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花咲けば冥府も春  作者: 連


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2/27

悪役公爵家2

大広間が、水を打ったように静まり返った。


誰もが耳を疑った。


王家とブルームフィールド公爵家。


建国以来の由緒ある家門の婚約が、まさかこんな公の場で覆されるなど、誰も想像していなかったからだ。


ローザリアは一瞬困惑を顔に出したが、すぐに切り替え公爵令嬢らしい対応をとり真っすぐ王子を見つめる。


「アレクシス殿下……突然、何のお話でしょうか?」


しかし声が少し震えていた。


寝耳に水だ。きっと誤解しているに違いない。その思いとともに聞き返した言葉を、アレクシスは冷たく鼻で笑った。


「まだシラを切るつもりか!見苦しいぞ、この悪女め!」


「お前は公爵家ということをいいことに、暁の聖女の一人ルミエラに陰湿な嫌がらせを日々行い、ついには三日前、王都大聖堂の回廊において、聖女ルミエラに暴言を吐き、階段から突き落とそうとしたな!証拠も証人もそろっているのだ!言い逃れできまい!」


王子の後方にはいつの間にか控えるように数人の令息たち、そして彼らに守られるように聖女ルミエラが立っている。


「殿下・・・私は大丈夫ですからもう・・・」


目に涙を浮かべつつ王子の袖口をちょこんとつかみ、しおらしく発言した彼女・聖女ルミエラ

人々の目には、涙を浮かべながら王子を止める慈悲深い聖女にしか映らないだろう。


「聖女を害するなど・・・!決してそのようなことはございません!」


ローザリアは彼らに向かい反論するが、アレクシスは聞く耳を持たない。


「冥婚と称して死人を蘇らせる邪悪な一族など、そもそも王家の婚約者、未来の王妃として相応しくないのだ!虫唾が走る!」


王子の発言に会場の貴族たちがざわめき、ローザリアには好奇の目が向けられていた


「アレクシス様!それらは事実ではございません!私たちが執り行う冥婚は、そもそもそのようなものでは──」


その言葉に怒りが頂点に達したアレクシスは、テーブルの上に置かれていたワイングラスを乱暴につかんだ。


「黙れ!」


怒りに任せその腕を振り上げ・・・


「この忌々しい魔女め!」


真紅の液体を揺らしながら、グラスがローザリアへ向かって飛ぶ。


◇◇◇


「お姉様!」


考えるより先に、身体が動いていた。ローザリアを突き飛ばし、その前へ飛び出した私。


次の瞬間、鈍い衝撃が額を打ち抜いた。


 ガシャンッ!!


私の額に当たったグラスは砕け散り、赤いワインが飛ぶ。


一瞬遅れて、生暖かいものが頬を伝った。


・・・血?


視界が揺れ、足元がおぼつかない。


「リリー!!」


 ローザリアの悲鳴。


 誰かが駆け寄る音。


 貴婦人たちの悲鳴。


 国王の怒号。


すべてが遠ざかっていく。


─痛い・・・。


頭が熱い。


グラス・・・?


お姉様は無事?


あの馬鹿王子……!

許さない!グラスを投げつけるなんて!

・・・グラス?こんな展開ゲームになかったはず・・・


ん?ゲーム・・・?


その瞬間何かが弾けた。


 知らない景色。


 知らない言葉。


 知らない家族。


 高くそびえる建物。


 夜でも昼のように明るい街。


 手のひらに収まる黒い板。


 ゲーム。


 攻略本。


 悪役令嬢。


 ブルームフィールド。


 ローザリア。


 リリアーナ。


 処刑──。


大量の記憶が、堰を切ったように流れ込んでくる。


──そうだ・・・思い出した


ここは・・・


ゆっくりと意識が闇に沈んでいく。


ここは、私が前世で遊んでいた乙女ゲーム『双聖のアルディオン』の世界

そして、ブルームフィールド公爵家は、"悪役"として滅びる運命にある。

読んで頂きありがとうございます。

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