表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
767/1216

ばけばけ☆アイノス しゃーしーえー

割と挿し絵祭りかもしれません(笑)




 ──ちゃぽん。

 


「ふぅ……」



 柄にもなく、艶のある溜め息が出ます。

 どうにも……警戒心が麻痺してしまいます。

 体の傷が恐らく全て消え、

 贅沢にも、湯に浸かっているからでしょうか。


 私たちのような、

 犯罪(まが)いの稼ぎ方をするクランが、

 このような豪華な湯浴みをする事など……、

 まず……夢物語のようなことです。


 どの宿屋も……私たちなど泊めはしない。

 私たちの鎧は、悪目立ちが過ぎます……。

 いつもは野外で見張りを立て、

 身体を拭く程度。


 ですが、今は。

 6人同時に、ちゃんと湯に浸かる。

 ……本当に久しぶりの事です。




「……──」



 ──ちゃぽん。



 私がヘマをして左目を失ったのは、

 もう、五年前になります。

 傷の無くなった、手のひらを見て。



「両目とは……こういう、感じだったわね……」



 ──たぽぽぽ……。



 湯をすくう両手は、先ほどまでと、

 まったく違うように見えました。

 ……不思議な感覚。


 なので。

 隣の客人にも、

 冷静に対処できたと思います。



『 ニョロリン 』


「……」



 もちろん他の5人も、すぐに気づきます。

 私は──" 待て "の合図をしました。

 よもや……、一緒に湯に()かってこようとは……。



『 ニョロニョロ。ニョロニョロニョロ── 』



 耳袋つきの緑の帽子を被ったゴーストが、

 湯に()かりながら、

 いっしょう懸命、何かを描いています……。


 ううむ……間違いなく、

 コイツが、"おえかきゴースト"でしょう……。


 メーチとケーファが特に慌てていますが、

 攻撃の意思は無いようです。

 今は鎧が無いのですよ……。

 ほら……早く湯に戻りなさい。



『 ニョロニョロ〜〜♪ 』



 しかし……。

 "おえかきゴースト"とは、

 よく言ったものね……。


 不気味で不衛生な魔物を想像していたのですが、

 現れたのは、茹で卵のようなプルプル肌の、

 子供向けの絵本に出てくる、

 実に絵に描いたような"お化けさん"です。


 それは、マイ・スケッチブックですか……?

 どうやら絵を(たしな)むようですね……。



 ──バチャバチャバチャ──!!!


挿絵(By みてみん)

『 がががるるるんんん──っ!!! 』

『 ニョ、ニョロリィィィ──……!?!? 』


 ──バチャバチャバチャバチャチャ──!!!



 "ガルン"と呼ばれていた小さな魔物が、

 湯面を浮くように泳いできました。

 怒っているようです。

 ゴーストに、しっちゃかめっちゃか、

 お湯をかけ始めました。


 ゴーストは濡れないように、必死に、

 スケッチブックを(かば)っています。

 まぁ、死んではいるでしょうが。


 ……。私たちは、

 スリやら盗みのプロだと思ってくれて構いません。

 興味もあります。


 私は、ゴーストのスケッチブックを、

 音もなく、スり取りました。



 ──── ─ ─ すっ 。



『 ──ニョ、ニョロ……っっ!? 』


「……ハルコ、今です」



 ──── ゴ ッ ・・・!!



『 ロォ、ブッ── ─ ─   』



 ──ドォオオオンン・・・!!



 ハルコのヒザは、

 綺麗にゴーストに決まりました。


 まさか、本当にケリが有効だとは……。

 普通なら、白魔法が必須です。


 蹴ったハルコ本人も複雑な表情で、

 大浴場の柱にめり込んだゴーストを見ています。

 ぺったんこですね。



『 がるがるぅ──♪♪♪ 』



 どれ……奪い取った、

 幽霊のスケッチブックを見てみましょうか。


挿絵(By みてみん)

