頼られ過ぎる探偵~生きている人間のほうが怖い~チャットGPT編3~
# 「頼られ過ぎる探偵」
## 第三話 生きている人間のほうが怖い
翌朝。
大垣探偵事務所には、カップ焼きそばの匂いが漂っていた。
弥太郎は机に資料を広げながら、割り箸をくわえている。
「朝からそれ食べるんですか……」
向かいで倉橋美鈴が引いた顔をした。
「昨日からこれしか食べてないので、実質ずっと朝です」
「意味が分からない」
転落死の幽霊が壁から顔だけ出して言う。
「探偵ってもっとハードボイルドじゃねえの?」
「うちは経費がハードです」
弥太郎は新聞記事を広げた。
『会社員男性、雨の県道で転落事故』
扱いは小さい。
地方欄の端。
警察も事故として処理する気配が濃い。
「問題は証拠ですねえ」
「ブレーキ細工、本当にされてたんでしょうか」
「されてなかった可能性もあります」
「えっ」
「幽霊、意外と勘違い多いんですよ」
美鈴が絶句する。
転落死の幽霊が頷いた。
「俺も死んだ直後、“殺された!”って騒いだけど、ただの酔っ払い転落だったしな」
「じゃあ昨日の熱量なんだったんですか」
「勢い」
「幽霊界の治安どうなってるんです?」
弥太郎はメモを整理した。
倉橋悠人。
二十二歳。
町工場勤務。
事故当日、同僚の沢井と揉めていた。
問題は、“何で揉めたか”だ。
「その沢井さんって人、どんな人なんですか?」
美鈴は少し迷ってから言った。
「兄は、あんまり話したがらなかったです。でも……」
「でも?」
「会社のお金が合わないって、前に言ってました」
弥太郎の手が止まる。
「横領?」
「分かりません。ただ、“俺のせいにされそうで嫌だ”って」
静かに雨が降り始めた。
窓を叩く音がする。
弥太郎は眼鏡を外し、服の裾でレンズを拭いた。
「……ちょっと嫌な感じですね」
「嫌な感じ?」
「本当に事件なら、“誰かが得をした”可能性があります」
「つまり?」
「悠人さんが邪魔だった」
美鈴の顔がこわばる。
そこへ突然、事務所のドアが開いた。
「たのもー!」
新聞配達員みたいな勢いで、ずぶ濡れの老婆が入ってきた。
「猫が! 猫が消えたんじゃ!」
「あ、はい。今ちょっと立て込んで――」
「タマが三日帰っとらん!」
老婆は弥太郎の机を叩いた。
「探して!」
「えぇ……」
「頼む!」
「今、人が死んでてですね」
「猫のほうが大事じゃろ!」
「価値観が強い」
弥太郎は頭を抱えた。
これがこの町だ。
幽霊案件だろうが殺人疑惑だろうが、猫は割り込んでくる。
十分後。
「なんで猫探ししてるんですか私たち……」
美鈴は傘を差しながら呟いた。
商店街の裏道。
雨でぬかるんだ細道を、弥太郎はしゃがみ込みながら進む。
「依頼は依頼です」
「今それどころじゃなくないです?」
「こういう小さい依頼、大事なんですよ」
「なんでです?」
「現金払いだから」
切実だった。
その時。
転落死の幽霊が電柱の陰から顔を出す。
「いたぞ」
「え?」
「猫」
指差した先。
古い倉庫の下で、三毛猫が丸くなっていた。
「あ、本当だ!」
美鈴が近づこうとした瞬間。
猫が飛び出した。
雨水を跳ね上げ、細い路地を駆け抜ける。
「待てー!」
弥太郎も追う。
「なんで全力なんですか!?」
「三千円案件です!」
「リアル!」
角を曲がった瞬間。
猫がぴたりと止まった。
その先には、小さな工場があった。
古びた看板。
――『沢井金属加工所』
美鈴が息を呑む。
「沢井……」
工場のシャッターは半開きだった。
中から誰かの怒鳴り声が聞こえる。
「だから俺じゃねぇって言ってんだろ!」
男の声。
荒れている。
弥太郎はそっと覗き込んだ。
工場の中には三人。
一人は四十代くらいの男。
腕が太く、顔色が悪い。
もう二人は作業服姿の若い男たちだった。
「金の管理、お前やってたろ!」
「帳簿合わねえんだよ!」
「知らねえよ!」
険悪な空気。
その瞬間。
弥太郎の背筋が冷えた。
――いた。
工場の天井近く。
梁の上に、倉橋悠人が座っていた。
濡れたままの姿で。
じっと下を見ている。
『……あいつだ』
視線の先。
四十代の男。
沢井。
『あいつが隠してる』
悠人の声は低かった。
『俺、見たんだ』
黒い染みがまた滲み始める。
まずい。
怒りを思い出している。
弥太郎は小声で言った。
「落ち着いてください」
『あいつが会社の金盗んでた』
「証拠は?」
『ある』
悠人がゆっくり顔を上げる。
『俺のロッカーの中』
弥太郎は目を見開いた。
「……何が入ってるんです?」
悠人は笑った。
死人みたいに青白い顔で。
『帳簿のコピー』
その時だった。
ギィィ……と音を立てて、工場の奥の扉が開いた。
全員が振り向く。
そこに立っていたのは、警察官だった。
「何してるんです?」
低い声。
制服姿の若い巡査。
弥太郎の顔が引きつる。
「あっ」
巡査はじっと弥太郎を見る。
「……またあなたですか、大垣さん」
嫌そうだった。
ものすごく嫌そうだった。
==========
【制服巡査登場ですね。名探偵の隣には迷刑事がいて欲しいタイプの私ですが、制服警官も悪くないです。期待大です。それにしても、ジェミニに続いてチャットGPTもずぶ濡れの人物を登場させました。なんでだろう?それってお約束か!?ドラマを作る時は一話目に火事のシーンをいれると視聴率が上がるなんて聞きましたが、小説にも何かあるのか。
それにしても、チャットGPTはお約束をしっかり押さえるタイプですね。一つの依頼が別の依頼に繋がるあたり、ベタですね。そのベタさが、可愛く思えてきました。】




