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星河に生きる  作者: 春乃木漏れ日


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12/20

おまかせプランは大抵手数料込みの値段

「さてと、詳しい話の前に自己紹介といこうか」

デネブの艦長席に座って、話を切り出す。仕事の詳細を聞くのに流石に改装工事中の建物の中は宜しくないとのガブリエルの至極真っ当な意見により、デネブに帰還した。

「改めて、俺の名前はミクマ。デネブの艦長兼パイロット。よろしく。君は?」

「カミーユ・デュピュイ。年は16。技術リセの2年生(プリミエル)」

よろしくお願いしますと頭を下げお辞儀する少女に、軽く手を上げて応じる。上下共に少し草臥れた服を着ていて、髪は乱雑に最低限端を揃えてる程度に切られた長髪で、胸下まで伸びている。凄く明るいオレンジ色だが染色してるのかな?しかしカミーユ…

「…女みたいな名前って言ったら殴られそうだな」

「ん?私は女だけど?」

「男女両方に使われる名だぞ?ミクマ」

「…ジョーダンだよ。こっちの話だ」

どこぞの感受性豊かなパイロットの顔が出てくるが気の所為だ。今まで聞いた名前の雰囲気的に多分メジャーなんだろう。

「じゃあ、カミーユって呼ばせてもらうけど、良い?」

「構わない。私もミクマって呼ばせてもらう。それで依頼だけど」

「そうだなー、とりあえず、どうして欲しい?それによって話はだいぶ変わるんだけど」

「とりあえずこのコロニーから出れれば良い。出来れば最低でも3つくらいは離れてる方が良い。後は自分で何とかする」

ナルホド…ね。まぁそんなもんだわな。とりあえず今の環境から抜け出せれば良いって事なんだろうし、実際自分で何とか出来る能力や自負があるんだろうから、まるきり考え無しって訳では無いだろうが、若いね。バイタリティがあると言った方が良いかな?些か前(・)の(・)め(・)り(・)だ。

「それで、どうする?このまま密航でもする?非正規の方法ってあんまりやりたくないんだよねー」

「お金は何とかする。だからお願い…」

少しだけ潤んだ様な目で頭を下げる。うーん、あんまりそういう目で見られてもな。虐めてる様に見える。方法はいくらでもあるっちゃあるんだけど、ぶっちゃけどれも同じくらい面倒なんだよなー。

「…分かってる。頭上げて。別に断るって言って無いから。どうやろうかの相談だよ。それによって費用も変わるからね」

弁明しながら、カミーユの後ろに座っているガブリエルに目線を向けると軽く頷く。何を言いたいか伝わっている様で助かる。

「正攻法から裏技まで、色々ある訳だが…ハッキリ言えば、俺からしたら全部同じなんだよね。連れてくだけなら、出港申請して密航するだけ。戦艦の中に1人や2人紛れても、まぁ分からんさ。俺は傭兵だし依頼と言われたら入管もあまり深くは突っ込まない。さ(・)る(・)お(・)方(・)の御息女とでも言い張られると、密航者相手でも強く出れないってのが実情だからね」

良くある政治の一コマだ。実際、外交特権とか使って裏取引とかまま有る話だからな。入管からしたら下手に正義感出して左遷されるのも嫌だろうし、左遷で済まない可能性有るんだから、尚更怖いだろう。こういう話のタチの悪い所は確認取れない事が前提だからな。でなければ密航とは言わんし。

「てな訳で、依頼料だけどー…うん、オマケして100万ピッタリでどう?」

「…それは安いの?」

「安いと思うよ。良心的な価格ってやつ。だってウチの利益多分かなり少ないし」

机のコンソールを操作し、カミーユにレポートのホログラムを見せる。大凡の経費や各種手続きの費用の計算が書いてあり、推定される利益は約10万だ。10%しか儲けが無いから、少しでも必要経費増えたら無くなる所か赤字になりかねない額なので、半分慈善事業だな。多分純利はもっと少ない。

「ざっくりこんな感じなんだけど、どう?おまかせプランなら一から十まで全部任せてくれていい」

もちろんもっと安く済む方法はあるんだが、わざわざそれをコッチから提示する理由も無い。ヒントは既に出してるし、そもそも仕事なら敢えてでも無い限り自分から利益減らす様な事はしないのもプロとして当たり前でもある。

