お泊まりかーい?
世界よ、これが連投だ(●´ω`●).*・゜
「…………」
「…………わぁ」
「…………マジか」
「…………なんで……?」
「…………ひえぇ」
「…………どうなってるの」
私以外の皆も、驚いていました。
夜の魔物の森に、
いきなり" お屋敷 "が建ったのです。
「どうなってんだ……」
気の強いハルコも、
流石にポカンとしていました。
さいしょ、いきなり「目ぇ閉じてくんない」と言われたので、対応に困り全員で無言でいたのですが──「あぁ……もぅいいや」と呟かれ──そして……お屋敷が出現しました。
とても、立派な物です。
「あの……私の見間違いじゃなければ……この御屋敷、地面から生えてきたよね……?」
「……そう、見えましたね……」
「あははー……」
メーチの愛想笑いを、
初めて見たかも知れません……。
「……ほれ、早く入んなさーぃ」
「ごはんだ、ごはんだー」
『 がるぅ♪ 』
キンギン、キンギン、と。
やけに甲高い足音をしながら、
入っていく金と銀の少女たち。
慎重派のナハースが聞きます。
「……どうします、イヴ」
「……今の状態で野営するよりは、安全なのでしょうね……」
恐る恐る、私たち6人は、
謎のお屋敷に入りました──。
メーチとケーファが感嘆の声を漏らします。
「すごい……! きれい……!」
「……私たちには、縁の無かったものですね……」
前を進む金と銀の少女に、
私は質問しました。
「……あなた達は、貴族なのですか?」
「──! ち、違うからっ! つ、つーかコレ、正確には私らの家じゃないっつーか……」
「借りパチだよー」
『 がるがる♪ 』
……かりぱち、とは??
「……貴女たちは、この屋敷の主人ではないと?」
「そ、そんなワケないでしょう……」
「んー、たまに利用しているだけです」
「……ですが。その正面ロビーの上の巨大な絵画は──貴女たち御二人のように見えますが──」
「ぉ、おっきぃ……!」
「すげぇー……」
「あっ」
「あー」
私たちが見上げた先には、
私の身長の4倍はあろうかという、
目の前の二人の少女が描かれた、
巨大な絵画が飾ってあります。
貴族の屋敷に馴染みのない私たちですが、
まず間違いなく、あのスペースに飾られるのは、
屋敷の主人の絵であるべきでしょう──。
「つーか、そもそもどうやって、こんな屋敷を出現させたんだ……?」
「元々この場所に建ってた……ワケじゃないですよね?」
「幻影魔法で隠してたってこと?」
「偶然ここにあるってのは、ムリな話だと思う」
仲間からそれぞれ疑問が噴き出しますが、
まずいと思った時には、
金の少女が、足をふみならしていました。
きぃぃぃぃぃいいいんんんんん──!!!!!
「「「「「「 ……ッッ!! 」」」」」」
──それは、"黙って聞け"、の合図。
彼女の気分を害したのだと、
私たちは、ヒヤリとします。
「…………………いいか……。最初に、釘をさしとくわ……。私たちはねぇ……、今、西のギルマス、ヒゲイド・ザッパーと、東のギルマス、聖女リビエステラの名で動いてんのよ──……」
「「「「「「 ……! 」」」」」」
西の"荒くれ巨人"と──東の"幻の聖女"……!
「そんな、大事なクエストの途中でねェ……あんた達みたいな冒険者クランとトラブルになったってバレてみなさい……!? ヒゲイドさんに、どんだけ怒られるかぁぁぁああ……!」
「「「「「「……、……」」」」」」
聖女のお抱えの冒険者に斬りかかった、
私たちの立場の方が危ないと思うのですが……。
「アンタたちに求めることは、たったひとつ──」
「「「「「「──!」」」」」」
「今日の夜から、明日の朝にかけて起こった事は──全て、忘れなさい」
それは、意外な提案だと言えました。
「……。我ら6人の事を、聖女に報告しないと?」
「あんねぇ……聞いてなかったの? アンタたちに怪我させたってバレると、私たちがっ、ややこしい事になんのよぉぉおおお……!」
妙な感覚が、私に溢れました。
メーチやナハース辺りも……、
いえ、全員が感じ取っていたでしょう。
私たち"銅の刑死者"が霧の森に入っていたのは、
さらに北東にある"深遠なる遺跡"にて、
盗掘を行うためです。
古き城の跡地や古代のダンジョンには、
まだ発見されていない宝や金銭が眠っています。
が、ホールエルの街の、砦の北東と言えば──。
"吸血鬼"や"深遠の者"など、
誰もが知る、闇属性の強力な魔物が、
蔓延っていると言われている地域です。
聖女リビエステラは、
北東の遺跡への立ち入りを、
何人たりとも禁止しています。
つまり……私たち6人は金銭のために、
禁足地に無断で進入し、
闇の魔物を街の方へ誘導してしまったのです。
聖女に報告されれば、
実刑は免れないでしょう──。
私は再び、金の少女に聞きました。
「──……何故、私達のことを、聖女リビエステラに報告しないのですか?」
「くどい──。私たちは今日、貴女たちに会っていない。その代わり、アンタ達も……私たちには会っていない」
「「「「「「……」」」」」」
「わかるわね……。私たちにとってイチバン大事なコトは、アンタ達に──" 森の中で黄金の義賊と花の狂銀のカッコした変な奴らに襲われた "──ってウワサを流されないコトなのよぉぉおおおおお」
「 ! 」
黄金の義賊と……花の狂銀──!
