13話 魔物討伐演習① グループ結成
ついに、魔物討伐演習の日がやってきた。
特待生クラス初めての魔物討伐ということもあり、皆少し浮足立っているように見える。
「今日から3日間の魔物討伐演習が始まる。皆、支給した腕輪を絶対に外さないように。その腕輪は生徒が危機に瀕した時、その場に結界を張り、腕輪が教師へと救難信号を出すという魔道具だ。何があっても絶対に取らないように」
先生の注意と共に、皆気を引き締めた。
そして、先生が全員が腕輪を装着したのを確認すると3日間の魔物討伐演習のための荷物が一人ひとりに配られた。
「今回の魔物討伐演習は教師が付き添うことはない。生徒だけでの演習とはなる。皆は三人一組のグループを作るように。俺的には戦力がいい感じにバラけてくれるとありがたいが、特待生クラスの中で下位の成績である者だけのグループでも魔物討伐演習が成功するだろうと踏んでいる。ただ、ちょっとばかし苦労するだけの話だ。やろうと思えばやれる。じゃあ、皆三人一組のグループを組んでくれ」
先生がぱんと終わりの合図で手を叩くと皆が各々周りと話し合っている中、エレノアとジルベールはまっすぐイーサンの元へと向かっていた。
イーサンは腕を組んだまま、エレノアとジルベールを一度見した。
「イーサン様、私たちと組みませんか?」
「私たちというのは、そこのジルベール殿下も入っているということか?」
「ああ、そうだよ」
柔和な笑みで肯定したジルベールのことをイーサンは無表情のまま見ていた。
そして、先生の方へとイーサンが目を向けた。
「先ほどの話を聞いていなかったのか?戦力はバラけた方がいいと」
「僕の方こそ聞くね。先生はお願いこそしたが、強制はしていない。つまり、成績上位の生徒が二人集まったところで、演習の成功の割合が増えるだけのこと」
無言で相手を見つめ合うイーサンとジルベールが一触即発するのではないかと、エレノアは不安になってきていた。
そんな中、特待生クラスの生徒たちは段々と三人一組のグループを作っていった。
いつの間にか、エレノアたち以外の生徒が全員組み終わっている。
そして、そんなエレノアたちを心配した先生がこちらへと歩いてきた。
「三人はもう組んだのか?組んでなくても残ったのがお前らだけだから必然的に組むことになるが大丈夫か?」
返事をしないイーサンとジルベールに代わってエレノアが代弁をする。
「はい。もちろんです」
イーサンが拒否しても残ったのがこの三人だけなのだから嫌でも組んでもらうしかない。
エレノアの今回の目的を果たすためにも。
「そうか。じゃあ、エレノアたちはGグループだ」
先生はGと書かれたワッペンをエレノアへと渡す。
そして、先生は持っていた紙にGグループ、エレノア、ジルベール、イーサンと書き連ねた。
エレノアは三人一列に並んでいるFグループの横の一番前へと座る。
二番目はジルベール。
三番目はイーサン。
エレノアは、魔物討伐演習が始まる前だというのに、もうぎくしゃくしているこの空気で、魔物討伐演習を完遂することができるだろうかと、始まる前から不安になっていた。
他の生徒も明らかに異質なGグループをちらちらと見るほど気になっているようだ。
「これからリーダー決めに入る。考える時間は五分だ」
エレノアは早速危機に瀕していた。
話し合いなどできる空気ではなかったからだ。
半ば強制的にグループにしたイーサンが話をするはずもない。
そんな中、ジルベールが口を開いた。
「リーダーはエレノア嬢がいいと思うんだけど、どうかな?」
「‥‥」
イーサンの方へとジルベールは話しかけたのだと思うが、イーサンの返事はなかった。
ジルベールは何も言わずにエレノアの方へと腰を曲げて振り返った。
「どうかな、エレノア嬢」
正直言って、ジルベールの考えにエレノアは賛成だった。
どう考えても、イーサンとジルベールがリーダーをやったとして、うまくいく気がしなかったからだ。
