†第16章† -49話-[当主ムネシゲ=ニカイドウ]
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【地球消滅ENDで死んだ私は、神様の異世界救済枠に選ばれたので故人の為にも頑張って生きていきますっ‼】
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到着後ティータイムで休憩を挟んだあとは、呼び出されるまでの間、アルカンシェは城下町へと観光に出掛けていた。
日本で言えば江戸に近い街並みで平屋が圧倒的に多い。
二階建ての建物のほとんどは宿であったり食事処であった。
街を歩く人々も弓使いトワインが装備しているような和装しか居らず、腰に刀と呼ばれる反った剣を帯刀している者も居た。
「アルシェ様、あちらでお米が売られているようです」
「ホントッ!?」
実のところ、リクオウの街並みを楽しみたいという事とは別にアルカンシェには目的があった。
それが”米”の入手だった。
メリーが指差す先へ視線を移すと、マリエルが手を振ってアピールしている姿が視界に映る。
一応だが、大陸にも米自体はある。
しかし、それは家畜の飼料の為であり、栽培方法も宗八が知る水稲ではなく陸稲であったので味も違う。
そこでリクオウに上陸予定がついたアルカンシェに宗八が探して欲しいとお願いしていたのだった。
「姫様。この米は隊長が言っていた”水を張った田んぼ”で収穫されたそうです」
マリエルの下へ辿り着くと、彼女から軽い説明を受けた。
視線を店主に向けると珍しい物を見たような表情で瞬きを繰り返している。
「驚いた……。そっちのお嬢ちゃんをべっぴんさんだと褒めたばかりだが、アンタの方がべらぼうにべっぴんさんだぁ……」
「お褒め頂きありがとう。でも、店主。商売人なら商品の説明をお願いできるかしら?」
城の姫様方とは装いの違うアルカンシェは、顔つきも瞳の色も違う事で街中でずいぶんと人目を引いて来た。
今までは護衛も居る事で遠巻きにされてきたので、初めて異国の者からの誉め言葉を聞いたアルカンシェだったが、今は米に意識を奪われ軽く往なした。
「おぉ……すまねぇな。左から一般的な弥六、目黒、白早稲。こっちは珍しい白目米、穂増という品種だ。当然珍しい方が仕入れも大変だからな、どうしても値が張っちまうが」
店主の説明を受けながら名を呼ばれた米を真剣な表情で見つめる。
アルカンシェの周りでマリエル達も興味本位で覗き込んでいた。
「……購入出来る量に制限はありますか?」
真剣な表情の美人に見つめられ店主は年甲斐も無く照れて視線を逸らす。
「そうだなぁ……。購入する時は徒歩で行き帰りをするから、家族で買うにしても一週間分だったりの量が多い。正直、量を制限するほどの大量買いをされたことは無いんだ……。ちなみにどの程度欲しいんだい?」
照れていた店主だったが、目の前の美人が太客と気付いて急激に冷静になって回答する。
脳内では、算盤が勢いよく弾かれようとしていた。
「とりあえず、一年分ずついただこうかと考えています」
アルカンシェの言葉に店主は所属する商会に問い合わせが必要だと判断する。
この場で売られているものを全部売れば希望には足るだろう。
しかし、今日米を求めて来た客に売れなくなる為、この場では売れないとすぐに計算する。
「それでは、明日改めてお越しいただけないでしょうか。それまでの間に準備しておきます。希望であれば送り届けも致します」
稀に見る異邦人の客であり、一年分という異常な量を購入希望ともなれば、今回限りの可能性が高い。
本来行わない配達サービスをしてでも売っておきたいと考えた店主の言葉は、いつの間には丁寧になっていた。
「では、配達はムツ城にある宮城にお願いします。支払いは今でも良いですか?」
宮城に滞在する異邦人ともなれば、立場は当然自分達よりも身分は高い。
謹んで平に頭を垂れ、なるべく丁寧に対応を心がける店主。
アルカンシェが見せた冒険者カードに店主は頷く。
「かしこまりました。ここ数年でギルドの支払いシステムもリクオウに広まっていますから、もちろん当店でも対応しております」
カード決済を済ませたアルカンシェ達は店を後にした。
空はすでに夕暮れに差し掛かっていた為、今日は宮城に戻り呼び出しに備えることにする。
「———お待たせいたしました。御当主様がご夕飯に誘われておりますが如何致しますか?」
部屋を訪ねて来た女中の言葉にアルカンシェは肯定で返す。
「喜んで、ご一緒させていただきます」
ようやく、リクオウ当主との対面が叶う。
アルカンシェは気付かれない様に気合いを入れ直し、女中の案内に従い廊下を軋ませ進んだ。
* * * * *
通された部屋には当主である、ムネシゲ=ニカイドウが小上がりに座り待っていた。
他にもマサオミ=ニカイドウ一家が並び座っている。
謁見方式にそれほど違いはない。ただ、地べたに座る文化の違いが異邦人には辛い所のはずだった。
「お初にお目に掛かります。大陸の国、アスペラルダのアルカンシェ=シヴァ=アスペラルダと申します」
異邦人にしては綺麗な正座と挨拶にムネシゲは舌を巻いた。
さり気無くマサオミへ視線を送るが、無反応。つまり入れ知恵したわけではないらしい。
「頭を上げて欲しい。丁寧な名乗りに感謝する。私はムネシゲ=ニカイドウ。マサオミの兄にしてリクオウの支配者である」
