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小説の中に転生したので、殺される運命の大公様を救います  作者: 森前りお
第一章

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17話 魔物討伐演習⑤ トロール戦

 魔物討伐演習二日目。

 段々と仲間意識が芽生えていった三人は朝食を取っていた。

 朝食を食べながら、イーサンから今日の予定を聞いていく。


 「今日は俺が弱らせたCランクの魔物を見繕う。その間、二人はこの場所で待機」


 イーサンが指したのは、配布された地図の赤線の場所だった。

 Dランク以下とCランクの魔物が出るとされる境界線だ。


 「俺がそこまで魔物を誘導する。まず言っておくが、明日のCランクの魔物と今日のCランクの魔物が同一だとは限らない。よく魔物についての資料を読み込んでおくように」


 「「分かった」」


 「では、食事は終わりだ。このまま境界線近くまで行く。二人はその場で待機。Cランクの魔物が発見されたら、一日目のテント地まで避難。Dランク以下の魔物であれば、その場で対処しろ」


 「「了解」」


 テントを片付け、戻ってくる時の目印に木にナイフでイーサンが傷をつけた。

 イーサンがエレノアとジルベールに目伏せをして、イーサンが先頭になり走り出す。

 昨日の走り込みのおかげで、身体強化魔法の使い方が上手くなったのか、体が軽い。

 そのまま、境界線近くへとたどり着いた。


 「俺はCランクの魔物を探してくる」


 「イーサンが帰ってこない場合はどうすればいい?」


 エレノアがそう聞くと、イーサンは静かに背中を向けた。


 「そんなことは起きない」


 そう言って、走り出してしまい、その姿はすぐに見えなくなってしまった。


 「心配するだけ無駄だよ。イーサンはこの学院で一番強いんだから」


 「先生よりも?」


 「愚問だね。近衛騎士団長と今は五分五分。成長したらもっと強くなるだろうね。だから、こんなひよっこの僕たちが心配する必要はないと思うよ」


 エレノアはイーサンの強さを理解していなかった。

 近衛騎士団長と勝負して五分五分なんて思いもしなかった。

 

 「昨日のこと、謝るよ。つい、激情してしまった。自らの事情と感情に流されて、王子として不覚だった。それに、僕もイーサンのことを理解していなかった。あの時、君が止めてくれなかったら、自分を抑えきれなていなかっただろうから。ありがとう」


 「お礼されるようなことはしてないよ」


 エレノアはその時、ジルベールとやっと本音で話せた気がした。

 柔和な笑みを浮かべ、厚い仮面を取り外すことがないジルベールの考えを読み取ろうとしても分からなかった。

 だけど、今この瞬間はその仮面を自らジルベールが取り外して、本音を出している気がした。

 だからこそ、昨日の激情の理由が知りたかった。


 「ジルベール殿下はサンドリーヌ殿下のことどう思ってるの?」


 エレノアはジルベールがあそこまで激情していたのを初めて見たのだ。

 その理由は、サンドリーヌにあり、そのジルベールの言いぶりは、まるでイーサンのサンドリーヌへの解放を願っているようなものだった。

 王位継承争いをしている兄妹が仲がいいのかはエレノアにはわかりかねる。

 だが、一つ言えるのは、今回のジルベールは、前にエレノアがジルベールと話した時に感じたサンドリーヌへの対抗心がまるで嘘のように感じるほど、兄妹を思っての言葉に聞こえた。