「…分かった。お金は何とかする。だから…お願いします」

深く頭を下げる姿に少しだけ不憫さを覚える。余程困ってるんだろうな。やっぱりちょっと虐めてる気がしてきた。

「じゃあ、契約成立って事で。じゃあとりあえず、部屋に案内しようか。軽く休憩すると良い」

出会い頭のひと騒動で走り回ったのもあるが、普段着だろう服の草臥れ方からしてもかなり疲れてそうだったから、休憩させる事にした。幸いデネブには客室が有るし、部屋数も一つや二つでは無い。こういう来(・)客(・)の為にそれなりに設備は整ってる。もちろん、鍵は防犯上どちら側からも閉めれる仕様だ。

「良いの?」

「まぁね。契約はさっき成立したんだ。ならココからは俺の仕事だ。多分すぐ終わると思うし」

上手くいけば、ね。まぁその算段は一応あるが。

「捨ててなくて正解だねー。いやー、我が貧乏性に助かるとは思わなかったなー」

デスクの引き出しの中から取り出したのは、1つのペンダント。翼に光輪、中央部は星の様な形になっていて、その星の中心にローマ数字が刻印されている。

「コレは…」

「服のマークと同じだな。という事は?」

「さっき、前に仕事で『光の翼』の拠点強襲したって言ったろ?その時に使ったヤツ。正会員の会員証だよ。この番号は会員ナンバー。欠番になって無ければ使えるんじゃないかな」

その時は施設の潜入時に使用したが、今回は別の用途で使う。と言っても、あの時と同じで他会員と会う為なのは変わらない。

「このペンダントは『騎士』の役職の会員証だ。怪しまれる事は無い。そもそも『光の翼』自体、割と秘密主義な所あるからね。ちなみに役職は会員証の色で分かる」

「まぁ、大きな声で言えない事をやってるからな。捕まってないのが不思議な程だ」

「それだけ影響力やツテがあるのさ。これもその1つだよ。詳しくはカミーユは知ってるんじゃない?」

ヤツらの内部事情に詳しいのは恐らくデネブの中ではカミーユが1番だ。最低でも俺と同じくらい知ってるだろう。何せガッツリ身内だしね。

「『騎士』は文字通り守りの役職。『光の翼』を守る為の兵士で、傭兵が多い」

「合法的に武装出来るからねー。護衛って事で、武装艦や歩兵用装備とか色々仕入れたりもしてるのさ。実際、正規のライセンスがあって、正規の依頼でってなると、少なくとも何もしてない内は何も出来ないしね」

ま、だから会員って事隠して色んな組織に入る役職も確かあったはず。経歴は至ってクリーンって会員多いのもこういう理由でもある。コレも良くある話だな。

「成程。だから傭兵のミクマも怪しくは無いと?バレないのか?」

「調べたらバレるよ流石に。別に俺、入会してないし。ただ、どの業界もあんまり上司やら人事調べるのって良い顔されないんじゃないか?例えば、正会員なろうとしてる様な人間なら尚更、正会員の証持ってる人間を疑う様な真似はしないよ。心象悪くされて正会員なれませんってのは嫌だろうから。今回はそれを利用する」

「と言うと?」

「シンプルだよ。金を握らせて、それっぽい事言うだけだよ。『光の翼』がこのコロニーにあるって事は絶対に役人にも関係者が居る。そいつに、手数料って事で多めに金渡して、正(・)式(・)な(・)手(・)続(・)き(・)をして貰うのさ。その際に多少は日付が前後するけど」

「…いかにもな話だな」

「でもこれが1番早いんだよねー。嫌かもしれないけど、ここは1つ、飲んでくれ」

「艦長の命とあらば」

「すまんね」

やれやれと肩を竦めるガブリエルに軽く謝りつつ、席を立つ。ここからは仕事の時間だ。

「じゃあ、カミーユを客室に案内してあげて。俺は着替えてから役所行ってくる」

「分かった。一人で大丈夫か?」

「大丈夫。今度は気を抜いて歩かないから」

軽く冗談を言いながら、2人の方を見ると、カミーユがバツの悪そうな顔で目を逸らした。流石にもうここら辺にしとくか。

2人が部屋を出ていくのを見送ってから、隣室に移動する。クローゼットからスーツを取り出す。それっぽければ良いので、高級そうに見えるのを選んで着替える。髪を整えて、適当に指輪の1つでも付けたら、少しはらしく見える。

「うん、早く脱ぎたい。正直スーツってあんま似合わないんだよねー」

まぁ、鏡の自分に文句言っても仕方ないので、さっさと出かける事にする。口が回ってくれると良いんだが、どうなるか…

「うーん、この場当たり的な癖直さないとか?いや、後で良いかそれは」

こういう所だな全く。何とかするのが仕事だし、何とかなるから直らないんだろうな。悪癖は大体そんなもんだし。

「はぁ、じゃあ行きますか。どうかすんなり進みますように」

読んでいただきありがとうございます。

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