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花咲けば冥府も春  作者: 連


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14/27

最初の一手1

春の陽射しがサンルームいっぱいに降り注いでいた。色とりどりの花々に囲まれた丸いテーブル。

私は紅茶を一口飲み、小さく息をついた。


「今日は暖かいですね、お姉様」


「ええ。こんな日は、少しだけ肩の力を抜いても罰は当たらないでしょう」


昨日までとは違う穏やかな日常が、まだ問題は何一つ解決していない。

それでも、お姉様は少しだけ笑えるようになっていた。私はそのことが嬉しかった。

テーブルの上には焼きたてのスコーンの甘い香りが漂う。こんな穏やかな時間が、いつまでも続けばいいのに。そんなことを思った、その時だった。


コツ――コツ――


足音が近づいてくる。


「失礼いたします」


エドガーだった。


「リリアーナお嬢様、例の件ですが」


彼は私の耳元まで近づくと、小さな声で囁いた。


「予定通りでございます。」


私は小さく頷いた。


「ありがとう」


エドガーは何事もなかったかのように一礼し、そのまま部屋を出ていく。それを見てお姉様が不思議そうに私に目を向ける。


「何かあったの?」


私は紅茶を置きながら微笑んだ。


「ええ、そろそろ、お客様がいらっしゃいます」


「お客様?」


その言葉が終わるより早かった。廊下の向こうから、騒がしい声が聞こえてくる。


「待てと言われて待てるか!」


「エリオット様、お待ちください!」


「どけ!」


バンッ!


勢いよくサンルームの扉が開いた。現れたのは、黒い騎士服の青年─エリオット・ヴァイスだった。

肩で息をしながら、真っ直ぐ私たちを睨みつける。


「やっぱりここにいたか」


その顔には、昨日以上の怒りが浮かんでいた。私は立ち上がることもなく、静かに紅茶を口へ運ぶ。


「ごきげんよう、ヴァイス様。」


その一言で、彼の眉がぴくりと動いた。


「挨拶なんかどうでもいい!」


拳が強く握られる。


「聞いたぞ!お前たち、学園でこそこそう動いているそうだな!」


サンルームの空気が一変する。お姉様が驚いたように私を見つめた。もちろん、お姉様にはまだ話していない。そんな彼を挑発するように私はゆっくりカップを置いた。


「その情報は、どちらから?」


「そんなことはどうでもいい!今さら何を企んでいる!」


私は小さく笑う。


「企む?・・・違いますよ」


エリオットをまっすぐ見据え続けた。


「この国の公爵家の娘が罪に問われている。これは当家としても由々しき事態です。ですから我々も独自に調査を行っているまでです。」


その一言に、エリオットの表情がさらに険しくなった。


「まだそんなことを!教会の調査を疑うつもりか!」


私は静かに首を傾げる。


「多角的に物事を見ることは大事なのですよ」


「どう見ても同じだ!事実は変わらない!」


彼は本当に分かりやすい。

私は心の中で、小さく呟いた。


――釣れた。


◇◇◇


数時間前、屋敷の廊下。


エドガーが若い使用人へ静かに話している。


「学園への問い合わせは、予定通り各所へ。ただし、隠す必要はありません。」


使用人が驚いた顔をする。


「よろしいのですか?」


エドガーは静かに微笑む。


「今回は、知られることにも意味があります。リリアーナお嬢様のお考えです。」


使用人は深く頭を下げた。


「承知いたしました。」

読んで頂きありがとうございます。

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