そうか、何処かで見覚えがある、
鎧だと思ったら──!
「そっか……! クルルカンと、オクセンフェルトだ……!」
「あっ、そういうことか……!」
メーチとハルコも、既視感があったようです。
なるほど……このような所で、
絵本の敵味方に会うとは思うまいて。
義賊の少女が、引き続き、まくし立てます。
「いい……? そりゃ私たちも殴っちゃったけど、そっちも勘違いとはいえ、いきなし斬りかかってきたワケだかんね……! 私らがぶん殴ったのは、ゼッタイ秘密にして! そんくらいの事はききなさい!」
……。
やっぱり、よくわからないわ……。
いきなり斬りかかってきた不法侵入盗掘者を、
何故、見逃すようなマネを……?
私なら、迷わず聖女に報告しますが──……。
それほどトラブルを持ち込みたくない、
クエストの最中なのでしょうか。
西と東、連名のマスタークエストという事……?
ふむ……。
少し考え込んでいると、
ナハースに話しかけられた。
「イヴ、また考え込んでいますよ。私は賛成です。せっかく見逃してくれると言ってくれてるのです。明日の朝までに起こった事を、他言しなければ良いのですよね?」
「私も問題ないぜー……。つーか、アレに敵対するようなマネは、やっちゃマジぃだろ……」
先ほどの、義賊と狂銀の少女の"蹂躙"を、
皆……思い出します。
よく……私たちは生きているものです。
全員の表情を確認すると、
5人すべて、話にのっかろうという事でした。
もちろん、私も逃げおおせれるなら、
チャンスを逃す気はありません。
「……わかりました。要望に沿う形にいたします。明日の朝までの事柄は、他言しないと誓いますわ。一晩、お世話になります」
黄金の瞳は、しばらく私たちを、
じっ……と見つめていましたが──。
「……よし、頼むわよ。私らも、アンタ達とヤらかしたって事は、誰にも言わないわ」
願ってもない話です。
「──で? ごはんとお風呂、どっちが先がいい?」
「は?」
思わず、間抜けな声を出してしまいました。
続いて、メーチとラム。
「ご、ごはんと……」
「お風呂……………って?」
思わずポカンとする私たちに、
黄金の言葉。
「あによ……………飯抜きでいいの?」
グイッ、と、ハルコに肩を掴まれます。
「おい、バカ……! 何、フリーズしてんだ。ぉ、おい……風呂ってのは、その──……」
「まぁまぁ広めの大浴場があるわ」
お、お風呂……。
盗掘集団に、お風呂を貸し出す……?
…………………。
脳が停止した私の代わりに、
気前の良い性格のハルコが受け答えします。
「め…………メシを食っちまうと多分寝ちまうから、先に……風呂がいいかな……??」
「……なるほど、その状態なら、そうでしょうね。でも、ちょっとは胃に何か入れてからお風呂にしなさい。ホレ──」
──何かを投げられ、
ハルコとケーシャが受け取ってくれました。
「ミックスサンドとウトイスの実が入ってるわ。最低限、それは食べなさい。後でちゃんとご飯は出したげるから。それと──」
私に向かって、また何かが投げられます。
──受け止めました。
『 がるるん♪ 』
「……」
魔獣です。
「──ガルン! 念の為、呪いが残ってる人がいたら食べてあげなさい! あと……風呂で居眠りしてるヤツがいたら、お湯ぶっかけろ!!」
『 がぁるんがるん!! 』
前足を……パタパタしています。
「か、可愛いっ……!!」
「目が三つあるな、この魔獣……どうやってマントになってたんだ?」
メーチ、ハルコ……。
そんな悠長な感想を述べている場合ですか……?
……随分、むにむにしている魔獣ですね……。
むにむに。
『 がるるんっ♪ 』
「……イヴ。ちょっとその子、見せてほしい」
「あ、私も」
ケーシャ、ラム、貴様らもか。
「あ、ホントにミックスサンドが入っていますよ……」
ナハースは、
ちゃっかり食料と水の確認をしています。
それ以外にも追加で食料をくれると言います。
どんだけ、なのでしょうか……。
半ば呆れに近い気持ちになっていると、
さらに黄金の少女が言葉を足しました。
「アンタ達、その銅色の鎧──私らに全て、預けなさい」
……なんですって?
