↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花咲けば冥府も春  作者: 連


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/27

sideアレクシス

――なぜ、こうなっている。


 私は机の上に積まれた書類を眺めながら、深く息を吐いた。王族として処理しなければならない公務は、いつもと変わらず私の前にある。けれど、何度文字を追っても内容が頭に入ってこない。

どうしても、あの日の出来事が頭から離れなかった。


 舞踏会、大勢の貴族が集まる中で、涙を浮かべる聖女。そして、その前に立っていたローザリア・ブルームフィールド。


あの日、私は決断した。長年、王家の婚約者として振る舞っていた彼女の本性を知った以上、見過ごすことなどできなかった。周囲を見下し、聖女を傷つけるような傲慢な令嬢。そんな存在を放置することが、王族として正しいことだとは思えなかった。


私は国を守る責任がある。だからこそ、聖女を守った。


それなのに――。


「・・・なぜだ」


思わず口から言葉が漏れる。あの日、全ては終わったはずだった。聖女が真実を語り、私は王族として判断を下し、ローザリアの罪は明らかになり・・・これで国は正しい方向へ進むはずだった。


しかし、現実は違った。


「しばらく離宮で過ごせ」


数日前、父上から告げられた言葉。表向きは休養。


だが、私には分かっていた。これは謹慎だ。私が第一王子であることを考えれば、到底納得できる扱いではなかった。その疑問が、胸の奥に残り続けている。


「私は間違っていない」


そう呟いて、自分に言い聞かせる。私は聖女を守っただけだ。傷ついた彼女を救っただけだ。それのどこが間違っているというのか。

だが、父上は納得していなかった。舞踏会で起きたことについて、改めて確認する必要があると言った。

ローザリアの告発についても、聖女の証言についても、を調べる必要がある、と。


理解できなかった。

なぜ、まだ確認する必要があるのか。

なぜ、すでに出た答えを受け入れようとしないのか。


あの日、誰もが見ていたはずだ。傷ついた聖女の姿を。そして、それに対するローザリアの態度を。それでもなお調査を続けるということは、まるで私の判断そのものを疑っているようだった。


「・・・ローザリア」


その名前を口にすると、胸の奥に苛立ちが広がる。あの女が、あの日に全てを認めていればよかったのだ。そうすれば、公爵家も王家も余計な混乱に巻き込まれることはなかった。なのに、彼女は最後まで抗った。自分には何の罪もないと言わんばかりに。まるで、私の判断が間違っているかのように。それが、どうしても許せなかった。


そして、もう一つ。


最近、私を苛立たせる存在がある。弟のレオンハルトだ。あいつは、あの事件以来何も言わない。ただ静かに、こちらを見ているだけだった。その穏やかな表情が、なぜか気に障る。まるで、私の判断を疑っているように感じるからだ。


昔からそうだった。レオンハルトは感情を表に出さず、何事も冷静に見つめる・・・そんなところが、昔から気に入らなかった。


「・・・何を考えている」


小さく呟く。だが、考える必要などない。私は第一王子だ。国のために判断したのだ、間違っているはずがない。


その時、扉が控えめに叩かれた。


「殿下」


侍従の声が響く。


「ルミエラ様からお手紙が届いております」


その名前を聞いた瞬間、不思議と張り詰めていた心が少しだけ軽くなった。


「入れ」


渡された封筒を開くと、そこには私を気遣う言葉が綴られていた。

心配していること、信じていること、私の味方であること。

その文字を見つめながら、私は静かに息を吐いた。やはり、彼女だけは分かってくれる。私が何を守ろうとしたのか、何のために決断したのか、もう迷う必要などない。


あの日、全ては決まったのだ。ローザリアの罪は明らかになった。それでもなお抗うというのなら、私は止めなければならない。


「・・・もう、容赦はしない」


静かに呟く。


私は第一王子なのだから。

国を守るためならば、どれほど大きな障害であろうと取り除く。

たとえ相手が、公爵令嬢であったとしても。

読んで頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。