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【600,000PV突破!】特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。  作者: 黄玉八重
第16章 -勇者 VS 魔王-

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†第16章† -60話-[VS瞬剣士ウージー①]

お待たせしました。

 瞬剣士とは良く表したものだ。

 瞳は赤く染まり瘴気の衣を纏い殺気は駄々洩れであるのに、その剣戟は一線級。

 一瞬で十の剣線が放たれ、マクラインは亀のようにその()()を防がざるを得ない。


「グギャッ!グギャッ!」

「ぐぅっ!くっそ!」

 どういう技術なのか、何度見ても理解出来ない。

 水無月宗八(みなづきそうはち)。元剣聖(けんせい)セプテマ=ティターン=テリマーズ。

 両者ですらこの、一瞬で十の剣線を放つ()()を放つことは無かった。高速剣が精々だ。


「それでも、叩かれ続けた甲斐はあったな……」

 素早く動き回り、攻撃は一瞬十撃。ヒット&アウェイを繰り返す。

 その異次元の強さを支えるのは、瞬剣士ウージーが元獣人の禍津屍(マガツカバネ)だからだろう。

 精霊樹(ハイリア)製の大盾が防御力が常識からぶっ飛んでいるから耐えられているだけで、普通の盾を使っていれば数合受けた時点で自分は死んでいた。


 そして、攻撃しては退くので重騎士の鈍重な身体では、その後を追う事も叶わない。

 仲間が居れば敵との間に入り込む為の【戦技(せんぎ)】が使えるので、多少動きをカバー出来るのだが、一人では加速する術がないのだ。


「一人で戦う事を想定していなかったから、あまり練習してないけど。制御はオーヴィルに任せるぞ!」

 仲間が居て初めて輝くのが盾役だ。

 そして、地精の魔法補助を受ける事で、一人でも輝けるのが地精使いだ。地精オーヴィルは張り切っている。

『任せて。マクラインはしっかり当ててね』

 冷静な地精らしく、頼もしいが釘を差すのも忘れない。



「分かってるよ!≪———地竜(テラナイト)聖剣(=エクスカリバー)!≫」



 手数の面で不利。攻撃の面でも劣っている。

 守ってばかりでは戦闘は終わらず、何のために勇者と旅をしていたのかわからなくなってしまう。

 不利を少しでも補うため、宗八(そうはち)から教わった魔法聖剣が騎士剣パルジファルに宿った。


「【シールド……】」

 速度に慣れて来たマクラインが攻勢に転じる。

 一瞬で放たれる複数の剣線は決して軽くはなく、むしろ重い。

 だが、防げることは実証され速度に慣れた今、一つの剣線に的を絞り……。

「【バッシュ!】」

 甲高い音と共にウージーの肥大した腕が()ち上がる。


『重力減少』

 タイミング良く地精オーヴィスが重騎士のデメリットを消した。

 その瞬間、身軽となったマクラインが聖剣を振りかざし駆け出す。

「はああああああっ!」

 黄色く輝く剣がウージーへ迫る。

 その視線は狂気に侵されながらも生前の習性に従い、回避出来るだけの後退を実行した。

 しかし、振るわれた剣先から魔力刃が伸び、マクラインは当たるとほくそ笑んだ。


 が———。


「グギャハァッ!」

 ()ち上げた腕が戻って来て剣が弾かれる。

 剣士としての矜持か。身を捻るでもなく、防御姿勢を取るでもない。


 マクラインは意表をついて二度、ウージーの裏を攻めた。

 一度目は、重騎士らしからぬ速度による攻撃。

 二度目は、回避した上で斬り裂く魔力刃が伸びた事。

 その二度ともを本能が上回り、チャンスは巨剣腕が差し込まれた事ですべてが灰燼に帰したのだ。


「理不尽すぎだろっ!流石は元勇者のメンバーだよ、クソッ!」

 二の矢を潰され、普段は清廉潔白な重騎士マクラインが愚痴を口にしても仕方ないだろう。

『重力増大』

 攻守は再び交代し、ヒット&アウェイとマクラインの反撃が何度も繰り広げられる。


「流石に無尽蔵過ぎる……」

 閉鎖空間に二人きりで閉じ込められてから()()()瞬剣士ウージーは攻撃をし続けている。

 人間ならば一呼吸入れたいタイミングは何度もあった。

 それでも止まらず、めげず、執拗に攻撃を続ける動きを彼は続けている。


 実時間は然程(さほど)経っていないはずだ。

 だが、防ぐだけで状況を改善出来ていないマクラインからすれば、相当に足止めされている気持ちに急かされる。

 重騎士マクラインも伊達に宗八(そうはち)の理不尽な訓練に参加していたわけではない。

 近しい速度での攻撃を体験出来ていた事が総じて、この息をもつかせない連撃を捌き切る下地を鍛えていた事で事無きを得ていた。


 木製の大盾は何度も……いや、戦闘が始まってから何百回と重い斬撃を受け止め無傷だ。

 合間に剣同士の打ち合いが発生するが逆に切り払われる始末で、ステータスと魔法聖剣で無理やり成立出来ている程に”剣術”に関しては悲しいほどに実力差があった。

「ん?」

 一人での戦闘力の無さに無力感を覚えたマクラインの視界に、気になる光りが映り始めた。


 それは、削り取られた自身の魔力光ではない。

 それは、武具が打ち合った火花ではない。

 それは……。


「何かの破片———?」


 その後、何度も流星の如く視界端で光は零れていった。

 戦闘中、常に光るわけでは無くトリガーとなる()()を見極めなければならないのだが、如何せん戦闘速度が早すぎてどの動きが光りに影響しているのかがわからない。

「オーヴィルはわかったか?」

 光明が見えないマクラインの問い掛けには焦りが混ざっていた。

『盾は関係なさそう』

 それに比べてオーヴィルは冷静さを保ち、細かな重力操作をしながらも観察を怠っていなかった。


『あ。わかったかも』

「どれだっ!?」

 まさに今、視界の端を光りが通り過ぎて行った。

『相手の左腕———。剣みたいなアレの破片だよ』

 マクラインはその説明を聞いても意味が分からなかった。

 何度も打ち合っている感触から、魔法聖剣を相手にしてもウージーの巨腕剣の硬度は同等だった。


 英雄ウージーは、獣人から強靭な肉体を持つ化け物へ変異して死亡。

 その死体に【破滅の葦(ヴィネアヴァール)】を魔王が感染させ、肉体強度は更に向上し黒い皮膜が鎧の役割と果たしている。

 つまり、あの巨腕剣は変異した際の()()であの強度と言う事だ。

 魔法聖剣があってやっと打ち合える剣の破片。防御力しか勝てていない盤面が真面目なマクラインからすれば考えられない状況を示していた。

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