許可を出されたアルカンシェは頭を上げ、まっすぐにムネシゲを見据える。
その瞳からアルカンシェという少女の器を感じ取ったムネシゲの密かに冷や汗が流す。
自身の家臣も、部屋の端に並んで座らされている彼女の近衛に対し何かを感じ取っているのか、部屋の緊張感が一気に高まっている。
「まずは、末の弟の顔を再び見る機会を与えてくれた事に感謝しよう。そのうえで、マサオミから持ち寄りたい話があるとも聞いているが……。まぁそれは食事をしながらとしようか」
ムネシゲが合図を出すと、待ってましたとばかりに廊下に人の気配が増大した。
一気に雪崩れ込んで来た女中の手により、当主の間が宴会場へと変貌する。
アルカンシェは女中に案内されるがままにムネシゲの隣に座らされ、目の前には豪華な御膳が置かれる。
「御当主殿、奥方はご一緒に食事を取られないのでしょうか?」
賑わいを見せ始めた小上がりの下の喧騒の中でもアルカンシェの質問はしっかりムネシゲの耳に届いた。
振り返り、少し寂し気な表情を見せたムネシゲは、事情を説明する。
「我が国は、恥ずかしながら男尊女卑の習わしがまだ残っているのですよ。重鎮の中にはまだまだ引退しそうにない老人が多数おりますので、妻には妻の仕事に集中してもらっています」
つまり、この宴会に参加する権利すら無いということなのだろう。
しかし、自分は女性でありながら小上がりの当主の隣に座らされている……。
おそらく異邦人にまで男尊女卑を押し付けるつもりは無いと言う事か……、とアルカンシェは勝手に解釈し不躾な会話を止めた。
アルカンシェの部下たちにも食事は振舞われ、タルテューフォと青竜が物凄い勢いでお代わりする様がリクオウの人々は気に入ったのか、その様子を酒の肴に勝手に盛り上がっていく。
近衛らしく楽しみつつも仲間が笑っている様子を眺め、この小上がりからの景色をアルカンシェは密かに楽しみながら食事についての質問をムネシゲや女中に繰り返していた。
* * * * *
「宴もたけなわだが、完全に酒で思考が出来なくなる前に大陸の客人からの話を聞こう。皆、静かにせぇ!」
ムネシゲの手から決して大きくはない拍手が鳴らされた直後に家臣たちはシンと静まり返った。
全員が傾聴する中で宣言された言葉に、静々と各々の席に戻っていく。
こちらも視線で仲間たちに指示を出す。
マリエルは青竜の、メリーがタルテューフォの手綱を握り、それぞれの豪快なお代わり合戦を止めさせた。
リッカにも視線を送り始まりを告げる。
「さて、アスペラルダ殿下。何を成しに我らが閉ざされし国へ参られた?」
当主としての覇気を持った質問にアルカンシェは真正面から視線をぶつけ挑む。
「この星を護るついでにリッカの故郷も救おうかと思い参りました」
ムネシゲはアルカンシェの瞳から嘘を感じなかった。
だが、星を護る。リクオウを救うの意味がわからない。
「具体的な説明を願えるだろうか?」
その返しに笑みを浮かべたアルカンシェは宴会場の仲間に声を掛ける。
「わかりました。メリー、クロエ」
いつものように準備されていた資料が、ムネシゲと家臣たちの手に渡される。
何度も活躍する資料だが、集まる情報が更新される度にこの資料も後進され挿絵の精度も上がって来ている。
「私達の戦いの記録がその資料に詰まっています。いましばらく、そちらに目を通してください。クロエは禍津屍の死骸を外に出して置いて」
『かしこまりました』
宴会場を闇精クロエが出てから誰かの悲鳴が外から響いた。
驚くリクオウ側の家臣に比べ、アスペラルダは泰然としたものだった。
原因が分かっているから当然なのだが、アルカンシェの様子にムネシゲも状況を察して家臣に目配せして資料に意識をもどさせる。
一番初めに資料から顔を上げたのは意外にもマサオミだった。
そのすぐ後に顔を上げたのは当主ムネシゲだ。二人とも兄弟らしく目元を揉む姿はとても似ていた。
読み終わった人が次々と現れ、全員が資料に目を通し終わったのを確認した当主ムネシゲの回答は以下だった。
「今 日 の 決 断 は 無 理 だ !」
頷く家臣一同。
「酒が入っていなくとも難解な部分が多すぎる。そもそも我らは魔法を好んで使わないのだ。魔道具にしてもそれは同じ事。故にしばし時間を頂きたい。そのうえでリッカをアドバイザーとして、その間借りたいのだが如何だろうか?」
アルカンシェも遊んでばかりも居られない。
だが、こちらには≪ゲート≫という裏技があるので、彼らが検討をする時間を与える余裕は十分にあった。
リッカも故郷でのんびり過ごさせる事も出来るのでアルカンシェは笑顔を浮かべ二つ返事で答える。
「わかりました。代わりにその間、国を巡る許可を頂けますでしょうか?」
巡るとは言っても遠くまで行くことは出来ないだろうと考え、ムネシゲも二つ返事で返す。
「特別な割符を手配しよう。一応旅程は女中に知らせておいてくれるとこちらも助かる」
アルカンシェの脳内では、青竜に乗って出来る限り広範囲の異変を見つける予定が組まれていた。
一方ムネシゲの脳内では、猪獅子が引く馬車での旅行が描かれていた。
考えがすれ違ってはいても話はまとまる。
その日は宴会が再開され、リクオウの夜は更けていった……。
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