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竜族急報伝令役 蟠竜昇天  作者: 坂東智樹
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中編 感極まらせる生きた証拠2

 ナオマサへ

 この手紙が届くことを祈って筆を執る。

 久し振り、ナオマサ。

 ナオマサがわざわざ似顔絵を描いてまでおれを捜しているって聞いた。その思いに応えるのに、手紙という形になったことを許してくれ。

 まだ日本へ帰るわけにはいかないんだ。自分から飛び出しておいて、何も成果が得られないままじゃ、格好がつかないから。

 おれは今、ウーダラといる。ウーダラの仕事の手伝いをしながら、ある目標に向かって突き進んでいる最中だ。まだまだ遠くて、乗り越えなきゃならない壁はいくつもあるように感じる。それでも、いつか届くと信じてる。最近、やっと手応えを感じられる出来事があったんだ。だから、そのときが来たら、おれの方から会いに行くよ。ナオマサもきっと驚くと思う。今から楽しみにしておいてくれ。

 あの夜、一方的に別れを告げて悪かった。ナオマサの気持ちを踏みにじる行為だったと思う。ナオマサは悪くない。非があるとすれば、おれの方だ。そして、誤解しないでほしい。ナオマサのことが嫌いになったとか、一緒にいるのが嫌になったとかじゃない。話し合いを避けてるのはおれだけど、いつかちゃんと向き合って話せる日が来ることを願ってる。

 それにしても、不思議だ。あのときナオマサが異国行きに推薦してくれなかったら、こうした手紙を書くこともなかった。こんな苦しい別れの痛みを知ることもなかったかもしれない。今でも胸をよぎる。おれがこの国に来なかった可能性だ。おれが、ひたすら故郷でナオマサの帰りを待っている姿だ。もしそうなっていたとしても、結局おれたちはどこかで別れていたように思う。ひとりだけ取り残された、置いてけぼりにされたという思いを強くして。だから、この国に来たことに後悔はない。ナオマサと同じ景色を見られて良かったと思う。

 この国が日本と戦争を始めようとしていることは本当に胸が痛い。今回の帝国の戦力は非常に強大だ。日本も苦戦を強いられるだろう。それどころかあっという間にやられてしまうかもしれない。そこでナオマサに頼みがある。故郷に帰ったらなるべく早く降伏するように進言してくれ。それぐらい、勝ち目は薄いんだ。帝国の最終兵器は容赦ない。場合によっちゃ、おれが夢を叶えても、このことが原因で帰れなくなるかもしれない。でも大丈夫だ。なんだかんだいって日本は寛大な国だ。きっとみんな許してくれるはずだ。ナオマサにも早く紹介できるようがんばるよ。おれの未来の相棒を。

 長くなったが、この辺で筆を置こうと思う。ここまで読んでくれてありがとう。改めて、手紙越しになるけれど言わせてくれ。ナオマサには感謝しかない。噓じゃないよ。いつか必ず帰る。日本で会おう。

 タツノリ


 ナオマサはタツノリの手紙を読み終わった。手紙にはタツノリの人柄がよく表れていた。素直さや優しさが伝わってくる。留置所で会ったときは印象が違いすぎて、別人が書いたのかと思ったが、先程のタツノリは、手紙そのままだった。同じ人物が書いたのだと思えた。

「泣かせる手紙書くなあ、ちくしょう」

 そして、ナオマサには、ここに書いてある帝国の最終兵器とは、竜族のことではないかという気がしていた。竜族に近いところにいたタツノリは、竜族と日本との板挟みとなって、もがき、懊悩したことだろう。その竜族は日本へ向かう途中大嵐に遭って全滅した。脅威は去ったように思えるが、安心していいのだろうか。

 陸地ではタツノリが手を振り終え、背中を向けようとしていた。タツノリもこれから大きな旅に出るのだ。誰の記憶にも、どんな記録にも残らないような、厳しい旅となるだろう。ナオマサは今回の一件で近づいたようで離れた二人の距離を思い、船上からタツノリを見送った。


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