バールアタック! さーしーえー
先輩目線やで!(๑•̀ㅂ•́)و✧
── ぐ ぉ ぉ お お お ん ・・・ !!
『>>>……──DAMN……ッ!!』
"反射速度"を発動させ、ぼくは叫んだ。
後輩ちゃん達のスキを突くなら、
間違いなく、"出会い頭"だと、
ぼくでも──そう思うからだ。
思考を加速するまでの、一瞬で。
その男……いや、そのオス、と言うべきだろう。
そいつは、すぐ目の前まで。
──踏み込んで、来ていた。
(──ちっ……!!)
(──はやい……!!)
二人の後輩ちゃん達は、
見事に、初動を盗られた。
こいつを、人間だと思い込んでいた。
わずかな動揺が、遅れを生む。
その、長い金属の武器を持った、
人間に見えるオスは。
二人に、ぐあん、と。
殴りかかってきている・・・!!
〘#──横に、薙ぎ払われるぞ──……!!〙
お相手さんの、腕の筋肉の、ふくらみ。
まるで、大刀で斬りかかられてるかのような、
スローモーションの、プレッシャー。
普通のメンタルなら、
足がすくみ、心は止まる。
──でも……!
(──受けるッ!!)
(──避けない!!)
二人の主人公のスペックは、
既に、常識を粉砕している。
彼女たちは、行動した──。
──キギォオンン……!!
『>>>……!!』
『────防御形態です。』
スキル、"力量加圧"と、"鎖連"が発動し、
高速の世界で、ヨロイに編まれた筋肉が、
強制的に──少女たちの体を動かす。
経験値が変質した歯車と鎖が出現し、
二人の、腕の形を変形させ、強化する。
防御に特化した腕を、
ふたりは、盾のように構えた──。
(きやがれ……っ!)
(なめるなぁ……!)
──キ、ギぃイン……!
特筆すべき事がある。
ボスザルの攻撃を、受ける前。
彼女たちは、一歩、前へ出た。
後ろにいる小さな魔物を、
守るためだ。
抱きかかえていたモンキーは、
ふたりに手を離されたが、
まだ、地面に落ちていない。
防いで、受け止める気だ。
それを見て、
襲撃者の表情が、変わった──。
「────……」
攻撃は、止まらなかった。
減速も、しなかった。
時間が、引き伸ばされた刹那の中で。
その、巨大なバールは、振り抜かれる。
そして────。
カクゥン──!!
(( ──ッ……!? ))
攻撃の軌道だけが、
鮮やかに、変えられた。
『>>>しまった!!』
そう──。
袈裟斬りから、ホームランへ────。
────ガガ・キギィィイイイインンン!!!!!
「──キ」
「 ──おああっ……!」
「 ──くっ……!」
四本の腕で、受ける。
横薙ぎの攻撃に備えた防御は、
完全に打ち上げられ、
義賊と狂銀のブーツは、宙に浮く。
二人の少女は、軽すぎる。
ぶっ飛ばされるのは、道理────。
──ガコン──ぶぉおおおんん!!!
「やろぉ……!」
「むむっ……!」
『────ダメージ:0。
────後方に障害物:無。
────制動します。』
〘#……──やられたな。もう遅い〙
── ── ──キィィィィィイインン。
── ── ──ギィィィィィイインン。
「……っとと」
「……いまの」
『>>>ああ。ダメージを与えることが目的じゃない』
後輩ちゃん達が着地した時には、
すでに、6秒は経っていた。
ヤツが、同胞を宙で掴み、
距離をとるには、十分な時間──。
どこだ……、……いやがった。
ずいぶん離れた木の上に、
そいつは、立っていた。
──ギシ……。
「────……」
「ウッキぃ……Zzz」
彼は、自分の腕の中の、
お手手が物騒になった小猿の寝顔を、
うかがっている──。
はん……グースカ寝ていやがる。
しっかし──ありゃ、すごいな……。
ズボンを着て、頭にバンダナ。
尻尾の先の、巨大な、バール。
まるで、ヒトのような、細マッチョ──。
──後輩ちゃんが、ひと言。
「……あいつ、ホントにバールモンキーなの?」
『────間違いないようです。』
「……男の、人みたいだね」
〘------あんな進化も;起こっているのね……☪︎〙
森の中で。
ぼくらと、ボスザルは。
見つめ合う。
「──……」
「ウキャッ……Zzz」
「……」
「……」
────ザンッッ!
消えた。
〘#…………只者ではない。君たち、小猿を庇っただろう。瞬時に敵性が低いと判断し、殴り倒す攻撃から、後ろに吹き飛ばす攻撃に変えたのだ。腕だけではなく、バールに繋がった尾でも操っていた……。あれは相当な知性と技が無いと出来ぬ〙
『>>>……それだけじゃないと思います。あいつ、こっち側の防御の速さを見て、ある程度の実力、わかってたと思います。こっちが格上かもしれないから……確実に逃げきるために、後ろに木のない方向を狙って、思いっきり距離、稼がれたんですよ……』
「これさぁ……。うまくやられた、ってことよね?」
「……おサルさん、ちょっとムカつく」
置いてきぼり食らった後輩ちゃん達。
先生が、面白そうに言う。
〘#……くくく。君たちは、スペック的には彼より、圧倒的に強いだろう。だが……戦士としての駆け引きは、今日は完敗もよい所だな?〙
「むむっ……!」
「せ、戦士じゃないもーん!」
はっ……わずか、一撃だけで、
力量を計られ、仲間を取り返されてしまった。
すんごいサルが居たもんだね。
『────仲間を:迎えに来たのでしょうか。』
『>>>はぁー。ま、そーだろーねぇー……』
さて、それはそれとして。
非常に重要な問題がある。
「でさぁ……やっぱり、そう思う?」
後輩ちゃんも、気づいたみたいだ。
「あの……スカしたボスザルの、ズボンのポケットにさぁ……。思いっきり薬草、入ってたよね?」
「えっ……!!」
いいね、よく見てる。
そして。
バールモンキーは、群れる魔物だ──。
『────私は:その予測を支持します。』
〘------ひぇ〜〜☪︎.*・゜ ややこしそうのん〜〜☪︎.*・゜〙
「アンティ、じゃあ……アイツの群れが?」
「うん……たぶん、例の盗賊団?」
静かになった森を、
ぼくらは、後にした。
さる去る(((;゜Д゜)))










