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小説の中に転生したので、殺される運命の大公様を救います  作者: 森前りお
第一章

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29話 剣舞⑥ オーディション

 一週間のブリジット先生とエレノアの二人きりでの授業が終わり、第十五ホールに、イーサンとジルベールが合流した。

 エレノアもブリジット先生のお手本がなくとも、一人で踊ることはできるようになっていた。

 だが、これから始まるのは三人での剣舞。

 これからが本題だ。


 「では、曲を流しての通し練習を始めます」


 「はい」


 ブリジット先生は、エレノア、イーサン、ジルベールが剣へと手を伸ばしたことを確認すると、蓄音機から音楽を流し始めた。

 音楽が流れ、三人はゆっくりと鞘から剣を取り出していく。

 エレノアは双剣を構え、イーサンとジルベールの剣に、添わせていく。

 当たらないようにと、細心の注意を払って動かしていく。

 ここで、当たったことで生じる金属音がなっては駄目だ。

 剣舞を踊る中で、男女の剣が触れ合うことはない。


 その場で三人が剣を構えながら円上に一周していく。

 だが、その際に、エレノアとジルベールの剣、イーサンとジルベール剣が触れ、金属音が第十五ホールに触れ合う。

 ブリジット先生は音楽を止めることなく、そのまま剣舞は続行していく。

 三人は後ろを向いて三角形の形のまま剣をゆっくりと振るっていく。

 三人は向き合い、エレノアが踊るように剣を振り、その周りをイーサンとジルベールが剣を振るっていく。

 その時、踊っている三人は息が合っていないことを、薄々感じ取っていた。

 剣を三人で交じらわせる瞬間も、三人のタイミングは合わなかった。

 そして、エレノアが、イーサンとジルベールと向き合いながら剣を振り合いながら舞っていく。

 三人が剣を添わせ、ゆっくりと剣に鉾をおさめて曲は終了した。


 「初めての合わせで、ここまでできるなんてすごいわ」


 ブリジット先生の講評は、厳しいものではなかった。

 むしろ、褒められていた。


 「まずは、最初の剣を添わせながら一周するところね。あそこは全員で歩くペースを合わせることが大事。一番歩くのが遅い人に合わせるのが、セオリーよ。だから、ジルベールさんとイーサンさんはエレノアさんのペースに合わせるように。やってみましょう。エレノアさんは普段通りにね」


 「はい」


 返事をした三人は、曲を流さないまま、剣を添わせて歩いて円上に一周する。

 一周目は、また剣が当たってしまったが、二回目、三回目、四回目と続けていくうちに、ジルベールとイーサンはエレノアの歩くペースを掴めてきたようだった。

 五回目で全員の歩くペースが一致し、綺麗に円を描いて一周することができた。


 すると、ブリジット先生が手を叩いた。

 

 「いい感じね。次はエレノアさんが中心になって、ジルベールさんとイーサンさんが、エレノアさんの周りで剣を振るって舞っている時のペースが合っていないところ。これは――」


 ブリジット先生が指摘をして、その実践を三人がしていく。

 そうして、何度も曲を流して、剣舞を舞っていく。


 「本当ですか?」


 ぼそりと零したエレノアの嘆きをブリジット先生が拾った。


 「よく出来てる方よ」


 ブリジット先生はいつも褒めてくれるが、他の男女剣舞がどのようなものなのかをエレノアは知らない。

 だから、その言葉を本当に信じて良いものか悩ましいところだ。


 「やるなら完璧にやりたいところだね」


 「私もそう思います」


 「ああ」


 「もしかして、三人とも、真ん中を飾る男女剣舞を踊りたいの!?」


 向上心の塊である三人の言動に、先生はおののいている。

 三人は顔を見合わせた。

 完璧にやりたいとは思っていたが、三年生は押しのけてまでやるという発想はなかったのだ。

 顔を見合わせた三人は頷いた。


 「はい」


 「そう。なら明日からはもっと気合いを入れてもらうわ。ヴァレリー先生には申し訳ないけど、絶対にあなた達をオーディションで一番の出来にしてみせるわよ!」


 そうして、キツイレッスンが始まった。

 些細なところをすべて指摘され、修正して踊っていく。

 動きの緩急、優雅さなど曖昧なものもそこには含まれたが、三人とも苦難しながらもそれらを乗り越えていった。

 


 そんな日が一週間続き、ついに、オーディションの日になった。

 第一ボールルームには、五組の男女剣舞のペアとエレノア、イーサン、ジルベールの三人剣舞の計13人が集まった。


 「それでは、一組ずつ、音楽を流しての通し練習を始めます。まず、一組目――」


 ヴァレリー先生が言った。

 三年生の男女剣舞のペアの人たちが次々と名前を呼ばれていく。

 そして、最後のペアが終わり、エレノアたちの出番となった。


 「では、次。エレノアさん。イーサンさん。ジルベールさん。よろしくお願いします」


 「はい」


 名前を呼ばれて返事をした三人は、用意された剣を腰にセットした。

 イーサン、ジルベールを顔を見合わせたエレノアは、二人の前にぐーの形を作った手を出した。

 三人はグータッチを交わすと、ボールルームの真ん中へと移動した。


 曲が始まり、三人が鉾から剣を取り出して剣舞が始まった。

 三人は息を合わせて剣舞を披露していく。

 すべての動きのタイミングが合い、綺麗な動きで次の動作へと移っていく。

 そして、三人は完璧な動きで剣舞を完遂した。

 

 「ありがとうございました」


 他のペア同様に、エレノア達にも拍手が送られた。

 ヴァレリー先生、ロニー先生、ブリジット先生の三人での話し合いがしばらく行われた。

 オーディションで決まった位置は、紙に書かれて13人全員に渡された。


 結果


 左端   メリッサ・ベル    コンスタン・アレー


 右端   セリーヌ・アイベラ  エリク・ルコール


 中央左  ソーニャ・マント   パスカル・スカーリー


 中央右  ジャネット・オーベル ラウル・カンスタン


 中央後方 エルザ・スイザン   マチアス・イスタ


 中央   エレノア・グルーシア イーサン・バンフィールド ジルベール・ラントレー



 三人は顔を合わせてハイタッチを交わした。


 「皆さん、素晴らしい剣舞でした。二週間でよくここまで形にしたと思います。中央の三人剣舞に対して、私たちの中で異論はありませんでした。私たちの披露した剣舞より、更に良いものができていたと思います。皆さん、これからは、中央で行う男女剣舞合同での授業となります。気を引き締めて行きましょう!」


 「はい!」

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