†第16章† -58話-[勇者オーティスの顛末]
【新約:特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。】
【異世界と混ざった現実世界でデスゲームとスキルライフを満喫する!~原生林に飲み込まれたキャンプ場からお送りします~】
【地球消滅ENDで死んだ私は、神様の異世界救済枠に選ばれたので故人の為にも頑張って生きていきますっ‼】
・上記3作品も投稿し始めました。よろしくおねがいします。
一人玉座から降り前に出て来たオーティスが腰から剣を抜いた。
それは”黒”と呼ぶには、あまりに深すぎる”黎”。全てを飲み込むような印象を受ける剣だった。
「気になるか? 先代魔王が振るっていた”魔剣グラトニー”だ。効果は凄いが装備者にデメリットがあるのが玉に瑕だがなっ!」
オーティスは台詞終わりと同時にプルメリオに向け駆け出し剣を振り上げる。
だが、盾役であるマクラインがそれを許さず割り込み盾で受け止めた。
十分に体重の乗った重低音が部屋に響く中で、マクラインだけが違和感に気が付く。
「———力が抜ける!?」
様子見の為に受け続ける事を選択したマクラインへ尚も連撃を繰り出すオーティス。
その度に魔力が抜け、身体から力が消える感覚に襲われる。
「そうだ!この魔剣は”力”を吸収するっ!だから対策が面倒だったのを覚えているかっ!?エクス!」
逆にマクラインの防御力の高さを見抜いたオーティスが身体を回転させ盾ごと蹴りつけ、マクラインはその膂力に踏鞴を踏まされる。
その隙を突き差し込まれた魔剣を、今度はプルメリオが介入してエクスカリバーで受け止めた。
『オーティス……ッ!』
受け止められない衝撃ではない。
しかし、称号稼ぎをした勇者一行が余裕で勝てる威力ではないことが伺えた。
「ほう……。今の俺は異形化の所為でステータスが数倍に上がっているというのに、この一撃を剣で受け切るとは……」
異形化———。
魔王オーティスの鋭い眼力がPT全員を睨め付け観察する間に、勇者一行も魔王の言葉を反芻する。
魔王だけではない。背後で”王妃”の玉座があるであろう場所に鎮座する混合型魔物。
どちらも魔族領で出会った魔族とも、魔物とも見た目も大きさも強さも異なる。
「改めて聞きます!何故大魔王などと名乗りその様な姿になっているのですかっ!」
勇者プルメリオが再度叫ぶ。魔剣を受け止めているエクスカリバーも輝きを増し同意を示す。
オーティスはおかしい。
魔族と同じく頭には立派な角が生えていて、竜の様な尻尾を持ち、身体は人間よりも大柄となり、肌も光精エクスが知る頃に比べ褐色肌と変化している。
『オーティス!答えなさいっ!』
光精エクスが勇者の問いを援護し魔王を責めたてる言葉を発する。
ようやく、かつての相棒に視線を向けた魔王オーティスの瞳は絶望の色に染まっていた。
互いが剣を弾き距離を離す。
様子見していた仲間もマクラインとプルメリオの元へ集まり、魔王の言葉を待つ。
「……かつての勇者が黄昏教団の人族に利用され、化け物に変えられた。よくある物語だろう? 勇者よ」
破滅教の前身、黄昏教団の情報はいくつか勇者PTも把握していた。
おそらく現在は大規模な活動はしていないが、かつては世界を混乱に陥れる為に暗躍していた秘密結社。
この大魔王城の周囲に活動拠点跡があったと宗八からも聞いている。
「確かによく語られる不幸な物語です。では何故、仮にも勇者が破滅教の思惑に利用されたんですか?」
プルメリオの問い掛けに壇上のオーティスは構えすら解き、視線が混合型魔物に向けられる。
絶望の瞳にわずかながら暖かな視線を魔法使いミリエステだけが感じ取っていた。
「魔王討伐後、貴族の娘アリアを妻に娶り、俺は小さな領地の主となった」
魔王が語り始めたのは、エクスカリバーを神聖教国へ返納したあとの物語だ。
光精エクスは、その後眠りにつき彼の後世を把握していなかった。
「幸せだった。だが、各地で進んでいた黄昏教団の追い込みが影響してか、急進派がとある儀式を各地で行い始めたのだ」
仲間は話に聞き入っている。だが、勇者プルメリオだけが……。
色んな悲劇的な物語が想像される世界の出身者だけが、この話の顛末を察していた。
「……長く語るつもりは無い。小さな集落から始まった儀式が俺の仲間にも伸び、更に領地を離れていたわずかの隙に妻アリアも誘拐されてしまった……。結果、こうなってしまったわけだ」
オーティスの視線は混合型魔物から離れ、壇下から見上げる勇者一行を見下ろす。
両の手を広げ自分を示し、仲間の視線を混合型魔物から自分に誘導する彼の心をプルメリオは感じ取った。
「……その後ろの魔物がアリアさんですか?」
「そうだ」
複数の息を飲む音が聞こえた。
今の話から察するに———。黄昏教団の儀式により消えた勇者の仲間が生贄とされ、魔物となった。
そして、勇者と妻アリアもまた、儀式の生贄とされ今ここに至っている。
「そんな……なんて残酷なことを……」
ミリエステの声が震える。
壇上から見下ろす魔王の冷たい心は、当時どれほどに悲しみを抱えたのだろう。
想像するだけで涙が溢れた。マクライン、クライヴ、プーカも同じく状況を理解し思考が止まりかける……。
「———止まるな」
魔王の覇気のこもる声が届く。
「俺とアリアは永い眠りにつき、目覚めた時には魔王の称号を得ていた。人間オーティスとしての物語はすでに終わっている。だからこそ、魔王となった今!魔王オーティスとしての物語の役割が何なのかお前はもうわかっているだろう!悲劇などどこにでもあるのだ!構えろ勇者よっ!」
役割として。歯車として。死を願う魔王オーティスだが、無抵抗で死ぬつもりは無い様だ。
吹き下ろす殺気は、無念を含む重苦しいものだ。
それでも、勇者プルメリオと一行の両肩には世界の命運が絡んでいる事を忘れてはいない。
「勇者オーティスの無念を胸に刻み、魔王オーティスを世界の歯車から解放しますっ!」
構え直した剣エクスカリバーも勇者の心意気に同意を示し、輝きを強め最終決戦がいま始まろうとしていた。
・★★★★★評価
・感想
・いいね
読み終わり『続きが気になる』『面白かった』など思われましたらぜひ、応援いただけると執筆の励みになります。
よろしくお願いします。




