†第16章† -57話-[堕ちた英雄]
【新約:特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。】
【異世界と混ざった現実世界でデスゲームとスキルライフを満喫する!~原生林に飲み込まれたキャンプ場からお送りします~】
【地球消滅ENDで死んだ私は、神様の異世界救済枠に選ばれたので故人の為にも頑張って生きていきますっ‼】
・上記3作品も投稿し始めました。よろしくおねがいします。
義賊プーカが引き当てた静謐な小部屋に勇者PTは合流した。
戻るワープトラップはおろか、闇魔法での移動も制限された小部屋に存在するのは登り階段のみ。
覗き込み見上げれば———ボッと両端の壁に青い火が灯る。
〔魔王の部屋に辿り着いた?〕
「おそらくですけど……。一旦戻ることも出来そうに無いのでこのまま挑む事になりそうです」
勇者プルメリオの通話先は水無月宗八だった。
色々なお膳立てをしてもらった点と、各国に連絡手段を持つ立場を考えひとまず報告することにしたのだ。
〔決戦を前に勇者様はどんな気分だ?〕
異世界人同士、宗八の冗談交じりの問い掛けにプルメリオは応える。
勇者に死を齎したのは、滅消のマティアスの一撃が唯一の事例だった。
勇者PTとしては珍しく、蘇生が出来る聖職者が一行に同行していない事も安全を優先した立ち回りを意識させていた。
上階から吹き荒ぶ殺気が階段から感じられる。
重苦しい殺気だ。しかし……。
「緊張はしています。でも……、魔神族と戦った時ほどじゃない……かな?」
揺蕩う唄から宗八が鼻で笑う声が聞こえた。
馬鹿にされたわけでは無い。当然だろうという意思表示だ。
「で、でもダンジョンのランクは10以上でしたよ? 鍛えてもらったステータスじゃなかったら、正直進むのにどれだけ苦労した事か……」
ダンジョンランクは10でLev.100推奨となっている。ここはおそらく12はある。
そのレベルの雑魚敵がわんさか出て来るうえに、挟み撃ちやトラップ階層など、直面すれば本当に嫌らしいダンジョンであったが、プルメリオの言う通り高ステータスのおかげで慣れれば苦労はなかったのだ。
〔んなもん、瘴気モンスターを相手にするならその雑魚が数百万同時に襲来する予定なんだぞ。たかがダンジョンという閉鎖空間で十を相手する程度でビビるような鍛え方はしてないはずだけどなぁ〕
今度は煽るような言い回しをする宗八に感謝半分、振り回された怒り半分で言葉を失くす。
大魔王を倒せば、勇者プルメリオは用いた召喚陣通りに元の世界に帰還させられてしまうかもしれない。
その後に控える破滅侵略戦争に参戦出来ない可能性が、脳裏を過ぎる……。
〔……いざとなれば〕
その心情を察した宗八が語り掛ける。
〔……元の世界にゲートを繋げてお前を連れ戻してやる。勇者としての仕事はお前にしか出来ないんだ。後の事は任せて潰して来い〕
いつの間にか後方腕組兄貴分となった宗八の送り出しに、プルメリオは自身の内心が軽くなるのを感じ取った。
とはいえ、亀裂が発生するほど隣接した魔神族の世界とは異なり、おそらく自分達の世界は遥か遠いだろう事は容易に想像出来た。
彼の言葉が支えになるのは確かだが……。
無意識に彼にゲートを刻まれた背を意識する。
「絶対ですからね———。俺だけ仲間はずれなんてお断りですよ?」
揺蕩う唄越しの宗八は、今度こそ笑い声をあげた。
〔ははははっ!光精霊使いは貴重だからな。メリオこそ、お前も段取りに組み込んでんだ。逃がさねぇから覚悟しておけよ〕
「あはは、はい!よろしくお願いしますね。それでは!」
宗八の声は仲間達には聞こえていない。
しかし、プルメリオの明るい声から良い会話を交わせたのだろうと、仲間達は魔王戦を前に安堵した。
