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56 レムの秘密4


「遊具の独占なんかしてないよ。勝手に私に挑んで自滅した人を見て怖がられてるだけ。はぁ、私に勝てる相手なんていないのに」


 天狗マスターの不要な一言で、沙耶様の優しくなった表情が再び好戦的なものに変わりました。


「ふーん、強いんだ?」

「強いよ。遺失魔道具(ロストアイテム)の前では、身体や頭を鍛えても無意味だと思う」


 クールなマスター格好良いです!


「へー貴女に恨みは無いけど、試してみる?沙耶が名無しさんに意味を教えてあげる」

「はぁ、低能が。私はミラ。私に触ると火傷するよ?」


 沙耶様はニンマリ笑ってゆっくりと肩口にポンと木刀を置きました。


 迎撃起動!

 パチッと、火花が飛ぶと、沙耶様が真剣な表情に変わり、木刀でパンッと飛んでくる火種を弾き飛ばしました。

 マスターがびっくりした顔で見てますね。


 ですが、マスターの火種は特別製。ゴウッ!と勢い良く木刀に火が着きます。

 弾かれた火種もバチバチと何もない地面で燃え続けています。


「うわわ。沙耶の大事な木刀(むらさき)が!  ええ!この火は全然、消えないんだけど?」


 慌てて落として、砂をかけて沈火しようとしますがなかなか消えません。


「この火種は酸素を発生させるから、水の中でも燃えるの」


 沙耶様は、少し焦げてしまった愛刀を悲しそうに見つめます。それを冷たい目で見るマスター。


「へえ。良く分からないけど、ミラちゃんは凄いね」

「は??? 怒らないの?怖がらないの?何で笑ってるの!?」


 それは、恐らくマスターにとって初めての反応だったのでしょう。

 マスターの魔道具に誘惑や恐怖という感情を抱かず、マスターをただの普通の女の子として見る稀有な存在。


「木刀が焦げたのは沙耶が未熟だっただけ。この失敗は沙耶の物だから、あげない」

「え?? 全然意味が分からない」


 一文字(いちもんじ) 沙耶(さや)稀有(けう)な少女。

 強さと高潔さと好奇心を持っている。


「それで、もう終わり?」


 挑発されて、マスターのしおれかけた天狗の鼻が復活しました。距離をとって仕切り直しです。


「低能のわりにやるね。特別に、本物の武力を見せてあげる。剣なんて時代遅れだから」


 四次元ボックスから取り出したのは、なんと無人攻撃機(ドローン)でした。

 ビィィィーと甲高い音を立てて、複数のプロペラが回り空に浮かぶ攻撃機が!

 空を制する者が、戦争を制する。ギリギリ刃の届かない高さへと上昇。


 先程の武器が換装されているようで、パチパチパチと3発の火種を威嚇射撃し、沙耶様の近くに落としました。

 地面で、バチバチと火種が燃え続けています。


「準備完了。戦力差が、分かったのなら降参して?」


 うん。マスター、容赦ないです。

 沙耶様の性格を考えると、勝利条件は、無人攻撃機の撃墜になるのですが・・。

 飛翔体のため脆いといっても、子供の力で叩いて堕とすのは不可能でしょう。まして、届かないのですから。

 沙耶様、火傷させたくないので降参してください。

 

「まさか?」


 そう言い放ち沙耶様が不敵に笑いました。

 冷めた顔のマスター。

 私もさすがに、ここまで酷い条件だと、沙耶様が気の毒です。


 沙耶様が、サイドステップを踏みました。マスターとの距離はだいぶ離れてるのに?

 そして、地面に木刀を刺した!?


 攻撃した先には、バチバチと燃える火種があり、ゴウッと沙耶様の木刀が燃えました。


「火技 火炎剣!」


 マスターが唖然とした顔で、見ています。何がやりたいんだと。そうです、大事な木刀を燃やしてどうされたのでしょう。

 沙耶様が見得を切って宣言っ


「私の剣よ あの目障りな、からくり飛竜を焼き堕とせ!うおりゃっ」


 なんと、燃える木刀を無人攻撃機(ドローン)に向かってブーメランのように投擲!

 ぐるぐると、回転した燃える刀が無人攻撃機に激突し、引っかかりました。

 しかし、やはり子供の威力では堕ちません。


 堕ちませんが、自信満々に笑う沙耶様と、驚きに染まるマスター。


 木刀の炎が、無人攻撃機の積載した弾薬庫に引火しました。

 ボンッ!ボンッ!

 小さな爆発を繰り返して、黒煙を上げながら、無人攻撃機が遥か彼方へと消えていきます。遠ざかるビィィィーという甲高い羽音。


「ふふふ、沙耶の勝ちだね!」


 沙耶様は勝ち名乗りをあげ、勝利の余韻に浸っていましたが、マスターは冷静にツッコミを入れました。


「・・・木刀」

「ぬぁっ!何てこと。引き分けになっちゃった。さよなら、木刀ムラサキ〜〜」

「・・・なんか、ごめん?」


 ガックリと肩を落とされましたが、マスターの謝罪を聞くと大笑いされました。


「あはははっ、もーなんで謝るの?愛刀を失ったのは、悲しいけどそれは沙耶の選択だよ。それにしても、ミラちゃんは凄いね!」


 カラリと切り替えて、戸惑うマスターに手を差し伸べてきました。


「凄い? 貴女はオーバーテクノが怖くないの?」

「まさか?一文字に怖いものなし! 今日から、お友達になりましょっ」


 それは、思いがけない救いの手。

 マスターが欲しくてやまなかったもの。


「ともだち? ・・・凄いね、一文字」

「当然っ」


 沙耶様は、一文字を褒められて誇らしげに笑いました。


「よろしくね、沙耶ちゃん」


 どうやら、マスターに初めての友達が出来たようです。

 クールなマスターがへにゃりと笑いました。

 うぉぉぉっ!無断で探偵道具を使って良かったです!!わうっわうっ。



【次回予告】


 レムの秘密5

 幼女の戯れ続き



※誤字修正、感謝。

 ホムンクルス!ホムンクルス!ホムンクルス!覚えました。恐らく、もう使いませんが。


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