55 レムの秘密3
父、失踪から7日。
「遊びにいくよ、イヌ」
『わんっ!』
ようやく少し立ち直ったマスターはどこかに仲良くお出かけするようです。探偵道具を持ったまま追いかけて行きましょう。
謎を抱えたまま、公園に着きました。
わいわいと楽しそうに子供たちが遊んでいます。
遊具を取り合っていますが、そこの少年、駄目ですよ順番待ちしないと。
「!?」
「オレンジ魔王が出たぞ!!」
「うわぁぁあ燃やされるう」
「逃げろーーー」
マスターを見るなり子供たちが、全員逃げて行きます。
なんて酷い。
こんなの虐めです。
あれ?逃げていく子供たちが皆泣きそうな顔をしてます。お漏らししてる子まで。
あれれ?虐めてるのって、もしかしてマスターの方?
「ちっ、低能が。ここもつまらなくなったな」
あれれれ?マスターも泣きそうな顔をしています。なんで?
「なんで?皆、私から離れていく。 遺失魔道具がいけないの? 大人も、子供も、お母さんも、お父さんまでも。 なんで?すごく簡単な説明をしてるのに理解出来ないの? この世界は、低能ばっかりだッ!!」
オレンジ髪の幼女が、ぽっつんと一人で人気だった公園を支配しました。
悲しき支配者です。
ブランコを独占してキイキイ揺らしていますが、全然楽しそうではありません。
アテの外れたマスターの近くに、代わりに寄ってきたのは、怪しげな大人達でした。
初めて見ますが誰でしょうか?
「オレンジ魔王!! ミラクル・オーバーテクノだな?可愛い部下を可愛がってくれたそうだが代償は高くつくぞ。 だが、素直にロストアイテムの保管場所を吐けば、許してやる。痛い目見たくなかったら大人しく従え!」
・・ただの犯罪者でした。
怖そうな暴漢ですが、怯える事なく冷めた目で見つめるマスター。
格好良い!
さっき泣いたため目が少し赤い。
可哀相です。
反射的に出した目薬が行方を失い持ったままウロウロします。過去には干渉できませんでした、私は無力です。
クールにマスターは言いました。
「私に触ると火傷するよ?」
ですが、それを聞いてニヤニヤと笑う暴漢達。耐えられなくなったのか下っ端2人が大爆笑しました。
「「ぶわはは。オレンジ魔王め、今日は兄貴が来てくれたんだ!お前もこれで終わりだ!!」」
「その通ーり。力の無いガキが何を言ってるんだ?こんな生意気なガキは大人がしっかりと教育してやらないとな」
「「さすが、兄貴!」」
不快な暴漢の兄貴分の手が、マスターに伸びます。
「私に触るなッ!」
「うるせぇ。ガキが俺様に指図するな。いいから、こっちに来いっ」
ガシッと掴んだ瞬間。
パチッと、火花が兄貴の服に飛ぶと、ゴウッ!と勢い良く服に着火しました。
「うわっ燃えた?服に火が付いたぞ!熱いっっ!!消してくれーー」
「「兄貴ーっ 大丈夫ですか!」」
それを冷めた目で見るマスター。
あっ、火傷するってそのままの意味でしたか。
「うっぎゃあああああ」
火達磨になり、消火の為ごろごろと転がる暴漢の兄貴分。
たしか、あれは火種迎撃砲でしたっけ?犠牲者が包帯ぐるぐる巻きになるんですよ。今は安全な次元バリアを使ってるので、懐かしいです。
「だから、私に触るなって言ったのに!お願いだから、これくらい覚えて?」
悲しそうなマスター。
しかし、その幼女に相応しくない生意気な言葉が、ボスを倒された部下の2人に怒りを注いでしまったようです。
「クソガキが、調子に乗りやがって!」
今度こそ本気になった大人の男性2人の暴力が、幼女へと襲いかかります。
ああああ。
「「兄貴の仇っ!!」」
伸びる手下の魔の手。
マスターは、思わず目を反らされました。
「ほんと、・・・低能」
ゴウッ!ゴウッ!
増えてしまった2つの火達磨。
合計3つの火達磨達が仲良くごろごろと転がる事少し。
「「うっぎゃあああああ。火傷したじゃねぇか! ちくしょーーオレンジ魔王め、覚えてやがれ!次は、親分を呼んで来るからなっ」」
消し炭にランクアップした暴漢達は、尻尾を巻いて逃げて行きました。
悲しそうにその背中を見送りながら、マスターは呟きます。
「はぁ。それは私のセリフだよ。・・・先月も触るなって言ったのにッ。いい加減覚えて欲しい」
マスターは神様にギフトを授けられました。
しかし、特異すぎるギフトに触れた者は、態度が豹変するみたいですね。畏怖する者、嫉妬する者、利用しようとする者、逃げる者。
反応は様々ですが神の与えたギフトが、皮肉な事に、徐々に周りの人間を狂わせて、マスターから人を遠ざけていったのでしょう。
再び空を見上げてブランコに座るマスターに、イヌがじゃれ付きます。
目薬は自分に注しました。
「わんわんわんっ!」
「どうしたのイヌ?」
黒髪短髪の和装の幼女が木刀を持って現れました。沙耶様も、今とはまた感じが違いますね。
友達になれる予感?クールぶってますが、どことなく嬉しそうなマスター。
良かったです。
「頼もーっ。我が名は、一文字沙耶。遊具を独占する悪い魔王を懲らしめに来ました。大人しく遊具を返しなさい。」
「ちっ・・敵だったか。私は何もしてないのに」
マスターが失望に染まる。
だけど、沙耶様はマスターにとっては初めての対話が出来る相手でした!
「あれ?おかしいな。聞いた話と違うんだけど。本当に何もしてないの?」
【次回予告】
激突するふたり