即、ハルコが反論します。
「ぉい……鍛冶屋に売っぱらう気か? ぶっ壊れてるとはいえ──これ無しじゃ流石に明日の朝、森の外まで戦えねぇよ……。その、いきなり襲ったのは悪いと思ってる。勘弁してやってくんねぇか」
「はぁ……勘違いしないで。明日の朝には返してあげるわよ」
「どういうつもりか、説明してくれる?」
ケーシャが、少し挑発的に質問しました。
すると──。
明らかに、義賊の少女は威圧を増しました。
やばい、と、すぐに感じました。
そして──。
「……──聞け。私たちは、その鎧を朝までに修復する技術を持っている。預けてくれたら、明朝には完全な状態で返してやる。が、イヤなら無理にとは言わねぇよ。アンタ達は、ボロボロの鎧で森を抜ける事になるけどな──」
……歳下とは、思えない重圧感ですね。
黄金の笑みを浮かべ、追い打ちがきた。
「こっちがメシもフロもヨロイの修繕も世話してやろうってんのは、こっちにもバラされたくない事情があるからだっつったよね? アンタ達、明日の朝までの事は、何もしゃべらないってんでしょう? おクチを噤んでくれんなら、大サービスする気だったんだケド……ま、私的には今から直ぐに出てってくれても構わないのよ?」
「……」
「「「「「……」」」」」
下手を、踏んだようですね……。
さらに、ダメ押しが来ました。
狂銀の少女が一歩、前に出てきて────。
── ギ ィ ン ん …… 。
「──おい。お前たちは、まだアンティの手を煩わせるのか?」
「「「「「「……」」」」」」
何故でしょう……。
これが最終通告だと、私たちには、
よく、わかりました……。
「……」
「こ、こわぁ……」
「おい、怒ってんぞおー……」
「……あ、謝った方が……」
「ひぃえ……」
「ご…………ごめんなさい……」
『 がるーん…… 』
何故か、魔獣に同情されている気がしますね……。
はぁ……。
ここで、あの二人と敵対するのはバカらしい。
「……鎧は、今ここで、脱いだ方がよろしいでしょうか」
「あっちの風呂場に脱いどいて。回収して、修繕にまわすわ。あ……着替えはあまり期待しないで。このお屋敷、女性モノの普通の服はメイド服しかないから、多分黒いワンピースになると思うわ」
ワンピースなど、着る機会がこようとは……。
「問題ないわね?」
6人全員で頷く。
「そう、じゃ……後で、そっちの食堂で待ってるわ。寝る時は、好きな部屋を使ってくれて構わないから」
「お風呂は一時間まで」
こんな御屋敷のお風呂が、一時間……。
十分な気もしますが……。
「じゃ、ガルン! 居眠りはバチャバチャよ!」
『 がるぅん! 』
義賊と狂銀の少女が離れていき、
内心、ホッとします。
はぁ……私たちは明日の朝、
生きてこの御屋敷を出られるでしょうか……。
「あっ、言うの忘れてた」
「「「「「 ッッ…… 」」」」」
な、何でしょうか。
「えーっと……ま、そのまま言うかァ……。この屋敷には、とあるゴーストが一人、住み着いています……」
けっこう重要な情報、言い忘れましたね。
「"おえかきゴースト"っていう、緑色の帽子を被った、ニョロニョロしたヤツなんだけど……」
おえかき……?
帽子を被ったゴースト、とは……。
討伐しろという事……?
「その……見つけ次第、討伐しても宜しいのでしょうか」
「それはムリ。絶対に倒せないから」
貴女たちが倒せないゴーストって……、
エルダーリッチか何かですか……?
「あの……どうすれば」
「あー。基本は無害だから、気にしないで。ただ、お風呂は気をつけて」
「……どういう意味でしょうか」
「スケベ野郎だから、よく覗きにくんのよ」
「「「「「「 …… 」」」」」」
「ぜったい倒せないから、思いっきり、ぶん殴っといてね!」
「うんっ!! ようしゃしないでいーよっ!」
………、………ぁ、あの…………。
「あっ、ガルン! ニョロニョロが来ても、お湯バチャバチャだかんね! スケッチブックを狙うのよ!」
『 がるーんっ! 』
「んじゃ!」
「あとでねー」
──ぱたむ。
行っちゃった。
「…………」
「……ご、ゴーストって殴れるのかなぁ……?」
「ぃや……お化け屋敷じゃねぇかよ……」
「お風呂が最大の山場ですね……」
「ね、寝そうですぅ……」
「……魔獣くんが居るから、大丈夫じゃない……?」
『 がぁるぅうううう──ん!!! 』
──しゅたっ。
討伐不可能なすけべぃがいるお屋敷(´・ω・`;)










