20話 剣士トーナメント
魔物討伐演習から帰還して四日間の休暇の後、特待生クラスでは、剣士トーナメントのための話し合いの場が設けられた。
剣士トーナメントというのは国王と王妃、王族に学院の成果を見せるために行われるものだ。
教養学部一般生徒と特待生。魔法学部一般生徒と特待生。騎士学部一般生徒と特待生。
教養学部は主に研究成果を。
魔法学部は魔法トーナメント。
騎士学部は剣士トーナメントを開催する。
これを総じて魔剣祭と呼ばれている。
だが、この魔剣祭では、特待生であっても剣士トーナメントに出場することはできない。
一日にすべての成果を国王に見せるのだから、時間がとても足りない。
出場できるのは特待生クラスでも一学年二人までだ。
二学年三学年となれば、出場人数も増えるがそこまで期待されていない一学年の出場人数は二人だ。
そして、今はその剣士トーナメントに出場する二人を選ぶ話し合いをするところだった。
「僕が出るよ」
一番最初に立候補したのはジルベールだった。
反論はなく、一人目の出場者はジルベールに決定した。
二人目の出場者は名乗り出ず、皆が期待の眼差しで見たのはイーサンだった。
だが、イーサンは名乗り出ず、ジルベールが手をあげた。
「僕はイーサンがもう一人の出場者になればいいと思う」
皆が納得して頷いた。
だが、それを物ともしないイーサンが表情も変えず言い切った。
「俺は出ない」
「なるほど。理由は?」
特待生クラスで騎士学部特待生であるイーサンの能力は皆認めている。
勝ちたいからこそ、イーサンが出るべきだと思っているのだ。
まともな理由がなくては皆納得しない。
「先生から達しがあった。俺が三年連続優勝しては、学校側の成果としてはつまらないものになる。だから俺が出るのは三年間で一度きりという話だ。俺は今回の優勝賞金はそこまでほしいとは思わない。だから、俺が出るのは二学年か三学年の時だけになる」
「なるほどね」
剣士トーナメントの優勝者には国王から国宝の品が授与される。
国王としても学院側としてもこの三年間優勝者が同じというのはつまらない。
そのため、イーサンという特例の男に枷をつけたのだ。
魔剣祭の目的は学院側の成果をあげるということだ。
学院側で育てたわけでもない、最初から最強のイーサンという男が表彰台に三年連続立てばその意味がない。
魔剣祭は二三学年にとって就職活動にも役に立っている。
二三学年の就職先のためにもイーサンの出場を一度のみにしたのは学院側の英断と言える。
納得したジルベールは今度はちらりと標的をリュカへと移した。
「ならば、三席のリュカがいいと思うが、リュはどう?」
「僕はいいですが、皆さんはどうですか?」
リュカはクラスの全員に意見を求めたが反対意見は出なかった。
首席がだめならこのクラスで三番目に強いリュカが出場するのは自然なことだったからだ。
こうして、剣士トーナメントに出場するのはジルベールとリュカに決まった。
剣士トーナメントは1ヶ月後と迫り、先生がジルベールとリュカに特別授業という名で彼らに稽古をつけていた。
剣士トーナメントの優勝賞金は姿を変えることのできるリング、通称姿替えリングに決まった。
一週間前ともなれば、闘技場に様々な人が出入りしているのが目立った。
段々と活気づいていく闘技場と比例して、訓練場でジルベールとリュカが二人の上級生である二三学年の先輩と戦っているのをエレノアはよく見かけた。
剣士トーナメント開催の日、エレノアたちは普段通り授業を受けていた。
残念ながら一学年の生徒は魔剣祭の時でも普通の授業だ。
二三学年は闘技場で楽しめるが、貴族たちも呼び寄せて大々的にやるこの魔剣祭で出番のほとんどない一学年に用意された席はなかった。
特待生クラスは先生の口からジルベールとリュカの剣士トーナメントの敗退を聞く羽目になった。
あまりにあっけない魔剣祭の終わりだ。
遠くで聞こえる楽団の音楽が表彰式をしているのだとエレノアに理解させた。
夏に差し掛かった日差しと共に暖かい風がエレノアの肌を撫でた。
すると、魔剣祭仕様の騎士服に身を包んだジルベールとリュカが特待生クラスに戻ってきた。
「お疲れ様!」
エレノアは二人にそう声をかけた。
すると、二人は大きなため息をついた。
「どうしたの?二人とも」
「散々です。初戦で負けました。その後はずっと雑用係を押し付けられましたし」
リュカがメガネをくいっと直してそう零す。
「僕は王族の席でずっと見てたからそんなことにはならなかったが、そっちはそうなっていたんだね」
ジルベールはそこまで疲れていないように見えた。
「優勝者はアルバン・ニストフ卿。流石の剣さばきだったね。初戦で優勝者と当たるのは、運がなかったけどね」
二人とも初戦で敗退したようだ。
だが、ジルベールはそこまで悔しがっているようには見えなかった。
「また来年ある」
そう言ったのは放課後にまだ残っていたイーサンだった。
ジルベールはイーサンの声を聞いて振り向いた。
「そうだね。来年またある。絶対に今度は優勝する」
ジルベールの意気込みをイーサンは聞いていなかったのか、何も返事をしなかった。




