12ー3 『浦島太郎はなぜ生きていたのか?』中編
亀「ややっ。これは困ったことになったぞ。子供たちから助けてもらったお礼がしたいだけなのに、浦島太郎さんはそれを受けてくれないだなんて。そんなことがわかったら、女神様に叱られてしまいます」
浦島太郎「叱られてしまう? それを早く言ってくれればいいのに。本当に少しなら行ってもいいです。でも少しだけですよ」
亀「やったぁ。ついに浦島太郎さんを竜宮城に案内できるんだ!」
かたり「亀はそれはそれはよろこんでいますが、浦島太郎はまだどこか納得していない様子です」
浦島太郎「それなら早く連れて行ってくれるかな? あまりばあちゃんを一人にさせたくないんだ」
亀「お任せくださいっ。どうかわたしの背に乗ってください」
かたり「こうして亀の背に乗った浦島太郎は、竜宮城へたどり着きました」
女神「あなたが浦島太郎ですか。このたびは亀を助けてくれてありがとうございます」
浦島太郎「べつにかまいませんよ。それより女神様、寝たきりのばあちゃんの病気を治してくれないでしょうか?」
女神「あなたの願いならすぐに叶えます。その前に、さぁお座りください。鯛やヒラメの踊りを見てやってください」
浦島太郎「悪いけど、ばあちゃんが心配で落ち着いてる場合じゃないんです。願いを叶えてくれないのなら、おれはこれで帰ります」
女神「ちょっと待ってください。それならせめて、この玉手箱を持って帰ってください」
浦島太郎「いいえ。亀を助けただけなので、そこまでしてもらうわけにはいきません。それでは、さようなら」
かたり「せっかちな浦島太郎により、玉手箱はおろか、鯛やヒラメの舞い踊りすら出番をなくしてしまいました。これには女神が怒り心頭です」
女神「なんて頑固なのかしら。こちらの好意を受け取らないだなんて。こうなったら、えいっ!! 魔法をかけてしまいましょう」
かたり「女神は浦島太郎が気づかないうちに、彼の背中に玉手箱を背負わせてしまいました。浦島太郎は今にも地上にかえろうとそわそわしています」
浦島太郎「さぁ、亀さん。おれを地上に戻してくれ」
亀「ぼくはかまいませんが、あなたは本当にそれでいいのですか?」
浦島太郎「ええ。なにかをもらおうと思って善意を与えたわけじゃないのだから、これでいいんだ」
かたり「こうして浦島太郎は、亀の背に乗り、地上へと帰って行きました」
後編へつづく