 こ、これは──……。

 み、見事なラフ・スケッチですね……。

 皆も、後ろから覗いてきて、

 様々な感想を漏らしています。


 ……。

 私たち全員の絵とは、また稀有なお宝ですこと。

 一応、いただいておきましょうか。






 ──。






 晩餐(ディナー)は、本当に用意されていました。

 しかし、何やら緊急事態が発生したとの事で、

 クルルカンとオクセンフェルトの少女は、

 すぐに退室します。


 ……。


 私たち……暗殺職クランとは、

 ようするに……盗賊クランの中でも、

 一番厄介な存在だと……認識されるべきです。


 誰もいない豪邸の食堂に、

 放置する感覚が、わかりませんね……。


 メニューは、

 野菜とお肉のポタージュのようでした。

 この、潰れた小さな実は、なんでしょうか……。


 食器が銀でした。……。

 だから、盗賊クラン系列のトップなんですが……。

 あきれます……。


 盗んだら、後が怖いですね。

 毒味は……今日は、良しとしましょう。 

 潰れた実は、トマトでした。


 泣きそうなくらい美味しいポタージュでした。


挿絵(By みてみん)




 ──。





 宛てがわれた寝室は、

 貴族の屋敷としては……確かに小さいのでしょう。


 昔、クズ貴族の根城に盗みに入った時、

 これより大きい部屋を荒らし回ったものです。


 ですが……個室でコレとなると、

 もちろん私たちには……豪華過ぎます。

 だから……私たち、ほぼ盗賊なんですけど……。

 個室とか、普段なら盗み放題ですよ……?


 家主の神経が、まるで……わかりません。

 盗まれるのが……怖くないのでしょうか。

 まぁ……"義賊クルルカン"といえば、

 一番有名な盗賊の王様みたいなものですが。


 ふむ……。

 落ち着かないので、

 夜の屋敷を探索する事としましょう。


 下着と黒いワンピースを貸し与えられましたが、

 ワンピースという性分(しょうぶん)ではありません。


 動きやすい下着だけで十分でしょう。

 従者用の、お(しと)やかなデザインです。

 貴族の令嬢が好む露出の多いものではなく、

 落ち着いた色で、ちゃんと……お腹も隠れます。

 下もホットパンツのようなものです。


 もちろん、

 本当は銅の鎧を装備したい所ですが……。

 まぁ、この堅牢な屋敷の中です。

 トラップの看破も得意分野。

 絵本の主人公たちに会わなければ、

 何とかなる気もします。


 部屋から出ると──、

 メーチとハルコが待っていました。


 彼女たちも、動きやすい下着のみです。

 同じ(はら)づもりのようです。

 他の3人は……疲れていましたし。

 呼び出すのは遠慮いたしましょう。




 ────。





 3人で探索して分かった事は、

 ともかく、絵が多い屋敷だという事です。


 それはまるで──。

 窓の月明かりに照らされた、夜の美術館。


 絵画は普通であれば、

 一族の権威や、財力を現す趣向品です。

 しかし……絵のモデルに、一貫性が無いですね。


 背を向け合う、金髪と銀髪の男性。


 ネコ耳族の、少年少女たち。


 こっちの絵は……魔族の女性?


 これは……、

 あの少女たちの家族なのでしょうか……?

 ですが、どれも……素晴らしい絵です。


 生きているかような……表情豊かな……、

 こちらに語り出しそうな、絵画たち。


 私たちが……じっと前に立って、

 見惚れるほどです。

 売れば、一枚でも大きな稼ぎになるでしょう。


 義賊と狂銀の強さを知っていなければ、

 確実に持ち帰っていましたね。




「なぁ……あっち、気にならねぇか」


「あ、そうだね……」


「……構造的には貴重品などの保管庫は……この奥でしょうね」




 数々の悪人から金銭をこそぎ取ってきましたが、

 どの強欲な(やから)も、宝を隠す場所は、

 だいたい決まっています。


 職業病というやつでしょうか──。

 恐らく、この奥が宝物系の格納です。


 メーチとハルコが、

 ざわつきはじめます──。





「……覗いていくか?」


「……! だ、大丈夫かな……」


「でも……治療の足しになるかも、だろ?」


「それは……。ね、考えたんだけど……あの二人に頼んでみたらどう?」


「……!? ……流石に、無理だろ……」


「でも、イヴの目は治ったよ?」


「……」




 私たちは……。


 何が何でも、

 お金を貯めなくてはいけません。


 私も、メーチの案は……考えました。


 バカな神官をさらうより、

 余程、現実的かも知れません……。


 しかし……。

 保険は、必要だわ。




「……行きましょう、か」


「──! 本気なの!? イヴ!?」


「……。お前が行くなら、付き合うぜ」




 何が、何でも……。

 何があるかは、把握しておかなければ。


 可能性を、探さなければ。


 だって────……!