そうなれば、必然的に残るのはエレノアだけとなる。
エレノアにはこのグループをまとまるには少し、いや大分荷が重いが、エレノアがジルベールの提案に乗ったあの日からもうこうなるのは読めていたのかもしれない。
エレノアは腹をくくってジルベールのことを見た。
「イーサン様もいいと言うのなら、私がリーダーをやりますが」
「ああ」
それは肯定と受け取って良いのだろうかと不安になるエレノアだったが、「いや」と言っていないのだから肯定だろうと思うことにした。
「分かりました。では、私がリーダーを務めます」
「頑張ってね」
「‥‥」
エレノアは苦笑が出るのを抑えて、前へと振り返った。
どうやら、他のグループはまだリーダーを決めかねているようだ。
五分が経ち、全員のリーダー決めが終わった。
「じゃあ、リーダーは立つように」
そう言われてAからGまでもグループ全員がその場で立った。
先生は一人ひとり、リーダーが誰なのかを確認すると、紙へとAからGまでのリーダーの名前を書き連ねていった。
「座ってくれ。リーダーは自分のグループのアルファベッドが書かれたワッペンを胸元のポケットにつけるように」
先生の合図により、立っていたリーダー全員座ってワッペンを胸元のポケットにつけた。
「そのワッペンは発信機だ。教師はその発信機でそのグループがどこにいるかを指標している。腕輪は一人ひとりの体の影響により、救難信号を出す。だが、このワッペンはリーダーが、自ら、もしくは同じグループの仲間が危機が迫っていると感じた時に、そのワッペンに手のひらをかざすと教師への救難信号が届く。ただし、このワッペンには自らを守るような結界が作動しない。ただの発信機の魔道具だ。これで注意の説明は以上だな。後は魔物討伐演習で倒す魔物についてだ」
先生は手に持っている資料を読みながら生徒たちに説明をしていった。
「魔物討伐演習で倒す魔物はCランクの魔物だ。特待生クラスの生徒であれば、俺は生徒個人でDランクの魔物を倒せると踏んでいる。だから、そこまで怖気づかなくてもいい。Cランクの魔物でこの森に生息している魔物、オーク、マジックゴブリン、トロールだな。Dランク以下の魔物だとゴブリン、スライム、ホーンラビットぐらいだろうな。魔物討伐演習の例としては、肩慣らしにDランクの魔物を倒す。ということから始めた方がいいと思う。貴族であるお前らが魔物を倒したことは皆無。実際の魔物と戦って人と違うことに慣れた方がいい。まあ、そういうのが必要ない奴がいるがな」
ちらりと先生がGグループを見る。
例外だというのはイーサンだ。
彼は兵役により、魔物討伐ももう済ませてしまっているため、これが初めてというわけではない。
「Cランクの魔物は森の奥深くに行かないと出てこない。地図で言うと、この赤線の奥だ」
エレノアは魔物討伐演習のために作られたわかりやすい地図を見る。
そこには魔物の姿と主な生息地が書かれている。
魔物の特徴と弱点については別の紙に書かれており、始まる前に配られた資料はすべて読むようにと言われた生徒たちは、全員その情報を入れている。
「まず言っておくが、特待生でも油断してCランクの魔物に挑めば怪我をする。死ぬことはない。腕輪があるからな。魔物討伐演習に失敗したからと言ってなにかペナルティがあるわけではないが、補習があるとだけ言っておく。それじゃあ、準備はできたな。各々準備が出来た者から向かってくれ」
段々と三人一組のグループが森へと入っていく中、一番最後の出発だったのはGグループだった。
「じゃあ、行きましょうか」
「そうだね」
やっと声を出したエレノアを待っていたというように、イーサンとジルベールは立ち上がった。
「二人とも3日間よろしく頼むよ」
「はい」
「‥‥」
ぎこちない出発の会話は終わり、三人は森へと足を踏み入れた。




