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12ー2 『浦島太郎はなぜ生きていたのか?』前編

 皆様、本日は劇場部最終公演においでくださり、まことにありがとうございます。部長の甲斐野(かいの) いち()です。


 最終公演である三月公演のタイトルは『浦島太郎はなぜ生きていたのか?』をお送りします。


 最後までたのしんでください。


〘開幕ブザーの音〙


亀……音澤(おとざわ) 陽稀(はるき)


浦島太郎……甲斐野 いち花


女神……春夏冬(あきなし) (れん)


かたり……椋木(くらき) (なぎ)


かたり「とある海岸で、亀が人間の子供たちにいじめられていました」


浦島太郎「お〜い。亀をいじめちゃいけないよ?」


かたり「浦島太郎がそう言うと、子供たちはわっと声をあげて逃げて行きました」


浦島太郎「亀さん、大丈夫かい?」


かたり「棒で叩かれてはいましたが、亀はうれしそうに浦島太郎を見上げます」


亀「助けてくれて、ありがとう。お礼にあなたを竜宮城に連れて行ってあげます」


浦島太郎「竜宮城ってなんだい?」


亀「鯛やヒラメが舞い踊る、海中の天国のようなところです。女神様もいるんですよ」


浦島太郎「へぇ〜。でも、いいや。海中だと息ができないだろう?」


亀「ぼくを助けてくれたお礼なので、特別に息ができるようにしますよ」


浦島太郎「でも俺、これから仕事しなくちゃ。寝たきりのばあちゃんも家で待ってるし、遊んでいられないよ」


亀「そうおっしゃらず。ほんの少しでもいいですから、感謝の気持ちを受け取って欲しいのです」


浦島太郎「やっぱり行けないよ。なにかしてもらおうと思って、きみを助けたわけじゃないからね」


亀「だったらなおさら女神様に会うべきです。女神様はどんな願いも叶えてくれるんですよ」


浦島太郎「だったら、ばあちゃんの病気を治してくれないかなぁ? 俺、竜宮城には興味がないけど、ばあちゃんが元気になったら、また畑をうなうこともできるんじゃないかって思うんだ」


亀「これはまた頑固な浦島太郎さんですね。海中に行かなければ、その願いは叶いません」


浦島太郎「だったら海中には行かない。女神様だかなんだか知らないけど、うっかり間違った選択をして、失敗したくないからね」


かたり「これには亀も大弱りです。浦島太郎はどうしても海中に行くつもりはありませんから」


 中編につづく



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