「行きましょう」


「バレたら……怒られるよ?」


「このカッコだしな……はは、久しぶりに、おっかねぇ日だ……」






 ──すぐに、扉は、見えてきました。






「「「……」」」





 ドアと隣の壁に、何本もの銀の杭が、


 滅多打(めったう)ちにされています。


 そして、それを……ぐるぐる巻きにしている、


 白銀の、(チェーン)──……。





「……」

「これは……マズぃよ……」

「ああ……このふさぎ方は、狂気を感じるな……」





 まさか──"ミスリル銀"の鎖……?


 純度が……高い。


 これだけでも、お金に────。






 私は、ドアを、がんじがらめにする鎖に、


 触ろうとしたのです。


 そして────、


 


 






 ────しゃんら──・・・ ── 。









「「「 ──……っ!? 」」」




 









挿絵(By みてみん)


 大きな、器を被った女が、


 後ろに────立っていました。










( ……──ッッ!? )


( そんな……!? )


( 気配、なんて……!? )








< かんら、かんら……♪ >








 (かた)露出(ろしゅつ)し。


 笑顔を(たずさ)え。


 (あか)るい(かみ)と。


 黄金色(こがねいろ)(かんざし)








 体は、透け。



 そして、(うた)った────。









   <   な ぁ に が    >


    <   ね こ を    >


  <   こ ろ し た か    >





 ──── ボ オ ッ ア ッ ──・・・!!!






「「「 ──ッ!? 」」」






 突如。


 床から、噴きあがる、炎。


 廊下は、赤に染まります。






「これはっ……!?」


「くっ……!?」


「なんッッ……!?」






 炎の魔法……!?


 でも、熱くは──……!?


 幻、術……!?







    しゃんら ──



         しゃんら ──



  しゃんら ──



        しゃんら ──


           しゃんら ──


   しゃんら ──




          しゃんら ──


 






 <  よ ぃ こ は ──


    お ね む  り  ぃ …… ?  >









     …… ── フッ。







 き、






 消え、た………。







「「「 ──、…… 」」」










 廊下の炎も。



 大きな……白い器の帽を被った女も。



 蒼い、月明かりの廊下だけが、



 目の前に……続いています。








「……」

「……」

「……」








 心臓に悪い。


 ハルコに……、

 ポンポンと、肩を叩かれました。




「な、なに?」


「……見ろよ、これ……」


「ぁ……っ!」






挿絵(By みてみん)





 そばの壁に。


 絵が、あります。


 今の女が……描かれています。




 その表情は──、


 優しそうに……笑いかけて、きていました──。







「……ぃ、今のは、ゴースト……? 床の炎は……幻覚……?」




 メーチに目で訴えられますが、

 私にも、よくわかりません。




「おい、イヴ……やめとくか……。警告がよォ……露骨すぎんぜ……」




 ハルコが冷や汗をかいています。




「……。ここ、やっぱり……お化け屋敷……なのかな……」


「知らねぇけどよ……。でも、やべぇだろ……?」


「え……?」


「今までの絵に描かれたヤツら……ぜ、全員……、化けて来てみろ……?」


「そっ……! そんっ、な、まさかぁ……!」






     しゃんら ── ・・・






「……」


「……、……」


「……部屋で大人しく寝た方が、良さそうね……」







 柔らかいベッドは、幸運にも。


 夢を見せない眠りへと、(いざな)いました。




 久しく、自分が。


 ちっぽけなものだと、


 感じる夜です────。









よっしゃMHWIで麻痺の大剣つくんぞ(´・ω・`)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『今回の目次絵』

『ピクシブ百科事典』 『XTwitter』 『オーバーラップ特設サイト』 『勝手に小説ランキングに投票する!』
『はぐるまどらいぶ。はじめから読む』
― 新着の感想 ―
[一言] 忘れてましたが、大姉って火事で生きたまま焼かれて 真っ黒焦げの焼死体になったんでしたっけ…… 普段「あんな」ですけど、生前の境遇と死に方では トンデモない悪霊になってヒト、特に悪人に祟りを…
[一言] ニョロニョロとスケッチって切り離せたのか… そしてニョロニョロなら脳内補正でもう一度書き直せる気がするのだぁ! …もしくはあきらめて包丁とフライパンの擬人化百合絵でも作りますかね?
2020/03/04 20:21 謎の百合ケモ耳アンマイ好き
[気になる点] 節子、それポタージュやない、シチューや。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