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小説の中に転生したので、殺される運命の大公様を救います  作者: 森前りお
第一章

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12話 反逆

 「バンフィールド大公家では婚約者としては相応ではないというのはなぜですか?」


 貴族の位として申し分ないその立場でも相応ではないというのは理解できなかった。

 

 「まるで、君は姉君とイーサンが婚約することを後押ししているように見えるね。まあ、理由としては簡単だよ。彼ら一族が王家に対して反逆をしたからだよ」


 「え?」


 あまりの事実にエレノアは意図せず声を漏らした。


 「300年前、彼らは王家に対して反逆をした。彼ら一族がまた王家と交わるのを禁ず。これは王家へと伝えられている彼ら一族に対する禁止事項だ。歴史の授業では習わないけど、貴族なら周知の事実だよ。いや、今はそんなことはないのかな。今の様子だと君は知らなかったようだね。あっちももう終わっただろうし、僕たちも戻ろうか」


 「すみません、先に行ってもらえますか?」


 事実を飲み込めないエレノアの様子を見てジルベールは何も言わずにその場を立ち去った。


 バンフィールド大公家は元は王家の家系だ。

 バンフィールド大公家は、三百年前にラントレー王家の王女が大公となったことが始まりだった。

 それは貴族家系図を見た時にエレノアは理解している。

 そして、初代バンフィールド大公家には夫がいない。

 その時の王女がバンフィールド大公なのだ。

 つまり、その消された夫が反逆を企てた人物なのだろうか。

 こんなことをリュカやパトリシアに聞くわけにはいかない。


 エレノアはその足のまま図書館へと戻り、300年前のバンフィールド大公家に関わる資料を徹底的に調べた。

 その結果分かったことは何もなかった。

 反逆に対して何も資料は出てこなかった。

 ジルベールが嘘をついているのか。

 それとも反逆は実際に起きていたが、それが資料には残らなかった。

 こんなこと誰にも聞くことはできない。

 エレノアはこの事実を頭の奥底へとしまった。


 そんなものを奥底へはしまわせないとでも言うように姿を現したその御仁に、エレノアはなぜと声を零したくなった。


 「大方、その反逆のことを調べてなんにも出てこなかったというところかな」


 心を見透かされているようなそんな気すらする。


 「反逆は本当にあったのか?なかったのか?」


 ジルベールは一本ずつ指を立てていく。

 そして、二本目を下ろした。


 「本当にあったとも。ただし、その事実が口頭でのみ引き継がれているため、今は知る人もほとんどいないかも。さっき300年前のバンフィールド大公家と言って側近に聞いてみたのだけど、彼は知らなかった。どうやらもう忘れられたものなのかもしれない。それほどの醜聞だったのさ。反逆というのは」


 「なぜ、私にその事実を話したのですか」


 「僕が姉君とイーサンを婚約させたくないという理由を君にも理解してほしかったから、かな」


 「反逆者が王家の名に連ねるのはそれほど嫌だということですね」


 「そうだよ。姉君は楽観的なんだ。別に僕も彼が裏切るとは微塵も思っていないよ。ただ、禁止事項は守られなければいけない。だから、姉君が王位を手にすることだけは御免なんだ。彼女はどうせイーサンと結婚するために王座につくという目的だけで王座を目指しているからね。というわけで!君にはイーサンとの橋渡しをお願いするに当たって僕の目的を明かしておいたほうがいいかなと思った次第」


 「私のことを信じて――」


 「いいや、ここははっきり否定するよ。信じていない。未来への投資だよ」


 エレノアの言葉を遮ってジルベールが否定した。

 信じようとしたエレノアが馬鹿だった。

 ジルベールはやはりジルベールというよくわからない人間なのだ。


 「ジルベール殿下はイーサン様がサンドリーヌ殿下のこと好いていると思われますか?」


 ジルベールは、なぜ今そんなことをとぽかんとした顔をして顎を撫でた。

 そして、ためらいもなく答えた。


 「いいや、嫌っていると僕は思うね」


 「‥‥」


 ジルベールはため息をついた。


 「エレノア嬢、こんなことを言うのもなんだけど、多分君の求めている答えは僕ではなし得ない。だって、君はイーサンの答えでないと納得できないと思うから」


 自らも理解していなかった本心をジルベールに突かれたエレノアは自らの手を強く握った。

 ジルベールの言う通りだ。

 誰に聞いてもこの空虚な心は違うと何度も否定してくる。

 この否定を覆せるのはイーサンしかいなかった。


 「本人に聞いたところで答えるかどうかは知らないけどね」

 

 エレノアもその意見には同意見だった。

 エレノアはイーサンの個人的な感情をさらけ出すところを小説でも今も見たことがなかった。

 ただ、第二談話室のあの日以外は、だ。


 「ああ、そうだ」


 ジルベールはなにか思いついたように、ぽんっと左手の手のひらに握りこぶしにした右手で叩いた。


 「来週、魔物討伐演習があるじゃないか。どうやら三人一組で3日間の魔物討伐演習をやるようだよ。その三人一組、僕とエレノア嬢、イーサンの三人でやらないかい?」


 「なぜですか?」


 「イーサンも逃げることはできないだろうし、心のうちを聞くにはうってつけの場所だと思わないか?」


 にかりと笑ってそう言うジルベールの考えにエレノアも納得してしまった。


 「分かりました。魔物討伐演習一緒にやりましょう」

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