通話を切ったプルメリオに仲間達が集う。
「なんだって?」
重騎士マクラインが話しかけた。
「元の世界には帰さないってさ。きっとこき使うつもりなんだろうな」
勇者の台詞に豪快に笑い声をあげたのは拳闘士クライヴだ。
「ふはははははっ!まぁ、せっかく異世界に来たんだから、役目を終えて帰っちまうのは勿体ないわなぁ!」
これでも4年近く勇者として旅をし続けてきたのだ。
それなりに異世界を堪能したつもりはあるけれど、やはり破滅侵略戦争に参戦したい想いが強かった。
「尊師を信じて、今は……」
「オーティスを倒そう」
魔法使いミリエステと義賊プーカがひとつの台詞を繋ぎプルメリオに伝える。
その言葉は真理だった。
まずは役目を。その後のことは大魔王を倒して考えれば良い。
宗八も後は任せろと言っていたのだ。その言葉を信じて今は……。
「皆。———行こうか」
* * * * *
仄暗い階段を照らす両壁の青い焔。
その光量は少なく、カーペットの敷かれた階段を上がっていく度に———ボッと両端の壁に青い火が灯る。
本来なら反響する音が緊張感を煽る場面だろう。
だが、上等なカーペットが靴音を吸収する為、鎧や服の擦れる音だけが異様に響く中確実に段を重ねていく。
「おかしい……」
すでに五十段は登っただろう。上がれば青い灯が付く。
それに変わりは無いが、見えている上階への出口が近づいていないのだ。
振り返った下階へのルートは闇に支配され入口は見て取れない。
「う~ん、こうかな?」
鞘から抜いたエクスカリバーがプルメリオの意思を汲み取り剣身に光が宿る。
目の前の闇へ振り抜くと、光の刃が帳を斬り裂き正しい階段が姿を現した。上階の大扉も見えている。
両壁の灯りも全て灯っていた。
「あの先に……」
数段上がると、目の前にそびえる漆黒の大扉が出迎えた。
「俺達が開くか」
「ですね」
拳闘士クライヴと重騎士マクラインが大扉の左右に陣取り、扉を開いていく。
重厚で頑丈な扉であると良く分かる音を響かせながら、開いた先には広い謁見の間が広がっていた。
一番奥には玉座が二つあり、一人は人型。もう一人は巨大な混成型の魔物が鎮座している。
他には魔物も魔族も見受けられない部屋を、勇者プルメリオを先頭に歩き出す。
残り四人も後に続き、一行は待ち受ける二人の顔が確認出来るほどに近づいてから足を止めた。
「———よく来た勇者よ。俺が魔王の中の魔王。大魔王オーティスである」
人型の魔族が口を開いた。
筋肉質の身体は盛り上がり、身長は三メートルに届くのではないだろうか。
八百年前の英雄は未だ若々しく見え、当時から刻が止まっていたかの様に感じられる。
「———オーティス。貴方が先代の勇者と聞いています。何故、立場を変え大魔王なんて名乗っているのですか?」
勇者プルメリオの愚直な質問に、オーティスは悲しい笑みを浮かべ、嗤った。
まるで過去の自分を嘲るように。プルメリオにかつての自分を投影して憎しみの宿る瞳がプルメリオを刺す。
「ふっ……若いな。だが、眩しい程のその青臭さが今はたまらなく憎くて仕方がない。多くを語る必要は無いだろう。俺達は———魔王と———勇者なのだからなっ!」
玉座から立ち上がったオーティスは、目測通り体躯の良さもあり威圧感が凄まじかった。
殺気と重苦しいプレッシャーを放つオーティスの隣で、異形は微動だにしない。
こういう場合変則的な戦闘になる事が多い為、勇者一行は気を引き締め各々武器を手にした。
「さあ!今代の勇者とその仲間達よ!今こそ貴様らの力を見せる時だっ!掛かって来るが良いっ!」
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