 ジルベールは、ふっと花が舞うように静かに笑った。


 「家族として好きだよ」


 悲しそうにジルベールは言う。

 そして、エレノアが口を開いて答えようとした瞬間、ジルベールの声が響いた。


 「右前方にホーンラビット接近!」


 エレノアはすぐに右前方へと向いて、ホーンラビットを討伐した。

 昨日の魔物討伐により、ホーンラビットの討伐もすんなり終わってしまった。

 二人は魔石を取り出すと、ホーンラビットの遺骸をマジックバッグに入れた。

 昨日の魔物討伐によってマジックバッグの容量の限界まで魔物を入れたので、エレノアのマジックバッグはもう入らなくなっている。


 「ジルベール殿下、私のマジックバッグもう容量がないです」


 「僕もだよ」


 ジルベールは両手を広げている。


 「焼くしかないね」


 食用の魔物でない魔物の遺骸をそのままにしておけば、その肉を魔物が食べて、進化することがある。

 それを防ぐために、持っていけない魔物は焼却するのが義務だ。

 魔法使いであれば、一瞬にして燃えきる火魔法を使うことがほとんどだ。


 「エレノア嬢の杖の魔法だと一瞬で燃えきるんじゃないか?」


 「やってみるよ」


 エレノアはホーンラビットを肉をすべて焼き切るイメージで魔法を行使する。

 ホーンラビットは一瞬にして骨まで黒く焼け焦げた。

 ジルベールは草木に火が燃え移らないように、水魔法で消化をした。

 じゅーっという音と共に煙がホーンラビットの残骸から出ている。

 二人はホーンラビットの骨を土へと埋めた。


 しばらく、魔物も来ず、暇な時間が続いていた頃、いきなり地響きのような音がこちらへと近づいてきてきた。

 その音は、エレノアとジルベールの元へ一直線へと近づいてきている。

 エレノアとジルベールは剣を構えて、臨戦態勢へと入る。

 二人は言葉を交わしていなくても、これがイーサンの連れてきたCランクの魔物なのだと理解していたからだ。

 イーサンの姿が見えるとその後ろに巨体が見えてきた。

 オークかトロールか。

 その姿はまだ分からない。

 そして、姿が確認出来るほど近づいたところで、二人はその敵がトロールだと認識した。

 すると、いきなりイーサンの姿が一瞬にして消え、一瞬困惑を見せたトロールが、エレノアとジルベールの姿を確認すると一目散にこちらへと向かってきた。

 ところどころイーサンが付けただろうと予想できるトロールの傷跡からだらんと緑色の血が出ている。

 左腕はだらんと力が入っていないように見える。

 左肩に受けた深い傷のせいで、左腕は動かせないのだろう。

 

 「私は右から攻める」


 「じゃあ、僕は左からだな」


 二人は一気にその場で踏み込むとトロールの方へと走り込んだ。

 一度目に振りかざした剣はトロールの持つこん棒によって簡単に阻止される。

 だが、左腕がほとんど動かないジルベール側では、ジルベールはトロールの足を狙い、立てなくなったトロールが地面に膝をついた。

 だが、こん棒を持っていたトロールが勢いよく右手でジルベールの腹へとこん棒を振りかざした。

 一瞬でジルベールは吹き飛ばされて、木の幹へとぶつかった。

 そして、そのトロールはこん棒をエレノアの方へと振りかざしてきた。

 剣で受け止めたら今のエレノアでは完全に力負けする。

 そう感じ取ったエレノアは瞬時にその攻撃を避けたが、逃げ切れず、左足に激しい痛みが走った。


 もう一度足を狙わせまいとこん棒を何度も振り回すトロールにエレノアは近づけなかった。

 だが、エレノアは瞬時に後方でトロールに吹き飛ばされたジルベールが復帰してこちらへと走り出していることに気づいた。

 エレノアはトロールの意識をジルベールに割かないために、わざとこん棒の攻撃を受け止めた。

 身体強化魔法で限界まで強化した肉体でもその攻撃を受け止めるのは辛い。

 ジルベールは剣を杖代わりに魔法を行使した。

 水の魔法を撃ち、頭を水で覆われ、空気を吸えなくなったトロールがその水を取り除こうとこん棒を下ろして顔をかいている。

 その瞬間に、エレノアはトロールの右腕を切り落とし、ジルベールが後ろからトロールの頭を剣で刈り取った。


 二人はトロールの頭が地面へと落ちたことを確認するとその場で倒れ込んだ。

 その瞬間、どこからともなくイーサンが姿を見せる。

 息切れしている二人を見て、イーサンは上から目線で言った。


 「よくやった」

 

 その上から目線に、エレノアとジルベールはほんの少しむかついた。

 だが、同時に達成感も感じていた。

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