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19 入学


 一文字沙耶は、気を引き締めて、外壁の門をくぐる。通行証を確認した門番は、特別に敬礼してきた。この街にも、一文字の武勇は響いているらしい。

 何か気持ちいい。名前負けしないといいんだけど。


「うおお。さすが、沙耶ちゃんだ!」

「ミラ。私は初めて来たの。名が知られてるのは、お兄ちゃんが頑張ってくれただけだよ?」


 私も頑張らないと。


 少し、厚かましいけど愛嬌たっぷりのノノンと別れて、私達はアード学園のある都市アリステリアに入った。


 今日から、この街の住人となる。

 後ろの方で、父の名を叫ぶノノンの声が、聞こえたような気がするけど気のせいだよね?キャラ濃い子だったよなぁ。


「沙耶ちゃん沙耶ちゃん、あれ見て!凄いよ」

「はいはい。そうだねーミラ」


 有頂天になったミラに、ぐいぐい引かれて迷子になりそう。大人ぶってみたけど、私も他の街にくるのは初めてだから、かなり興奮している。

 キョロキョロ見渡してお登りさんみたいになってるのは仕方ない。レムさんはいつもどおり、ミラしか見ていないけど。


 まずは、よく目立つアード学園で入学手続きをして、入寮の鍵を借りて、いや、そこはドームハウス(沙耶城)の設置になるのかな。うわわわ、それだと、いきなり目立ってしまいそうだ。でも、あの快適さには屈服しちゃう。

 入学試験で、お兄ちゃんのように高得点を出せるだろうか?少し心配。考え事は尽きない。


「楽しみだね、ミラ ミラ?」


 振り返るとミラがいない。この手に温もりが無い!

 ミラがいつの間にか迷子になってる。

 なにやってんのっ!!!と一瞬焦りかけたが、レムさんがいるから大丈夫である事を思い出した。行き先は伝えてるし、何の問題もないだろう。むしろ1対2なので、状況的には、私がはぐれた事になるのかな。解せぬ。

 知らない男の人達と目が合った。記憶にはないけど、私を見てる。いかにもな大剣を背負った男と、小剣と小盾の男の二人組。学園の服を着ているような?


「やぁ、お姉さん。すごく美人だね?それは、サーベル?」


「いえ、これは刀ですが」


「もしかして、アード学園に入学するのかい。良かったら俺らが案内するけど」

「刀って、もしかして噂になってる一文字!?」

 

「はい、一文字沙耶です」


 あれ?モテ期到来なのかな。それとも迷子と思われたのだろうか。

 あっ、ミラ発見!


「おぉぉっ、本当に一文字かあ! 鉄馬さんに厳鉄さんは強かったよ。あの人らに、勝てる人なんていないんじゃないかな。俺も戦った事があるんだ」

「とりあえず、沙耶さん。お近づきになりたいし、一緒に学園まで行こうよ」


 レムさんがミラの首元を掴んで、屋根の上を走って近づいてきた。・・・相変わらず今日も通常運転だなあ。 


「あの、お気持ちは嬉しいのですが、連れと来ているので」

「またまた、そんな事を言って。俺ら紳士だよ。 え?本当に来てるの?」


 私が指差す方向を見たナンパ男は、連れの登場方法が予想外だったのか、口をあんぐり開けて固まった。ごめんね、常識が無くて。


「沙耶ちゃん、ごめん。良い匂いがしたから」

「いいよ、気にしないで」


 屋根からしゅたんと、飛び降りたレムさんに捕まえられてるミラを見るとその手には食べかけの串焼きが握られている。手が、タレでベタベタだなあ。呆気に取られる二人組にぺこんとお辞儀をして、再びアード学園へと再出発する事になった。


「沙耶ちゃんも・・食べる?」

「私はお腹いっぱいだから、気にせず食べて」

「うん。美味しーのに」


 もむもむと食べるのを再開したミラを連れて、武を天下へ喧伝するため、アルティメット・ソード学園の門を叩いた。


「頼もー! 一文字沙耶です」

「     一文字ミラです」


 アード学園の歴史を塗り替えた、最強の剣士の入学である。



【次回予告】


 入学試験

 お約束は外さない

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