉強したら最低限オペレーターの仕事出来るんじゃないかな?って。なんなら他に適正あったらソレやって貰うし。とりあえずやってみないかの誘いだよ。それに、どうせ行く宛て無いんでしょ?なら完済と当座の生活費稼ぐバイトくらいで、仕事してくれたらそれでいいよ。さっきも言ったけど人材不足だ。繋ぎでも何でも良いんだよ」
そこまで言うと、一先ず納得したように軽く頷く。ガブリエルも感心した様な顔をしてるので、演説は成功したかね?コレは。
「…では、よろしくお願いします」
「こちらこそ。我々は君を歓迎する。ようこそデネブへ」
歓迎の握手だ。今夜はご馳走かな。
「で、早速で悪いけど仕事の話だ。ガブリエル?」
「何だ?ミクマ」
「最初に謝っておく。大変申し訳ありません」
「…ほう?何か謝る様な事をしたと?」
はぁ、気が重い。表情や態度は一切変わって無いが、纏う雰囲気が実戦仕様に変わったからホント怖いな。
「…あー、まず1つ。悪い話から行くと…カミーユの一件だが、個人的な用事も同時に行ったんだがー…それで500万使っちゃった」
「「…はぁ?」」
正しく唖然と言った顔で見つめる2人に言い訳を続ける。
「いやね?どうせ今後必要になりそうだったから、今のうちにって思って、市民IDの偽造をして貰ってね。それで、口封じというか秘密保持契約というか、こう言うのはケチると逆に信用無くなるからさ。どっとね」
所謂面子って奴だ。巨額を動かせるってのはそれだけ有力であると証明する最も簡単な方法で、ぽんと大金渡してくれる様な人には、逆らわず気を良くさせてもっと大金せしめようってのが普通の反応だ。特に表に出せない事なら尚更な。逆らったら消されるかもしれないし、明るみになったら自分も危ない訳で。信頼と誠意は金額とも言うし。
「てな訳で、今、貯金半分になっちゃったんだよねー…困った困った」
アー、コマッチャウナー、アハハー
「笑ってる場合か」
「はいその通り。なので現在進行形で金策してる訳ですよ」
「…当初の目的を果たしにか?」
「はいそうです。でないと真面目に補給で困る事になりそうなので」
そう、この星系には別に遊びに来た訳じゃなく、仕事しに来たんですよ。傭兵らしく、戦闘行為をしにね。
「この先に何かあるの?」
「そういえば、カミーユには言ってなかったか。この先にある小惑星帯にはね、宙賊の縄張りがあるんだよね。多分」
実際に自分で確認してないので知らない。地政学的にはあると思われるが。
「だからそこでひと仕事しようかって訳だけど、ガブリエル、一つ質問良い?」
「構わないが、何が聞きたい?」
「賞金って何処でも受け取れる?」
「あぁ…制限は無いぞ。賞金首は基本的に組合や軍や警察が賞金を付けるからな。その国の中であれば何処でもログや本人を提出したら受け取れる。それに何もじっとしてる訳では無い。宙賊とて飯の種が多い所へ行ったり、身を隠す為に誰も居ない様な場所へ行く。そうだろう?」
「となると、その場所限定は難しいか」
「そういう事だ。だからここで賊を墜としたからと言って、この星系のコロニーで精算する必要は無いが、多少怪しまれるかもな。まぁ、ある意味傭兵らしくもあるが」
そりゃそうだ。近くにコロニーあるならそこ使えよとはなるからな。だが、それだけだ。他星系へ移動しようとした矢先に戦闘して戻るのも面倒だから向こうで精算しようと思ったとかは、傭兵なら良くある話だし。後はそのコロニーにある組合の職員とあまり仲良くないから行きたくないだの人間関係由来とかもあるだろうな。
「てな訳で、補給は済んでるし暫く賊狩ってから他の星系に移動の予定なんだけど、大丈夫そう?」
「私は良いが、彼女の荷物はどうするんだ?」
「小型艦あるからそれで後で買いに行く。日用品の買い付けくらいなら十分足りるし、その程度でデネブ動かすのもなんだし。必要そうなのリストアップしといて。多めにね?足りなくて困るのは自分だから」
「費用はどうしたら?」
「経費で落とすので払わなくていいです。デネブを運用する上での必需品なので。流石に食費と消耗品費くらいは出すよ全部。他にも何か必要なら申請してくれたら出すから」
尤も、嗜好品の類いは自費だけどね。化粧品は…物によるか。申請見て判断だな。
「まぁ、それは後で詳しく話すとして、ガブリエル、近くに採掘船あるならコンタクト。カミーユはガブリエルに付いて色々学んで」
よいしょと席を立ちながら指示を出す。これから1番激務だろうからしっかり身体をあっためないとな。
「ミクマはどうするんだ?」
「見てたら分かる。格納庫行って準備するから、コンタクト取れたら連絡して」
うーん、実にワクワクだ。実機で愛機を使えるんだからな。別にデネブも愛機だがサイズ的に家やマンションへの愛着に近いからな。だが格納庫にあるのは、正真正銘、俺の武器。
「クハッ…興奮してきたな」
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